バーナー類にランタン、テント、タープにいたるまで、キャンプ道具は年々進化している。なかでも注目したいのは火器類とその周辺グッズだ。シチュエーションに対応する新機能搭載をはじめ「快適野外料理」を追求した機能が満載だ。 |
レギュレーターストーブ ST-310
新開発「マイクロレギュレーター」を搭載した次世代バーナー。朝晩の冷え込みによる低温時のボンベ内の圧力低下を軽減する。経済的なカセットガスを燃料として長時間の高出力を実現。本体重量は350gとコンパクト。6,300円(新富士バーナー)
空前のオートキャンプブームが到来したのは、1990年代半ばである。当時のレジャー白書を見ると「アウトドアへ」の割合がずいぶんと占めていた。とりわけオートキャンプ人口の割合は、これまで見た数字のなかで最も多かったのを覚えている。四輪駆動のRV車が人気を呼び、湖畔や高原などをフィールドとするオートキャンプ場の数がぐんぐんと伸びていった。市町村が管理するいわゆる野営場と呼ばれる施設は影を潜め、水洗トイレやシャワー設備、AC電源を完備するオートキャンプ場の時代が訪れたのだ。 日常生活のように快適を楽しむか、それとも不便を楽しむものか? ぼくがアウトドア誌に在籍していた8年ほど前、オートキャンプを楽しむ本来の目的はこのように二分化されはじめたころだった。自然に触れるのを目的としたファミリーは「非日常」や「脱・日常」を徹底的に求めてオーソドックスなキャンプをとことん楽しむ。もちろん宿泊はテント。 |
簡単に薫製料理ができるアルミホイル製の「スモークバッグ」。バッグ内にはスモークに必要なチップが入っているので食材を入れるだけ。煙が出ないので手間いらず。840円(新富士バーナー)
かくいうぼくは編集部に在籍していた頃、不便を楽しむオートキャンプを主体とし、そのなかで適度な快適性を求めるキャンパーに注目していた。それは道具に愛着とこだわりをもつ人たちだった。道具の機能性を熟知して、自分のアウトドアスタイルを演出できるキャンパーに一目置いていたのだ。 ほかの業界と同じように、毎年春になると各アウトドアメーカーも新商品をラインアップする。それこそ熟練キャンパーが待ち侘びていた快適性を備えるグッズや、歴史あるブランド独自の機能性を維持しつつ、新機能を加味するグッズなどが登場する。なかでも作り手の経験から誕生した機能やデザインは、毎年カタログ号を制作するぼくらにとってもワクワクしたもの。自動車のフルモデルチェンジやマイナーチェンジを思わせるような新商品の数々は、物作りに長ける日本を象徴する勢いがある。
「スモークバッグ」の調理例がこちら。加熱する底面が二重構造になっていて、スモークチップと照りを出すための微量の砂糖が均等に入っている。底面の両サイドに小さな穴が点在し、加熱されて燻されたチップと砂糖が食材を最適な状態にする。今度のキャンプにぜひ!
さて、オートキャンプの醍醐味のひとつにアウトドアクッキングがある。 春や夏はビール片手にバーベキュー、食材豊富な秋はダッチオーブン料理が身体を温めてくれる。普段、家で作るとなるといささか腰が重い薫製料理や炭料理も、開放的なフィールドが舞台なら気分も高まってくる。 野外料理を支えるグッズの進化こそ目を見張るものがある。利便性を追求したコンパクト収納、高地で衰えない火力、炭の遠赤外線効果をサポートする隠れた構造など、着実にユーザーの視点で捉えた機能が増えているのだ。 オートキャンプの数をこなすほど、「あったら便利」の機能はわかってくるだろう。キャンプグッズ選びとは、アウトドア好きの人だけが得られる利点でもある。よいところを自分の経験を元に発見できれば、それこそ野外料理のレパートリーも増えるはずだ。 不便を楽しむキャンプをベースに、進化するキャンプグッズからちょっとした快適を得る。やっぱり、これがいちばん。 |
アウトドアで活躍する燃焼器具は、カセットボンベやホワイトガソリン、その他専用の燃料など種類も豊富。燃料によってはランタンに使用できるタイプもあるが、消耗品のコストを抑えるために、燃料は統一したほうがベター。燃焼器具がオートキャンプの主役といっても過言ではないので、機能性、燃焼時間、消耗品、メンテナンスはよく確認したいところ。
(今回紹介したグッズのメーカー問い合わせ先)
新富士バーナー 電話0533-75-5000 http://www.shinfuji.co.jp/
小幡 健
元アウトドア誌編集者。お金をかけずにキャンプを楽しむ「赤貧オートキャンプ講座」の連載経験がある。好きなエリアは伊豆。好きなシチュエーションは焚き火と日本酒。