海の国・にっぽん。自然のままの海岸線は減少してしまったが、それでも朝日や夕日自慢の海岸、きれいな海を誇る場所は日本のあちこちにある。また、町中にはお寿司屋さんやお刺身を売りにする居酒屋が点在し、スーパーマーケットには鮮魚が並ぶ。海は心と食欲を満たしてくれる存在なのだ。「体験その2」は1日漁師さんになるドライブを紹介。 |
力を合わせて網を引く。案外重いのでマジメに引かないとダメ
サーフボードを抱えた日焼け青年や、ビキニ姿のお嬢さんたちで賑わう湘南海岸に「地引網」の看板があるのをご存じだろうか。 |
近海にもさまざまな魚がいて驚かされる。観察するのもおもしろい
やがて網は完全に浜にあがり、漁師さんたちが魚の種別を始めると、海岸からわずか1.5キロの海の奥深さに驚かされる。実にさまざまな魚が砂浜に並んでいるのだ。 料理自慢の友人は刺身や焼き魚にする魚、鍋に入れる魚選びを行っている。イサキやイワシの仲間、イカがこれから始まる宴席の主役になりそうだ。 僕はといえば、珍しい魚に興味津々。フグの仲間、コバンザメ、初めて見る色鮮やかな魚……。何より驚いたのはエイが非常に多いことだ。尾に毒があり刺されると大変、漁師さんが「網に近づくな」と注意するのも無理はない。 地引網に興じ、あがったばかりの魚を食べつくす。 湘南の違った魅力を感じた1日だった。 この話には続きがある。地引網会場の横に「シラス」が干してあった。 尋ねるとここで獲れたシラスを浜で釜茹でし、天日に干しているという。そのシラスのおいしいことったら。やはり獲れたてが一番ということで、「次はシラス漁体験だ」と決めたのだった。 |
北茨城で漁船に乗り込み、シラス曳網漁に挑戦してみよう
資料館の中にはアンコウの「吊るし切り」の模型や漁業に関する展示、加えて北茨城の出身だからという理由で、米米CLUBの石井竜也が描いた港をモチーフにした絵画なども飾られていたりする。通年行っているというシラス漁は、大津港から漁船に乗り、シラス曳網漁を行うというものだ。 シラスはウナギやイワシなどの稚魚の総称。北茨城の山中を流れたきれいな川が注ぎ込む北茨城の海は、稚魚を育てるにふさわしい豊穣な海。豊漁が期待できる。曳網の中で透明のシラスが動く。そこに太陽が当たり、まるで宝石のように魅力的に輝く。 自分で獲ったシラスはそのまま踊り食いが可能。これが楽しめるのは、1日漁師体験の特権だろう。さらに、シラスの持ち帰りもできるから、自宅の台所で釜茹でにし、ベランダに新聞紙を敷いてそのうえで天日干しにする。漁から始めた「完全なる自家製シラス」のできあがりというわけだ。 暑い日が続く毎日、ビーチでゴロンもいいけれど、海での漁師さん体験は格別だ。 |
藤沢市観光ホームページ(観光地引網)
http://www.cityfujisawa.ne.jp/kankou/index.html
北茨城市漁業歴史資料館「よう・そろー」
http://otsuko-yo-soro.jp/
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載中(http://www.yomiuri.co.jp/tabi/)