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日本列島自分で"やる"旅見るだけではつまらないからExperienceの世界へ体験
1日だけ”漁師さん”になる

海の国・にっぽん。自然のままの海岸線は減少してしまったが、それでも朝日や夕日自慢の海岸、きれいな海を誇る場所は日本のあちこちにある。また、町中にはお寿司屋さんやお刺身を売りにする居酒屋が点在し、スーパーマーケットには鮮魚が並ぶ。海は心と食欲を満たしてくれる存在なのだ。「体験その2」は1日漁師さんになるドライブを紹介。

湘南の海で地引網に挑戦
力を合わせて網を引く。案外重いのでマジメに引かないとダメ

サーフボードを抱えた日焼け青年や、ビキニ姿のお嬢さんたちで賑わう湘南海岸に「地引網」の看板があるのをご存じだろうか。
ぼくが初めてそれに気づいたのは数年前のことだった。場所は鎌倉から海岸線を走り、江ノ島を通り越した辻堂西海岸。
そのときは「こんなところで何が獲れるのかな」と思っただけだった。湘南の港にあがる相模湾の地魚がおいしいのは知っている。しかし、海の家が並ぶ大海水浴場がすぐそばにある辻堂の浜に魚が寄ってくるのが想像できなかった。

奇遇にも湘南の地引網の誘いを受けたのは2年前のことだ。
「地引網をするのに約9万円、持ち込む食糧や飲料が2万円で合計11万円。でも、35人が参加するからひとり3000円程度。安いでしょ」と、休日になると湘南サーファーと化す、真っ黒に日焼けした華の銀座の婦人靴販売員の友人が言った。

集合場所の「五郎引網」の目の前に湘南の青い海が広がる。小屋の前には日差し避けがあり、その下はテーブルが並べられた休憩&食事スペースになっていた。「地引網で獲った魚をすぐにさばいて、それを肴にここで乾杯だ!」と友人。そして、それは2時間後に現実になった。

わっせわっせで網を引く
近海にもさまざまな魚がいて驚かされる。観察するのもおもしろい
沖合約1.5キロに網を設置、網綱が見えるまでは動力でロープを引き寄せる。漁師さんの合図とともに、参加者全員でわっせ、わっせが始まった。みんなで力を合わせて綱を引けば、徐々に網の輪は小さくなり、海面で銀色の魚が跳ねるのが見える。気の早い連中がいち早く魚を取り上げるために海に入ろうとして、漁師さんに軽く叱られる。

やがて網は完全に浜にあがり、漁師さんたちが魚の種別を始めると、海岸からわずか1.5キロの海の奥深さに驚かされる。実にさまざまな魚が砂浜に並んでいるのだ。

料理自慢の友人は刺身や焼き魚にする魚、鍋に入れる魚選びを行っている。イサキやイワシの仲間、イカがこれから始まる宴席の主役になりそうだ。
僕はといえば、珍しい魚に興味津々。フグの仲間、コバンザメ、初めて見る色鮮やかな魚……。何より驚いたのはエイが非常に多いことだ。尾に毒があり刺されると大変、漁師さんが「網に近づくな」と注意するのも無理はない。

地引網に興じ、あがったばかりの魚を食べつくす。
湘南の違った魅力を感じた1日だった。 この話には続きがある。地引網会場の横に「シラス」が干してあった。
尋ねるとここで獲れたシラスを浜で釜茹でし、天日に干しているという。そのシラスのおいしいことったら。やはり獲れたてが一番ということで、「次はシラス漁体験だ」と決めたのだった。
北茨城の海で漁船に乗る
北茨城で漁船に乗り込み、シラス曳網漁に挑戦してみよう
冬になればアンコウ漁が盛んになる北茨城の海。そこに北茨城市漁業歴史資料館「よう・そろー」がある。
資料館の中にはアンコウの「吊るし切り」の模型や漁業に関する展示、加えて北茨城の出身だからという理由で、米米CLUBの石井竜也が描いた港をモチーフにした絵画なども飾られていたりする。通年行っているというシラス漁は、大津港から漁船に乗り、シラス曳網漁を行うというものだ。

シラスはウナギやイワシなどの稚魚の総称。北茨城の山中を流れたきれいな川が注ぎ込む北茨城の海は、稚魚を育てるにふさわしい豊穣な海。豊漁が期待できる。曳網の中で透明のシラスが動く。そこに太陽が当たり、まるで宝石のように魅力的に輝く。

自分で獲ったシラスはそのまま踊り食いが可能。これが楽しめるのは、1日漁師体験の特権だろう。さらに、シラスの持ち帰りもできるから、自宅の台所で釜茹でにし、ベランダに新聞紙を敷いてそのうえで天日干しにする。漁から始めた「完全なる自家製シラス」のできあがりというわけだ。
暑い日が続く毎日、ビーチでゴロンもいいけれど、海での漁師さん体験は格別だ。
体験の旅 地引網とシラス曳網漁のヒント
藤沢市観光ホームページ(観光地引網)
http://www.cityfujisawa.ne.jp/kankou/index.html
北茨城市漁業歴史資料館「よう・そろー」
http://otsuko-yo-soro.jp/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載中(http://www.yomiuri.co.jp/tabi/
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