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埼玉県・川越は江戸時代の情緒を残す町並みが人気の城下町。
蔵造りの町を散策して、駄菓子屋が並ぶ菓子屋横丁に入ればタイムスリップしたような懐かしい記憶がよみがえる。

きびだんごやマーブルガムなど、昔なつかしの駄菓子は健在。大きな箱で大人買いしてみたくもなる。

子どものころ、自転車を乗り回すのが好きだった。自転車なら、自分が行きたくなった方向へいつでも行ける。

歩いて行くには遠い距離でも、自転車なら時間もそれほどかからない。新しい場所に出かけたり、おもしろい場所を発見すると、自分の知っている世界がどんどん広がっていくような気がした。自宅を中心にして、自転車で行ける範囲が、自分の知っている世界のすべてだった。

ほぼ毎日通っていた場所がある。歩いて1分ほどのところにある近くの公園と、自転車で5分ほどかかる駄菓子を売っている小さな商店。さすがに、つねにお金を持っているわけではないので、駄菓子屋には毎日は行けない。
それでも買い物の駄賃や祖母から100円でももらおうものなら、それは僕にとっては大金だった。

駄菓子屋で売っているのは、当たりくじのある串ドーナツやカレーせんべい、木べらですくって食べるヨーグルトもどき、メンコやパッタの類など。5円か10円で買えるそれらを、どんな組み合わせにすると効率よくお金を使えるか。店の中と外を行ったり来たりしながら、ずいぶん長い時間を過ごした。

「田中屋」さんで食べたほていだんご(300円)。炭火で表面が香ばしく焼けているが、なかはふっくらもちもち。雑穀を使った味噌だれが甘辛くておいしい。

中学になると、無為に自転車に乗って時間を過ごすことはなくなり、駄菓子屋に行くことはほとんどなくなった。高校に上がったときにはもう、駄菓子屋そのものがつぶれて更地になってしまい、あの頃の思い出は記憶のなかにしか残っていない。
今回、川越の町を歩くにあたって、目的地をまっ先に菓子屋横丁に設定したのも、駄菓子屋を訪ねることで、断片的な記憶をたどる期待が大きかったからだ。

川越の菓子屋横丁は、映画のロケにでも使われそうな、ノスタルジーあふれる見事な店が軒を連ねている。自分が知っている駄菓子屋は、はっきり言ってもっとチンケでしょぼい。それでも店に並んでいる商品を見ていると、自転車少年だった、あのときの記憶が戻ってくる。自転車で転んでハンドルが曲がったことや、妹を泣かせたこと、すべり台から落ちて耳を何針も縫ったこと……。

駄菓子屋に惹かれるのは、記憶の引き出しを開ける手がかりを与えてくれるからだろうか。思い出は人それぞれだが、駄菓子に引き寄せられる理由を、そう勝手に解釈してみたりもする。
17世紀の寛永年間から現代にいたるまで川越の時を刻んできた「時の鐘」

江戸時代の川越は、徳川幕府による北の守りの要衝地で、物資の供給地としても重要視された。松平信綱によって整えられた城下町は、その町割りがいまでも形を残している。

明治期には穀物流通の中継地、織物の産地としてにぎわいをみせる。
川越商人が建てた土蔵造りの店舗は「蔵造り」と呼ばれ、町の3分の1を焼失した明治26年の大火を教訓に、類焼を防ぐ目的で建造されたものが現存している。

この蔵造りの店舗が並ぶ、一番街を中心とした南北に走る中央通りがメインストリート。電信柱が地下に埋められ、街灯が整備されて美しい景観を保っている。

散歩コースは本川越駅からこの中央通りを北上し、札の辻あたりまでの約1.2km。ここが蔵造りの町並みだ。菓子屋横丁は、札の辻の西、一番街の蔵造り資料館の裏手の路地にある。

関東大震災で被害を被った東京に代わり、駄菓子を製造するようになり、昭和初期には70軒ほどの業者があったといわれている。現在は20数軒の店舗が川越名物のさつまいもを使った菓子や駄菓子、飴などを販売している。

一番街を東にある川越城の本丸御殿方面に少し入ると、川越のシンボルの「時の鐘」が目に入ってくる。奈良の大仏と同じ高さと言われる櫓に鐘が据えつけられ、約400年前から城下に時を告げてきた。現在の櫓は4代目に当たり、いまも1日4回、鐘の音が響いている。

川越は鰻の名店も多い。ふっくらと蒸してから焼き上げる。大正ロマン通りにある「小川菊」は創業180年以上の老舗。

川越の建築でもうひとつ興味深いのが、大正期に建てられた、セメントを使った西洋風建築物。

大正ロマン、レトロといった形容がぴったりで、町の風景のアクセントになっている。埼玉りそな銀行川越支店や川越商工会議所の建物は、国の登録有形文化財にも指定されている。

観光に力を入れているので、季節を問わず多くの観光客が訪れるようになった。

人力車が走っていたり、名所旧跡は赤いブレザーを着た観光ガイドが案内してくれる。

都市圏にあり、江戸を感じさせてくれる川越は、時を経れば経るほどその価値が評価されていくことだろう。

川越にはJR川越線・東武東上線の川越駅、東武東上線の川越市駅、西武新宿線の本川越駅があるが、それぞれ離れており、初めての人には位置関係を把握するのが難しいかもしれない。パーキングはこれらの駅周辺をはじめ散在しているが、駐車台数はいずれもそれほど多くない。メインとなる一番街周辺を避け、本丸御殿、喜多院に駐車すると散歩ルートが組みやすくなる。
< PROFILE >
長尾嘉津友
雑誌や書籍、ウェブなど、活字にまつわるメディアのプロデュースを手がけるエディトリアル・ディレクター。
旅行や写真が趣味であり、仕事。最近はクルーズに注目しています。
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