しばらくぶりに訪れた草津温泉は、観光客がほんとうに楽しめる温泉リゾートに変貌しつつあった。この変化が定着するかどうかは、観光客自身が役者として舞台を演じられるかどうかにかかっている。 |
草津温泉の中心に位置する湯畑。湯を板の上の樋にくぐらせると、成分が次第に固まって「湯の花」ができる
草津温泉に行ってきた。 |
湯畑にある「熱の湯」では、湯もみの実演と草津節の踊りを観賞・体験できる。源泉は51度~91度にもなるため、その効用を生かすためには水で薄めずに冷やす必要がある。湯を板で「もむ」ことによって47、48度まで冷ますのが湯もみの由来
草津温泉旅館協同組合 所在地/群馬県吾妻郡草津町草津39 営業時間/9:00~16:00(年中無休) TEL/0279-88-3722 オンライン予約/www.yumomi.net サブプライムローン問題が引き起こした不況の嵐は、すくなくともホノルルでは感じられない。ワイキキはアメリカ人、東洋人を問わず、にぎやかで、みやげもの屋にはひっきりなしに人が入ってくる。同じアメリカのニューヨークやロサンゼルスでも、これほどにぎやかな通りは僕は知らない。 バーのカウンターでビールを飲んでいると、隣のアメリカ人が声をかけてきた。しばらくするとウェイターを交えてのご当地談義になり、すっかり盛り上がってしまった。そのときなぜだろう、草津のことを急に思い出したのだ。 ワイキキにも草津にも、人を楽しませたりわくわくさせてくれる「何か」がある。 旅をしていて本当に楽しいのは、じつは景色を見たり未知の体験をしたりすることよりも、こうして見知らぬ同士が話をしたり、お互いの気持ちがわかったりすることのほうが大きいのではないだろうか。 たとえば、宿のご主人や店のオーナーと仲良くなる。参加したイベントで、そのガイドさんと親しくなる。バーの止まり木で、初めて会う人とブロークンイングリッシュでうちとける。 ワイキキは、いろんな国から人が集まっていて、受け入れる側もそれをわかっている。だから、コミュニケーションが町のいたるところで体験できる“仕掛け”や“参加者の心の準備”がちゃんとできているのだ。 草津の温泉街を歩くと、まんじゅう屋の店先で必ず呼び止められ、お茶とまんじゅうが無料で振る舞われる。もちろんおみやげを買ってもらうためのプロモーションなのだが、これは本当に買ってもらうためだけが目的なのか――。 僕にはそうは思えないのだ。もらうほうはもちろんうれしいが、ありがとうからはじまるお店の人との会話が、まんじゅうを配る側の人たちにも喜びを与えているのではないだろうか。 じつはこの気持ちのやりとりが、旅の楽しさを根底から支えてくれる、いちばん大事なことなのではないか。 旅の楽しさは、街の評価にもつながる。なぜか楽しい。そこにいるとうれしくなる。このわくわく感が増幅すれば、そこにやってくる観光客同士が勝手にコミュニケーションをとるようになるはずだ。まるでワイキキみたいに。 西の河原通りにある「三國家」の「三国そば」(950円)。板そばで更科系。2.5人前の分量がある。つけ汁は別売りで、都汁(醤油味)、田舎汁(味噌味)から選ぶ(ともに400円)。都汁は鴨南とラーメンのつけだれに似た味、田舎汁は赤だしベースの濃い目のけんちん汁のような味。
三國家 所在地/群馬県吾妻郡草津町大字草津386 TEL/0279-88-2134 草津旅行に話は戻る。 |
「湯もみショー」の開催時間は時期にもよるが、取材当日は日曜日で、10時、10時30分、11時の3回行なわれた。大人500円の入場券が必要。チェックアウト直後になるので、第1回目に見たほうが並ばずにすむ。湯もみ体験をすると草津の手ぬぐいがもらえるが、1回のショーで2回、計40名が体験できるようになっている。1階左右の浴槽入口付近に待機すると体験できる可能性大。
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・執筆を手がける。最近はじめたばかりのブログ「軽井沢別宅日記」をどうぞよろしく。 http://blog.bectac.com/