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オペラの不朽の名作の舞台となり近代日本を牽引した長崎居留地
グラバー園
通常は開園時間は8時~18時までだが、ゴールデンウィークと夏から秋にかけては開館時間が21時30分まで延長される。すべての洋館がライトアップされ、長崎の夜景を一望できる。
TEL:095-822-8223
延長期間:7月19日(日)~10月9日(金)
入館料:大人600円/高校生300円/小中学生180円
休館日:年中無休
http://www.glover-garden.jp/
ジャコモ・プッチーニの「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」は、世界的に有名なオペラの名作。

アメリカ海軍中尉が異国の地・日本で戯れに結婚をし、そうとは知らない15歳の元士族の娘・蝶々夫人は夫が去ってからもひたすら帰りを待ちわびる。

3年後、裏切られたことを知った蝶々夫人は、子どもを夫とアメリカ人の本妻に託し、自分は誇りを守るために自殺するという悲劇だ。

原作は1898年にアメリカ人のジョン・ルーサー・ロングによって書かれた小説がベースになっている。ニューヨークの名プロデューサー、ダヴィッド・ベラスコによって演劇化された。

この公演を観たプッチーニは、言葉が理解できないにもかかわらず感激し、3年の年月を費やして戯曲化にとりかかった。

こうして出来上がったオペラは、イタリアのミラノ・スカラ座で1904年に初演となった。以来、100年以上にわたって世界中で公演され、オペラの人気演目として不動の地位を獲得している。じつは、この原作の舞台と考えられているのが、長崎の外国人居留地である東山手の丘なのだ。

小説の時代背景は、日清戦争が勃発した19世紀末、長崎港を見下ろす丘の上。この地区の東山手十二番館には、小説家ロングの姉ジェニーが、夫である宣教師(アービン・コレル)とともに住んでいた。ロングは、姉から伝えられたアメリカ人船員と日本人女性との恋愛をモチーフにし、作品を書き上げたと考えられている。

さらに、東山手には、実際にお蝶さんと呼ばれていた女性もいた。
「グラバー園」にその名をのこす、日本の近代化に多大な貢献をしたトーマス・ブレーク・グラバーの妻、ツルその人だ。

ツルは大阪で造船業を営む商家の娘で、外国人に接客するときにはいつも蝶の紋の着物を身につけていたことから、お蝶さんと呼ばれていた。

「マダム・バタフライ」はあくまでもフィクションだが、当時をしのび、その雰囲気を残した住居跡はいまでも「グラバー園」として存在する。 この夏、長崎市内を一望するこの地に足を運んでみた。
グラバースカイロードのエスカレーターを上ると眼下に長崎市内が広がる
外国からやってくる大型クルーズ船が停泊する松が枝町・国際観光埠頭。

そのすぐ隣りに長崎港へと流れ込む大浦川がある。すぐ横には路面電車が走り、南側にはグラバー園のある小高い丘がそそり立っている。

すぐ近くにある公営駐車場にクルマを停め、大浦川沿いに歩みを進めた。
こちらを行けば、急な坂を上らずとも、エスカレーターとエレベーターを乗り継ぐ「グラバースカイロード」でグラバー園上部の第2ゲートへ直行することができる。

エスカレーターを上がったところで長崎市内を一望する展望台がある。 急な勾配を自力で登るのはかなりつらい。地元の人は生活道路の一部としてこの施設を利用している。

グラバー園には9つの洋風建築物が現存し、点在している。丘の上から縫うようにスロープを下りれば、車イスでも観光が可能だ。

グラバー邸
1863年に建てられた日本最古の木造西洋風建築。はじめはL字型だったが明治20年ごろまでに4度の増築が図られ、現在の邸宅の形になった
9つの建築物のうち。国指定の重要文化財は3つある。旧リンガー邸、旧オルト邸、旧グラバー邸だ。

花が美しい庭園や芝生に囲まれ、奥行きのある庇を列柱が支え、広いベランダを作っている。木造の西洋建築物なのに、違和感があるのは屋根のせいだ。 海に近いせいだろう。屋根は純日本風の瓦葺きになっている。

この地に居を構えたのは、日本を貿易相手とするイングランドやスコットランド出身の商社マンたちだ。
その代表格となるトーマス・ブレーク・グラバーはスコットランド出身で、21歳にして1859年の開港と同時に長崎に来日した。

造船、採炭、製茶貿易業を営む一方、伊藤博文をはじめとする幕末の志士を陰で支えた。現在のキリンビールの前身となる「ジャパン・ブルワリ・カンパニー」の創立メンバーとしても知られている。

グラバー園を下り、国道499号線に面したところに、明治32年創業の長崎ちゃんぽん発祥の店、四海楼がある。オープンと同時に満席になる人気店。ちゃんぽんのみならず、皿うどんも絶品だ。
四海楼
所在地:長崎市松が枝町4-5
TEL:095-822-1296 http://www.shinisekai.com/shikairou.htm
この地は激動する歴史を動かす舞台となった。外国貿易の接点であった長崎が起点となり、貿易面のみならず、上水道やアスファルト道路、発電設備などのインフラやトロール船による水産業の振興など、近代科学技術の発信源であり続けた。

邸宅をめぐって思うのは、現在の日本人が快適だと思う住環境が、すでにここに存在していたという事実だ。私たちの生活様式は激変し、多くの西洋文明が取り入れられた。ほんの150年ほど前には、まだ武士の生活の名残が存在していたはずだ。

しかし、現代を生きる私には、このグラバー園の邸宅が原風景であり、目標となる到達地点であったように思えるのだ。
私たちは、この快適な生活様式を、すでに自分たちのものにしてしまった。

武士が存在した日本的な原風景は、もう想像することができなくなっている。 それは、もっと遠い時代のことのように思えてならなかった。
<異国情緒あふれる長崎の秋まつり>
●2009長崎「マダム・バタフライ」フェスティバル
期間:9月5日(土)~28日(月)
場所:長崎ブリックホールほか
長崎国際観光コンベンション協会
http://www.at-nagasaki.jp/nitca/
●中国盆会
旧暦の盆に行われる中国式の盆祭りで、全国から華僑が集まり、境内は中国的な飾りつけが施される
期間9月14日(月)~16日(水)
場所:崇福寺
崇福寺 095-823-2645
●2009長崎居留地まつり
グラバー園をはじめ、旧外国人居留地に残る歴史的文化遺産を生かした祭り
期間:9月20日(日)~21日(月)
場所:東山手・南山手・大浦一帯
長崎市さるく観光課 095-829-1314

長崎は路面電車やコミュニティバスなどの交通機関が整備されているので、街歩きには市内周辺にある駐車場を利用するのが賢い方法。平和公園周辺には乗り換えできる公共駐車場があり、普通車は2時間を超えると1回600円とお得。このほか浦上側沿いの国道499号線は、交通の便もよく、パーキング表示があるのでぜひ利用したい。
平和公園駐車場
所在地:長崎市岡町8-13
営業時間:7時~20時
松山町駐車場
所在地:長崎市松山町2-3
営業時間:7時30分~22時
県営野球場駐車場
所在地:長崎市松山町2-3
営業時間:7時30分~20時
< PROFILE >
長尾嘉津友
雑誌や書籍、ウェブなど、活字にまつわるメディアのプロデュースを手がけるエディトリアル・ディレクター。
旅行や写真が趣味であり、仕事。最近はクルーズに注目しています。
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