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伊豆半島は、冬を忘れさせるほどの温暖な気候で観光客を迎えてくれる。
半島南端には入江一面を覆い尽くす水仙の花畑が広がっていた。
1853年(嘉永6年6月3日)、浦賀沖に4隻の艦隊が姿を現した。

これまで日本人が見たことのある帆船と異なり、モクモクと煙を吐く黒塗りの蒸気船で、船体の横には外輪がついている巨大な巡洋艦だ。

大きな大砲から、威嚇の空砲が発射された。第3代将軍徳川家光以来、200年続いた鎖国が解かれるきっかけとなったペリー艦隊の来航は、江戸に大きな衝撃を与えた。

開国を迫るペリーに対し、対応に困った幕府は1年の猶予をもらって一旦は引き揚げてもらう。

ペリーが江戸を離れたわずか10日後、将軍徳川家慶が死去。13代将軍には家定が就いたが、病弱で国政を担えるような器ではない。幕府の混乱を突き、ペリーは約束よりも半年早い嘉永7年1月に、再び浦賀に来航した。

1カ月にわたる協議の末、幕府はアメリカの開国要求を受け入れ、日米和親条約を締結する。下田と箱館(現在の函館)を開港し、鎖国体制は終止符を打った。下田は伊豆半島南部の東側に位置する。

了仙寺
所在地:静岡県下田市七軒町3-12-12
TEL:0558-22-0657
下田でアメリカ人の休息所となったのが、了仙寺と玉泉寺だ。

了仙寺を訪ねると、境内にはたくさんのアメリカジャスミンが植樹されている。「ジャスミン寺」の異名をもつこの寺が舞台となり、和親条約の細則を決めた下田条約が締結された。

この寺は三河以来の徳川家の旗本である今村氏が創建したもので、家光の時代に領地が与えられている。三つ葉葵の家紋が徳川家との結びつきを象徴している。

玉泉寺は、天正年間(1573年~1592年)に創建された歴史ある曹洞宗の古刹である。日本における最初の米国総領事館と米国人の墓所に指定された。1856年(安政3年)に初めて米国旗が掲揚されることになった。

玉泉寺
所在地:静岡県下田市柿崎31-6
TEL:0558-22-1287
初代総領事はタウンゼント・ハリス。以後、2年10カ月にわたり、幕末期の歴史の舞台となった。

下田市街の高台からペリーが来航した海を望むと、湾が左手からせり出しているのが見える。突端に見えるのが須崎。この突き出た岬の東側に、300万本の野水仙で覆い尽くされた群生地がある。

下田港を走る国道135号東伊豆道路を柿崎の交差点から海沿いに南下。道なりに丘を上がって左手にある御用邸を過ぎると、爪木崎の駐車場がある。

1月中旬に満開を迎える水仙の花。右手奥に爪木崎灯台が見える
駐車場から灯台に向かって左側にあるのが「雅の丘」。

ここ須崎地区は、御用邸があることから皇室との関係も深く、昭和、平成天皇もこの地を訪れている。
丘の上からみえるのは、爪木崎一帯の風景と青く澄んだ海。
爪木崎の小さな入江は美しく、海がエメラルドブルーに澄んで見える。

潮風を浴びて遠くにかすかに見える伊豆七島を眺めていると、かすかに甘い香りが漂ってきた。
海に向かって遊歩道が整備されており、あたり一面には白と黄色の水仙の花が咲き乱れている。300万といわれる水仙を眺めていると、冬という季節を忘れてしまいそうだ。

伊豆半島の東海岸に突き出た須崎半島東南端にある爪木崎灯台。昭和12年から稼働 し、天気がいいと伊豆七島方面を望める
白亜の灯台に向かって歩く。
この海に突き出た岩の一帯は、柱状節理になっており、それもまた見どころのひとつだ。

12月20日(日)のオープニングと1月10日、17日、24日(日)には先着200名に「いけ んだ煮みそ鍋」の無料サービスを実施
入江近くの駐車場には、水仙の球根や切り花や地魚の干物を売る露店が出ている。
売店では、地元の料理「いけんだ煮みそ鍋」が名物だ。

「いけんだ」というのはこの地の名前で、早朝の漁を終えたこの地の漁師が、市場に出せない魚を煮込んで作った素朴な朝のごはん。

観光地とはいえ、適度な規模で手作り感があり、地元を愛する人々の温かな雰囲気がこの地に漂っている。

クルマに戻る頃には、身体も心も温まって、すっかり心地よくなっていた。

「爪木崎水仙まつり」は毎年12月中旬から1月下旬にかけて行われ、水仙は1月中旬に満開となる。下田は朝市も楽しみのひとつでで、毎週土曜日には伊豆急下田駅前広場で旬の野菜を扱う山の朝市が(7時30分~)、日曜日には道の駅「開国下田みなと」で魚介の直売の海の朝市(8時~11時)が開かれている。

下田市観光協会
TEL:0558-22-1531
水仙まつり
< PROFILE >
長尾嘉津友
雑誌や書籍、ウェブなど、活字にまつわるメディアのプロデュースを手がけるエディトリアル・ディレクター。
旅行や写真が趣味であり、仕事。最近はクルーズに注目しています。
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