本州の下関と九州の門司とを結ぶ関門海峡。 海の幸が豊富なこの地に冬だからこそうまいカニがあると聞きクルマを走らせた。 |
山口の冬の味といえば、なんといっても下関のフグが有名だ。 下関流にいえば「ふく」。縁起をかつぎ、フグではなく福(ふく)からきている。 毎年2月9日は「ふくの日」として恵比寿神社で祈願祭が行われる。また、2月11日の建国記念日には南風泊市場でジャンボふく鍋サービスのイベントが恒例だ。 だが、今回の旅の目的は、ふくではない。 瀬戸内海の西側には、山口から九州にかけて周防灘が広がっている。 この周防灘の名物に、「月待ち蟹」というカニがいるという。いったいどんなカニなのか。今回は関門橋を中心に、月待ち蟹を求めて旅に出た。 海峡ゆめタワー
所在地:山口県下関市豊前田町3-3-1 営業時間:9:30~21:30 入場料金:600円(小・中学生300円) 休館日:無休(1月第4土曜日は休館) 頂上に球形の展望室がある高さ153mの「海峡ゆめタワー」。下部はビジネス棟だが、最上部の28階、地上135.5mの展望室からは、瀬戸内海から関門海峡、そして九州の山々まで、360度のパノラマを望むことができる。 西日本で最も高いタワーだけあり、目の前をさえぎるものがない。 海をはさんで関門橋を渡れば九州はすぐそこにある。夕暮れから夜になると、美しい夜景が広がるカップルたちの聖地となる。 関門橋は、高速道路の中国自動車道と九州自動車道とを結ぶ「関門自動車道」の一区間にある。 昭和48年に開通。本州側の下関ICから九州の門司ICまでを結び、全長は1068m、海面からの高さが61mもある。 海峡ゆめタワーから関門海峡を望む。左が下関、海を渡った右側が九州・門司
門司はいわば横浜のような町だ。 門司港の開港は明治22年(1889年)。かつて大陸貿易の基地として栄え、多くの外国客船が入港し、異国情緒の漂う文化が色濃く残っている。 JR門司港駅は、大正9年(1914年)に建てられた木造駅舎で、駅としては全国で唯一、重要文化財に指定されている。 夜になると、噴水が噴き出す駅正面の「レトロ広場」越しに、ライトアップされた駅舎が浮かび上がり、観光スポットとしても人気がある。 レトロな文化と新建築のコンベンションホールなどを融合させながら、新しい観光地となる町なみを築いている。 さて、ようやく「月待ち蟹」の出番だ。 周防灘では、10月から3月にかけて、月待ち蟹というワタリガニ(ガザミ)が最盛期を迎える。晩春に産卵された一番子は急速に成長し、秋には生態となって産卵できるようになる。 月の満ち欠けを経るごとに、ワタリガニはつれどんどん成長していく。 口にできる季節が待ち遠しい。そんなようすが、名前に表れている。 この月待ち蟹の、瀬戸内海最大の水揚げ量を誇るのが下関の東にある宇部市だ。 15~20センチにもなるこのカニは、市内では一部の店で食べることができる。 いつも店にあるというわけではないので、確実に食べたいのであれば予約したほうが無難だ。とくに冬は卵のあるメスがいい。 月待ち蟹は足を持って豪快に身にしゃぶりつく。熱湯に入れると足がもげやすいので生きているうちに足を束ねておくという
中にはオレンジ色の内子が。 身はほろほろと口のなかで崩れ、甘味が濃い。 なるほど、このうまさなら、流通量が少なければ広く外には出回らない。 外に出したくない。おいしい冬の味覚に出合うには、やはり地元に出向くのがいちばんだ。 |
下関ICから門司港ICへ高速道路で関門橋を渡ると普通車350円、軽自動車300円。関門橋の高速道路を通らず、一般国道を通る場合は、関門トンネルをくぐることになる。全長約3.5kmの海底トンネルだ。普通車150円、軽自動車100円。クルマなら5分でくぐれるが、歩いても渡ることができる。自動車道の下部は二重構造になっており、人が通る道になっている。エレベーターで約60mほど地下に降りると遊歩道になっている。歩きは無料だが、自動車と原付は20円の通行料が必要。通行可能時間は6:00~22:00。
< PROFILE >
長尾嘉津友
雑誌や書籍、ウェブなど、活字にまつわるメディアのプロデュースを手がけるエディトリアル・ディレクター。
旅行や写真が趣味であり、仕事。最近はクルーズに注目しています。
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