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魅惑の温泉ドライブ古湯から日帰り湯まで、日本全国温泉行脚の旅
フレッシュな源泉かけ流し湯と国宝の三重塔を訪ねる長野県青木村/田沢温泉
都と東国を結ぶいにしえの「東山道」。8世紀までさかのぼる古寺には、都の宮大工による鎌倉末期の国宝三重塔がひっそりと建っていた。
都と陸奥を結ぶ東山道に残された古寺の遺産
かつて日本に、「東山道」という主要道路があったことをご存じだろうか。

街道としてイメージするのは、江戸時代に整備された、日本橋を起点とする五街道だろう。東海道、中山道、甲州街道、奥州街道、日光街道である。

東山道は、古代の地方区分である五畿七道のひとつで、七道には東山道のほか、東海道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道がある。
これらは国の名前としては北海道のように「とうさんどう」と読むのが一般的だが、大和言葉の時代は「あずまやまみち」とでも呼ばれていただろう。

さて、東山道は、奈良の都から本州の内陸部を進んで陸奥、出羽の国へ東西に横断していく山越えの道だ。
中央政府と東北地方の国府とを結ぶ、重要な官道だった。東征のための軍隊の道であり、地方の物産を運ぶ産業の道でもあった。道幅も約12mほどあり、16kmごとに伝馬を置く駅があったことが、『延喜式』などの資料によってわかっている。

都から陸奥国までは、運脚(運搬人夫)で25日かかったという。都へ上る際には、貢物の運搬のために倍の日数がかかっていた。

江戸時代になり、東山道は中山道、日光例弊使街道、奥州街道として整備された。

さて、今回の旅は、長野県・青木村にある国宝の三重塔と山間の田沢温泉をめぐる旅だ。

共同浴場「田沢温泉有乳湯(うちゆ)」の足湯
田沢温泉有乳湯
所在地:長野県小県郡青木村大字田沢2700
TEL:0268-49-0052
定休日:無休
営業時間:6:00~21:00
入浴料:200円(4歳~小学生100円)
しなの鉄道上田駅を起点に、松本街道(国道143号線)へ出て20分ほど走ると青木村に入る。
目的地となる「大法寺」は、青木村に入ってまもなく、街道から北へ少し丘を登ったところにある。

縁起を見ると、大法寺は藤原鎌足の子、僧定恵(じょうえ)によって大宝年間(701年~704年)に開山されたとある。
鎌足の子には、のちに藤原家を継いだ不比等がいるが、定恵はその兄にあたる。ただ、開山を大宝年間とするには、定恵の生没年がちょっと合わない。

定恵は皇極2年(643年)に生まれ、天智4年12月(666年2月)に没した。
白雉4年(653年)に遣唐使とともに長安に渡り、天智4年9月(665年)に帰国したが、わずか3カ月後には奈良県明日香村で亡くなったとされている。

大法寺は、比叡山にある天台宗の総本山、延暦寺の末寺だ。
延暦寺は、最澄が延暦7年(788年)に草庵を開いたのが始まりとされている。
ちょうどその頃、大同年間(801~810年)に、征夷大将軍として蝦夷を制した坂上田村麻呂が、初代天台座主の義真に対し、大法寺再興を祈願している。

このことからも、定恵との関係については疑問が残るものの、延暦寺との関係や開山の時期については信憑性があると考えられる。

大法寺三重塔を石段の下から望む
大法寺
所在地:長野県小県郡青木村大字当郷2052
TEL:0268-49-2256
拝観料:100円(小中学生50円)
十一面観音像と普賢菩薩立像拝観は250円
(3人以下は800円/要予約)
ところで、大法寺の観音堂の本尊は十一面観音像で、普賢菩薩立像とともに国の重要文化財に指定されている。
観音堂自体も重要文化財なのだが、この建物を回り込むように山を登っていくと、木造の美しい三重塔が姿を現す。

あまりの美しさに旅人が振り返ることから、「見返りの塔」と呼ばれる。
高さ61尺2寸5分(18.56m)の三間三層塔婆。
鎌倉末期、正慶2年(1333年)に建立された国宝だ。

近づいてみると、遠くから眺めていたときのような、威圧するような印象は徐々に薄らいでいく。だが、石段の下から眺めると、じつに美しい。過度な装飾がないだけに、より一層、塔の美しさが際立つ。
檜皮葺(ひわだぶき)の初重が大きく、安定感をもたせているのは、下から見上げた時の錯覚で、遠近感をより強調しているためかもしれない。

解体修理の際に見つかった柱の墨書から、この建築法は奈良の興福寺三重塔と同じで、都から派遣された天王寺流の大工たちの手によることがわかった。

また、最近の文化庁の調査により、一層内部に壁画があることが発見された。葉のある唐草を背景に、等間隔で鳥を配し、朱や紫のぼかしのある花と白い花が描かれている。これは室町初期に京都から来た絵師によるものだ。

クルマで道を走っていると見逃してしまいそうな地方の小さなお寺だが、都との結びつきを深く感じる。
現在の姿とはまた違った世界が、かつてここにあったことに思いを馳せる。

東山道の周辺には、このようなエピソードがたくさん眠っているに違いない。
共同浴場とは思えないフレッシュな気泡と香り
大法寺をあとにし、国道をふたたび松本方面へ向かう。
青木村役場を過ぎたところから左折して十観山方面へ5分ほど走ると、もうひとつの目的地、田沢温泉に到着する。

川沿いに木造の家屋が小ぢんまりと建ち並び、緩やかな石畳の勾配が真っすぐ続いている。

田沢温泉の石畳を歩くと時空を超えた感傷が生まれる
いわゆる歓楽街ではなく、旅館が数軒寄り添うように建っているだけだが、蔵や木造3階建ての老舗旅館が風情を誘う。

坂を登りきったところにあるのが、日帰り湯の「田沢温泉有乳湯(うちゆ)」だ。建物を回り込むように登って駐車場に向かうと、まだ昼過ぎだというのに駐車場はクルマで超満員。

泉質は単純硫黄泉で、浴槽からほんのりと硫黄の香りが立ち上る。湯に入ると肌に気泡がまとわりついてくる。
この日帰り湯のよさは、なによりもフレッシュな泉質のよさだろう。加温なしの源泉かけ流しで、薬効が感じられるのがいい。また、入浴料が200円と安いのも特筆ものだ。
地元の人が、この温泉を目当てに集まってくる理由がよくわかる。

風情のある石畳の道を少し下ると、島崎藤村が逗留し「千曲川のスケッチ」の構想を練った、老舗の「ますや旅館」がある。旅館の存在そのものが歴史遺産で、国の登録有形文化財に指定されている。

小川をはさんで向かい側にある富士屋ホテルの立ち寄り湯を利用してみた。

富士屋ホテル露天風呂「仙人湯」
富士屋ホテル
所在地:長野県小県郡青木村田沢温泉
TEL:0268-49-3111
日帰り入浴入湯料:500円
営業時間:11:00~21:00
この宿には2種類の源泉がある。
露天風呂の「仙人湯(やまどゆ)」は、飛鳥時代後半の開湯で、行者の役小角によるという縁起が壁に貼ってある。
源泉は単純硫黄泉で、湯温は34.9度。寒い時期に入るにはちょっとつらい。
 
もうひとつの内風呂は源泉は39.8度。こちらも単純硫黄泉だが、加水・循環はしておらず、加温だけの源泉かけ流し。

この源泉は共同浴場と同じ「有乳湯」と名づけられ、由緒があった。
相模国の足柄山に住む山姥が、丈夫な子どもを生むためにこの地に湯治に訪れ、のちに坂田金時(金太郎)を生んだという伝説が残っている。

伝説が何の資料によるものかは明らかではない。
ただ、この土地には、それを信じさせるだけの“風情”がある。

湯の中でなめらかになっていく肌をぬぐいながら、徐々に穏やかな気持ちになっていく自分に気づいた。
ドライブのヒント
上信越自動車道・上田菅平ICより上田バイパスを経由し、別所温泉方向に向かう。国道143号線沿いを走れば青木村に至る。大法寺には大きな駐車場があり、十分な駐車スペースがある。極端に混む休日以外は心配はなさそう。「田沢温泉有乳湯」には目立つような駐車場の標識がない。石畳の道をそのままクルマで上がったら、日帰り湯の建物の角に足湯があるので、そのT字路を右折。建物を回り込むように左折すると、駐車場がある。
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・執筆を手がける。ブログ「軽井沢別宅日記」をどうぞよろしく。 http://blog.bectac.com/
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