世界的な人口増加にともなう自然の消失と地球温暖化が叫ばれて、ずいぶん時間が経ちました。いま、世界各地で自然を守ろうという活動が始まっています。その先駆け的なものが「ラムサール条約」の制定だったのではないでしょうか。 |
ラムサール条約登録地の琵琶湖湖畔で水鳥のコロニーを見つけました
たとえば、島根県にお住まいの方は知っているのでは。 松江しんじ湖温泉駅と電鉄出雲市駅を結び、宍道湖の湖畔を走る一畑電車は、「しんじ湖ラムサール号」を走らせています。 この2両編成の車両、車体には水鳥などの絵が鮮やかに描かれています。というのも、宍道湖が2005年11月にラムサール条約に登録されたためです。 さて、ラムサール条約とはなんでしょう? ひとことでいえば「湿地の保存に関する国際条約」で、今から約40年前の1971年に制定され、1975年に発効した歴史ある条約なのです。 水鳥を食物連鎖の頂点にする湿地の自然のままの生態系を守るのがいちばんの目的で、昨年までの締結国は150カ国を超し、登録地数も2000カ所に迫る勢いになっています。 ツガイでしょうか。鳥たちは湿地の食物連鎖の頂点に君臨しています
細かい規定はありますが湿原や湖、海域なども対象になっています。それだけ守るべき地域が地球上には多いということなのでしょう。 また、登録されるには地形だけでなく、「水鳥に基づく基準」「魚類に基づく基準」といった項目もあります。 水鳥でしたら定期的に2万羽以上の水鳥を要していること。魚類であれば産卵場、稚魚の生育場であることなども含まれています。 地域の人々にとって、その環境を維持するのはたいへんな努力が必要でしょう。しかし、ネイチャーウォッチャーにしてみれば、ラムサール条約登録地は自然観察の絶好の地といえそうです。 |
観察者はじっと見続けるのがルール。それでも飛ぶ姿や食事をする姿など、さまざまな姿を観察できます
前述した島根県の宍道湖もそうですが、都道府県別でいえば、やはり北の大地・北海道が12カ所と最多を誇ります。 タンチョウヅルの飛来で有名な釧路湿原は、日本最大の淡水魚であるイトウ(サケ科)やキタサンショウウオなどの希少生物の生息地でもありますが、その登録は1980年。 日本におけるラムサール条約登録地の第1号でした。 北海道はそのほかにもクッチャロ湖、ウトナイ湖、サロベツ原野などが登録されています。 野良猫が近づいて心配していたら、すぐに飛び立っていきました
東京湾に面する習志野市の谷津干潟は、本来なら他の海岸線同様に埋め立てられてしまうはずでした。 しかし、たまたま旧大蔵省の所有地であったために埋め立てを逃れています。 それでも再び埋め立ての計画が持ち上がったときに、シギやチドリ、カモなどの渡り鳥の生息地になっていることが自然保護活動家に指摘され保護されました。 現在では谷津干潟自然観察センターが整備され、年間通じて60種類以上の鳥が観察できます。 |
水鳥だけでなく、水辺には多くの野鳥が集まってきます
九州ではくじゅう坊ガツル・タデ原湿原が同じく2005年の登録。沖縄では慶良間諸島海域も2005年に登録されています。 これまでに取り上げたのはごく一部で、日本全体では40カ所弱が登録されています。 鳥類が自然のままに生きるラムサール条約登録の地へ出かけてみませんか。 鳥を観察するのなら、四季ごとに出かけてみるのが手です。 水鳥の多くは渡り鳥です。季節で飛来する鳥の種類も違います。年間通じて見られる鳥、夏だけにいた鳥、冬だけにいた鳥をメモしてみるのも楽しいでしょう。 今回はラムサール条約について触れてみました。いま、自然を守ることに積極的に取り組んでいる人々がいます。そんな活動に少しでも協力できるといいですね。 |
●ラムサール条約登録地を知る「ラムサール条約と条約湿地」
http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/index.html
日本のラムサール条約登録地とラムサール条約について解説しているサイトです。
●日本最初の登録地・釧路湿原を知る「くしろ観光協会」
http://www.kushiro-kankou.or.jp/
釧路情報が満載。「釧路市湿原展望台ブログ」は毎日の様子がわかります。
●水芭蕉といえば尾瀬「尾瀬保護財団」
http://www.oze-fnd.or.jp/
尾瀬に関する情報や尾瀬でのネイチャーウォッチャーの基本マナーなどにも触れています。
●ぐるりと琵琶湖情報「滋賀県観光情報」
http://www.biwako-visitors.jp/
日本一広い琵琶湖は滋賀県のなかにすっぽり入っています。ここで琵琶湖情報を。
●宍道湖を観光するなら「一畑電車」
http://www.ichibata.co.jp/railway/index.html
クルマを預けて「しんじ湖ラムサール号」に乗ってのんびりと宍道湖観察はいかが?
< PROFILE >
石井 喜代美
ご主人がアウトドア・旅行雑誌の編集者をしており、その関係で国内外の旅に同行。ブランドショップより地元の市場、高級レストランより庶民の味、そして動物園と水族館には必ず行く主義だとか。キャンプや温泉にも詳しい。
石井 喜代美
ご主人がアウトドア・旅行雑誌の編集者をしており、その関係で国内外の旅に同行。ブランドショップより地元の市場、高級レストランより庶民の味、そして動物園と水族館には必ず行く主義だとか。キャンプや温泉にも詳しい。