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日本列島自分で"やる"旅 見るだけではつまらないから Experienceの世界へ体験
人間黒たまごの出来上がり!

温泉に行くたびに「地球ってすごいなぁ」と漠然と思うぼく。温泉とひとことに言ってもその成分はまちまち。効能なども異なるが、わかりやすいのは「温泉たまご」の食べ比べだと思う。さあ、温泉地体験に行こう!

箱根名物の黒たまご
箱根の大涌谷は湯気が勢いよく噴き出しています
つい最近、箱根の大涌谷に友人と行った。行ってみて驚いた。そこは日本の観光地ではなく、中国の観光地だったのである。

かつて、万里の長城に旅したときを思い出した。延々と続く万里の長城は、「とりあえず」と、観光客が高いところをめざして登る。休日ともなるとゾロゾロ行列が激しく、前からも後ろからも中国語が聞こえてくる。

しかし、時々「すごいねぇ」なんて日本語が聞こえてくるものだから、「お、日本人がいる!」とちょっとうれしくなる。 大涌谷もそうだった。遊歩道が人に埋まり、中国語ばかり聞こえてきた。

だから、ときおり日本語が聞こえると、「お、日本人だ!」と、ちょっとうれしくなっちゃって、なんだか万里の長城のときの気分になったのである。

ぼくが行ったときは8割が中国人、5%が欧米人、残りが日本人という感じだった。

黒たまごを売る小屋のまわりには中国人観光客があふれていました
箱根の遊歩道の終点、湯気が立ち上る場所に小さな小屋がある。そこの名物が黒たまご。文字どおり真っ黒な茹でたまごだ。

気孔の多いたまごの殻の鉄分と、箱根の温泉成分のひとつである硫化水素が結合して硫化鉄となって外側が真っ黒になる。

中身は普通の茹でたまご。温泉温度が高いから、固めに茹でられている。

それにつけてもこの黒たまご、ひとつ食べたら寿命が7年延び、ふたつで14年とある。5個入り1袋で売られているのだが、5個とも食べたらどうなるのだろう!?
よーく食べ比べると味もいろいろ
こちらも黒たまごができる秋田・泥湯温泉。白にごりの湯です
「温泉たまご」が名物になっている温泉地が多い。でも、箱根のような真っ黒なたまごがどこにでもあるわけじゃない。化学反応によって硫化鉄が作れないと、黒たまごにはならないためだ。

アルカリ成分の多い温泉や、単純泉といった温泉で茹でてもたまごは白いまま。

箱根の大涌谷や秋田県の後生掛温泉、同じく秋田県の泥湯温泉は、源泉の中に硫化水素が含まれているからこその黒たまごになる。

一方で「温泉卵」もずいぶん流通してきた。黄身の部分は固いのに、卵白部分は柔らかいのが温泉卵の特徴だ。これは、黄身の凝固温度が約70度なのに対し、卵白の凝固温度が約80度と10度も高いことを利用したものだ。

源泉温度が60~70度の温泉地であれば、そこに30分ほど入れておけば、たまごの特性を利用して「温泉卵」ができる。

たとえば長崎県の小浜温泉は湯量が豊富な名湯だが、源泉温度は100度前後。この湯ではいわゆる「温泉卵」はできない。散策路に温泉たまごを売る店もあるが、どれも固茹でたまごである。

そのほかにも塩分の強い温泉だと、たまごに塩味がつく場合がある。海辺の温泉で茹でたまごを食べてみたら、ほどよい塩味でおいしかったなんていう話も多い。

温泉場のたまご試食体験、実は「温泉の特性がわかり、地球の偉大さが感じられる」ものなのだ。

手も足も真っ黒になっちゃった!
在りし日の温泉達人・野口悦男さん。大分・赤川温泉にて
数年前のこと、今は亡き温泉達人・野口悦男さんと東北温泉三昧の旅に出たことがある。

秋田・乳頭温泉郷のすべての温泉をてくてくまわり、その後に周囲の温泉地も訪ねた。

乳頭温泉といえば、白にごりの湯とランプの宿が大人気の鶴の湯や、黒湯などの風情ある宿が多い。全湯をまわるのだから、自然に駆け足入湯になる。しかし、温泉達人は最後に訪ねた妙の湯だけはじっくり入れと言う。

「ふむふむ、ここの女将は美人だから、達人はご機嫌をとっているのだな」などと推測しながら茶色にごりの湯にゆっくり入った。

その後、「すぐ次に行くよ、Tシャツでもさらっと羽織れば十分」と言うと温泉達人は素早くクルマに駆け込んだ。満足に身体も拭けないまま、すっ飛ばして行く温泉達人のクルマで岩手県の国見温泉に向かった。

国見温泉はエメラルドグリーンの美しい湯である。ぼくらはその美しい湯の露天風呂に満足顔でつかっていた。すると、笑い出す温泉達人や周囲の温泉客。

岩手・国見温泉。足の裏が真っ黒になって、「人間黒たまご」の完成!!
なぜ笑われているかわからずに、ぼくらはお互いの顔や手足を改めて眺めてみた。
すると、とくにシワの多い部分が真っ黒になっている。

茶色の湯・妙の湯の鉄分とエメラルドグリーンの湯の硫化水素が化学反応を起こし、ぼくらが黒たまご状態になってしまったのである。なんとも不思議な温泉体験。

鉄分の多い妙の湯に入らせてから国見温泉に連れて行く遊び心、ぼくらをイタズラに使った温泉達人は満足そうに笑っていた。
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ホームページで温泉旅行を
●箱根の黒たまご(大涌谷観光センター)
http://www.owakudani.com/modules/mw_top/
●泥湯温泉(秋田)
http://www5.ocn.ne.jp/~doroyu-o/
●乳頭温泉郷 妙の湯(秋田)
http://www.taenoyu.com/
●国見温泉(岩手)
http://www5.famille.ne.jp/~kunimihp/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載(http://www.yomiuri.co.jp/tabi/
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