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関連図書の出版が相次ぎ、テレビでも頻繁に放送される「パワースポットめぐり」。そのブームの発端になったのは明治神宮の“清正井”ではなかったでしょうか。現在では長蛇の列が続く人気絶大のパワースポット、行ってみるしかありません。
大鳥居をくぐって御本殿に向かう左側に御苑の入り口があります
ある有名芸人がケータイの待受けに清正井の写真を貼ったところ、仕事が増え、プライベイトも順調になったとか。

それをテレビで多いに語った頃から清正井は広く知られ、人気のパワースポットになりました。

テレビで放送されるそれは、「何人が並んでいた」「清正井にたどり着くまでに○分」という大行列の映像ばかり。

でも、この連載を担当している以上、一度は行かねばなりますまい。

というわけで、9月の平日の昼下がりに明治神宮を訪ねました。

明治神宮はご存知のとおり、明治天皇を祀る神社です。

明治天皇の御崩御のあとに御料地に創建され、大正9年に鎮座祭が行われました。

「御料地」というのは皇室の財産を指しますが、元々は近江彦根藩の井伊家の下屋敷のあった場所で、明治維新後に井伊家から政府に献上された土地でした。

そして、井伊家の屋敷ができる前に下屋敷を構えていたのが加藤家なのです。

御苑内の南池は清正井の水でできています。大きな鯉が跳ねました
豊臣秀吉の家臣として仕え、武功をあげて肥後北部を与えられ、秀吉没後には徳川家康の家臣となって関が原の戦いの働きによって肥後熊本藩主になった加藤清正。

江戸の屋敷に清正自身が住んでいたかどうかは定かではありませんが、巨漢で知られ、トラを槍で一突きにし、“土木の神様”などの武勇が残る清正ならではの、特殊な技巧を用いて井戸は作られたようです。
清正井に続く道は森の中の小径。都会の中心とは思えません
「もう秋のはずなのに」と愚痴りたくなるような9月の暑い日の昼下がりに明治神宮に行きました。

原宿側から明治神宮内に入り、初詣でのときには日本一の人を集めるだけある幅の広い参道を大鳥居、御本殿に向かって歩いて行きます。

敷地内はみごとな樹木が多いので、その葉が太陽をさえぎり、高原にいるような涼風がときおり肌をなでて気持ちいい。これからの季節、参拝には最適でしょう。

広大な明治神宮の中に「御苑」があります。

「うつせみの 代々木の里は しづかにて 都のほかの ここちこそすれ」と、明治天皇が詠んだ御苑は加藤家の庭園でした。

御苑は開苑時間が9時~16時(11月~2月、そのほかの季節は3~10月は16時30分まで、6月は8時~)と定められており、御苑維持協力金500円が入園に必要なために、パワースポット・ブームが起きる前は、明治天皇が昭憲皇太后のために植えさせた花菖蒲が咲く6月に賑わうくらいでした。

ラッキーなこともあるもので待ち時間はわずか3分でした
しかし、清正井が世間に知られてからは変わりました。

大鳥居をくぐって御本殿に向かう左側に御苑の北門があるのですが、参拝者の多くが御本殿に向かわずに北門から御苑に入っていくのです。

「あちゃちゃ、これはもうすごい人なのかな」

暑さにやられ、くらくらしながら北門を入っていったのでした。
清正井の水はまさに美しく清い水。水の動きがはっきり見えます
協力金を支払うときに混雑ぶりを聞いてみました。

すると、「今日は空いていますよ」とのこと。それでも“整理券”が配られています。今や清正井を訪ねるには整理券が必要なのです。パワースポット・ブームの威力を知りました。

清正井の湧水によってできる南池、菖蒲田などを眺めながら清正井をめざします。

休日だったら行列が続く森の道。しかし、スイスイと進めます。

警備員の人に整理券を渡すポイントもスイスイ。

歩道の横の大木の洞からも新しい命が。森全体に生命力が漲っています
みるみる清正井が近づいてきました。

最後は階段を下りて清正井とご対面。そこに5、6人が待っているだけでした。

待ち時間3分!わぉ! 
行く時期を選べば、森の中の散策を楽しんでいるうちに清正井に到着できます。火曜日の昼下がりは正解でした。

清正井には清らかな水がありました。

本当なら手で清水に触れてみたい!でも、この日は「都合により触れること、飲用は禁止」とのこと。

残念な気持ちで写真撮影だけして後にしました。帰りがけに警備員に聞くと、「雨が降っていないから湧水の量が少なくて……」とのこと。

御苑から原宿に向かう途中には休憩所もあります
なんでも、この時期だからこその措置とのことでした。

猛暑はパワースポットにも思わぬ影響を与えていたのです。

これから長雨のシーズンを迎えれば、清正井の水に触れることができるかもしれませんね。
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●明治神宮
http://www.meijijingu.or.jp/
●知っておこう「加藤清正」(熊本城公式ホームページ)
http://www.manyou-kumamoto.jp/contents.cfm?id=448
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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