江戸時代、深川はある意味で憩いの場所になっていたそうです。懸命に働き、久しぶりのお休みの日に深川に出掛けてお参りや門前の茶屋で菓子を楽しむ。都内有数のパワースポットとして知られる富岡八幡宮、成田山深川不動堂のある深川へ。 |
日本の測量を行った伊能忠敬も、10回の測量のうち8回は出発前に参拝、旅の無事を祈願したという富岡八幡宮
しかし、SMAPの木村拓哉が主演した藤沢周平作の『武士の一分』などの映画が注目され、ドラマでは福山雅治の『龍馬伝』や大沢たかおが主役の『JIN-仁-』が話題になり、さらに文芸の世界でも和田竜による『のぼうの城』がベストセラーになるなど、“時代もの”が数々とヒットを飛ばしています。 その影には「歴女」と呼ばれる歴史好き女性の存在だけでなく、“触れてみたらおもしろかった”という率直な感想があると思われます。 ☆ 日本を代表する剣豪小説家のひとりに池波正太郎がいます。 1923年に生まれ、1990年に亡くなった東京・浅草生まれの作家で、代表作に『鬼平犯科帳』『仕掛人・藤枝梅安』などがありますが、とくにわたしが好きなのは『剣客商売』です。 この作品はテレビドラマ化もされましたし、お芝居などの演目にもしばしばなっていますね。 富岡八幡宮の境内にある横綱力士碑。歴代横綱全員が彫られています
ところで、池波正太郎といえばグルメとしても広く知られ、小説の中にもさまざまな江戸のお料理が出てきますし、『散歩のときに何か食べたくなって-東京のうまいもの-』、『食卓の情景』などの随筆も残しています。 『剣客商売』のなかで、秋山小兵衛がぶらりと大川(隅田川です)を渡り、深川まで出掛けてお参りをして、おいしいものを食べてくるという下りもたくさん出てきます。 今回は大川を渡り、深川のパワースポットを散策します。 |
成田山深川不動堂では火を使った儀式が外からでも見られます
ひとつは「富岡八幡宮」です。 江戸最大の八幡様で、1627年に創建されました。御祭神は応神天皇たち。御利益の多い神社として、江戸時代から深い信仰を集めてきました。 8月中旬に行われる例祭は江戸三大祭りのひとつで、とくに大小120数基の町神輿の中から大神輿ばかり54基が勢ぞろいする3年に一度の本祭りは水を掛け合う祭りとしても圧巻です。 境内には「横綱力士碑」「超五十連勝力士碑」などもあり、のんびり散策するのにもってこいです。 もうひとつは富岡八幡宮と道路を隔てて隣接している「成田山深川不動堂」です。 江戸時代の初期に歌舞伎役者の市川團十郎が不動明王を演じたところ、江戸庶民のあいだに成田山の不動明王を参拝したいという声が高まりました。その声に応じて創建されたものです。 人情深川ご利益通りにある「六衛門」の深川丼セット。あさり、ネギ、厚揚げなどをミリン、酒、醤油で煮込んでご飯の上にかけた特製丼です
秋山小兵衛の深川詣でも、まずは富岡八幡宮に頭を下げるのが常です。 |
門前の「伊勢屋」は甘味のおみやげを購入する人たちでいっぱいです
伊勢屋のたくさんの商品のなかでも人気がある「深川もち」
人情深川ご利益通りにある宮月堂の名物は「あげまん」。ご利益通りに、あげまん。もう、間違いなくパワーが出ます
永代通り沿いや1本入った路地には何軒もの飲食店があります。 いわゆるファミリーチェーンやチェーン居酒屋さんもありますが、それよりは個人営業の食堂、小料理店が目立ちます。 それも深川・門前仲町の特徴ですから、女性たちにとっては「どこに入ろうか?」と、迷ってしまいます。 また、成田山深川不動堂へ続く小路は「人情深川ご利益通り」と銘打たれ、骨董店、甘味処、飲食店やおみやげ店が並びます。こぢんまりした雰囲気ですが、ぶらり歩きにも適しています。 わたしは名物の「深川丼」をいただき、縁起がいいことでも知られる「あげまん」を食べ歩き、おみやげに「深川もち」を買いました。 |
○深川八幡宮
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/
○成田山深川不動堂
http://www.fukagawafudou.gr.jp/
○門前仲町の商店街のホームページ
http://www.mon-naka.com/shuuhenkankou/index.html
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。