日本初のバンジージャンプは1994年に山形県に設置されたもの。それ以来、テーマパークなどにもお目見えして、一躍その認知度が高まっていった。今回、ご紹介するのは群馬県みなかみ町にあるバンジージャンプ。高さ42m、日本一のバンジーだ。 |
みごとな景観は諏訪峡大橋の上から撮影。ということは、ここから飛び降りるんですよ!
大きなやぐらを木で造り、足にツタを結び付けた少年がその頂点から飛び降りるのだ。 起源は1000年以上も昔で、夫の暴力を恐れた妻が木に登り、夫もまた後を追って木に登ったそうな。木の上でもみ合いになった末、夫は落下して死亡。ツタを足に絡めていた妻は地面に叩きつけられることなく、一命を取り留めたという。 それ以来、足にツタを結び付けて飛び降りる行為は、成人への通過儀礼になった。 そういえば、ウインタースポーツの「純ジャンプ競技」。 あれはもともと処刑方法だった。 どんな女性も陽気なスタッフの声でスムーズに飛び出していく
ところがあるとき、その刑罰を受けるのを想定して練習を積んだ罪人がいた。捕まって処刑を受けたとき、その罪人はみごとなジャンプを披露して谷に着地、なんと逃げ切ってしまったのだ。 それ以来、刑罰から純ジャンプというスポーツに変わった。 危険を伴うスポーツの起源は、どれも同じようなものなのかもしれない。 |
渓流に向かってダイビング。反動で橋の近くまで返ってくるときが怖い
温泉街の手前の深い谷が諏訪峡谷だ。遊歩道が設けられ、温泉を訪れる人々が峡谷散歩を楽しんでいる。 その諏訪峡谷に諏訪峡大橋ができたのが平成6年のこと。 今ではすっかり目玉観光スポットになった。 まずは景観のみごとさ。42m下を流れる美しい川と、遠くに見える尾瀬の山々や谷川岳から続く山々は観光客の目を飽きさせない。 橋の途中に人だかりがしている。 観光協会が道の使用申請を提出し、それが許可されることで設けられたバンジー施設だ。 川までの深さ42m。日本一のブリッジ・バンジージャンプ! しばし、様子を見る。 係員の「5、4、3、2、1」の掛け声で、若い男性も、「エー、飛べるの」という可憐なる女性も、中学生の女の子もそのお母さんも、みごとに飛び出していく。おじさんもね。 そういえば、自衛隊のある部隊の隊長に聞いた話がある。 人間が高さに対する恐怖をもっとも感じるのは10~15mくらいだそうだ(真相は分かりません)。 42mともなると、景色はまるで絵画の一部で、恐怖心さえ感じないのかもしれない。 すべてを記録してくれます。余裕ある人はダイビング中にカメラ目線
誰もがスムーズに飛び出す。 |
バンジーの後に立ち寄った宝川温泉の大露天風呂。源泉かけ流し加温・加水なし
橋の上からはカメラマンが一部終始を撮影し、希望者に販売している。記念にもってこいだ。 でも、写真は二の次。バンジーが人の価値観を変えるのは嘘じゃない。 飛び終わった後は「俺だってやれるんだ!」という高揚感がある。 「できるんだ!!」 自分だけじゃない。他のジャンパーたちも、一様に声が大きくなる。顔にうっすら紅が差して元気いっぱい。 もう、次は世界最大級のマカオタワーの高さ233m地点からだって、バンジーできちゃうぞ、くらいの勢い。 これから先の人生、なんでもできるぞ!の勇気リンリンなのである。 日本一のバンジージャンプは、これから先の人生に勇気と自信を与えてくれる衝撃の体験だった。 ☆ ちなみに勇気と自信をもらった僕は、なんのことはない、バンジーの後はみなかみ町奥利根の大露天温泉で、「ほっとひと息」していましたけど……。 |
コラムに登場する施設のホームページ
●みなかみバンジー
http://www.bungyjapan.com/ja/index.php
●みなかみ町観光協会
http://www.enjoy-minakami.jp/
●宝川温泉
http://www.takaragawa.com/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載(http://www.yomiuri.co.jp/tabi/)
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載(http://www.yomiuri.co.jp/tabi/)