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魅惑の温泉ドライブ古湯から日帰り湯まで、日本全国温泉行脚の旅
デュアルライフを想像させる東京からわずか2時間の自然の宝庫東京都大島町・三原山温泉
伊豆大島は、東京からジェット船で約2時間で行ける自然豊かな別天地だ。海水浴を楽しむ夏の観光地も、発想を変えれば理想的な田舎暮らしの拠点になる。伊豆大島は豊かなデュアルライフを実現する可能性に満ちている。
東京の自然豊かな島で月5000円で田舎暮らし
もう10年以上前になるだろうか。
行きつけの四谷荒木町のイタリアンバーでのこと。  

その日も日付が変わってから、4軒目にしてようやくそのバーにたどり着いた。やや重い扉を開けると、閑散としたカウンターの奥から、マスターがひょっこりと顔を出した。
少し会わないうちに、やたら日焼けしている

「どこに行って来たんですか?」
「いやあ、大島でね、漁をしてきたもんで。向こうに家を借りてるんですよ」  

聞けば、伊豆大島に数名の仲間と共同で一軒家を借り、そこを拠点にして遊んでいるのだという。

「大島、いいよー。温泉はあるし、釣りもできるし、サイクリングもできる。小さいけどゴルフ場もあるよ」  

自分がその話に強烈に惹かれたのは、大島には申し訳ないが、アクティビティにではなかった。「仲間と物件を借りて住む」という発想のほうだった。

「家賃は一軒家で月4万円。それを8人ぐらいで割ってるから、ひとり当たりの負担は毎月5000円ぐらいかな」  

東京から片道2時間弱で島の生活へとチェンジできる
月5000円で田舎暮らしが手に入る。
昼も夜もないような慌ただしい生活を送っていた自分にとって、週末の田舎暮らしは夢のような世界に思われた。しかも、それは単なる手の届かない夢ではない。自分が望みさえすれば、田舎暮らしはすぐにでも実現できるのだ。
シェアという考え方は、自分が抱いていた別荘のイメージをがらりと変える、大きなきっかけとなった。  

ご存じのとおり、大島は東京都にある。
東京から南西に120km。江ノ島から南に60kmにある、伊豆諸島で最大の島だ。

東京の竹芝客船ターミナルからは高速ジェット船で1時間45分。
熱海からは45分で行ける。  

マスターは、夜22時発の大型客船で一晩かけてゆったりと大島に向かい、朝6時に到着。その日遊んで1泊して、次の日の14時過ぎの船で19時に東京に戻ってくるというのが恒例のパターンだと言っていた。  

週末を大島で暮らしたら、人生はどのように変わるのだろう。
荒木町のバーに行くたび、マスターから大島の話を聞くのが楽しみになった。  

大島には温泉施設がいくつかある。
三原山温泉
三原山を望む雄大な露天風呂と 源泉かけ流しの湯でくつろげる
所在地:東京都大島町泉津字木積場3-5 大島温泉ホテル
泉質:単純温泉
源泉:69度以上
湧出量:毎分188リットル
入浴料:大人800円/小人400円
営業時間:6時~9時/13時~21時
TEL:04992-2-1673


元町浜の湯
海に沈む夕日を眺められる 海沿いの巨大露天風呂
所在地:東京都大島町元町トンチ畑882
泉質:ナトリウム―塩化物温泉
源泉:54.4度
湧出量:毎分305リットル
入浴料:大人400円/子ども240円
営業時間:13:00~19:00
定休日:無休(天候により休業)
TEL:04992-2-1446
*内湯はなく、男女混浴のため水着着用のこと

御神火温泉
ジャクジーや打たせ湯、サウナのほか 25m温泉プールもあり
所在地:東京都大島町元町字仲の原1-8 愛らんどセンター御神火温泉
泉質:ナトリウム・カルシウム―塩化物温泉
源泉:47.9度
湧出量:毎分312リットル
入浴料:大人1000円/子ども600円
営業時間:6:30~21:00(夜行便が到着する日)/9:00~21:00(夜行便が到着しない日)
定休日:第2木・金曜日(2、3、8月は変則)
TEL:04992-2-0909


30cmを超えるいい型のイサキが入れ食い状態に!



大島のもうひとつのお気に入りが「椿花ガーデン・リス村」。3000坪の芝生広場でひとり占めするかのように寝転がり、日本では珍しい数百匹のリスの放し飼い広場で日向ぼっこするリスを観察する。そんな楽しみ方ができる癒しスポット。
椿花ガーデン・リス村
所在地:東京都大島町元町字津倍付41-1
営業時間:9:00~16:30
料金:大人800円/子ども400円
(エサやりには危険防止のため手袋を着用する)
一般の日帰り客が気軽に入れる代表的な温泉は右の3つだ。

「元町浜の湯」は島の北西部の元町に近い長根浜公園内にある。
公共の露天風呂で、海と一体化したような雄大な景色に圧倒される。内湯はなく、男女混浴なので脱衣所で水着に着替えて入る。
ここはとくに日没時の夕日が圧巻だ。空と海が茜色に染まり、絶海の孤島にいるような錯覚にとらわれる。ここが東京都だとは、とても思えない。  

温泉は、なめると塩気を感じる。
カラダの芯から温めてくれるナトリウム―塩化物系で、通りをはさんだ反対側にある御神火(ごじんか)温泉とほぼ同じ泉質になっている。
もっとも、こちらのほうは公共の施設にありがちな循環式の温泉で、塩素臭が強く漂うのが残念だ。  

源泉かけ流しを期待するのであれば、大島温泉ホテルの三原山温泉がいい。
ただし、無味無臭の単純温泉なので、硫黄分など湯力の強い温泉を期待するファンにとっては少し物足りないかもしれない。
救いは露天風呂から見える三原山のみごとな眺望だ。三原山の噴火によって周囲に建物はなく、人工物にさえぎられることなく自然のままの姿を拝むことができる。
「浜の湯」は海、「三原山温泉」はと山というコントラストが、強い印象となっ て心に残る。 

以前、ゴールデンウィークに大島を訪れたときには、海釣りが目的だった。船宿を拠点にしてイサキを狙ったが、あるポイントで入れ食い状態になった。
竿を下ろすだけで針に魚がついてくる。
釣り上げたイサキは仲間の分もまとめてひとまずクーラーボックスに入れた。陸に上がってから分配したら、ひとり30尾以上になった。

さて、これだけの魚をどうやって食べるか。
冷凍や干物にすれば保存はきくが、せっかくの新鮮な魚だから、うまく調理したい。  

大島には「べっこう」と呼ばれる独特の保存方法があった。  

船宿の朝ご飯に出てきた、イサキの刺身の醤油漬け。これが絶品だった。
べっ甲色に染まった白身魚の切り身を、炊きたてのごはんにたっぷりと盛って口のなかにかき込む。
漬けダレには青い島とうがらしが入っていて、ピリッとしたアクセントになっている。
しかも、切り身は醤油の塩分によって締まり、歯ごたえが格段によくなった。それだけでなく、身の旨さと甘さが凝縮したようにも思える。

自宅に帰ってからさっそく何尾分かを漬け込んでみた。しかし、大島で食べた味を再現するのはなかなかむずかしい。
やはり獲れたての新鮮なうちに魚を漬け込まないと、あの歯ごたえは再現できないのかもしれない。また、島とうがらしを使ったその家ならではの独特なタレのレシピがあるのだろう。

大島は、最近の自転車ブームに乗って、ロングライドやキャンプツーリングを楽しむスポットとして人気が高まっている。

大島には一周道路が走り、距離は約50km。高低差が400~500mある。
比較的クルマが少ないので舗装路も走りやすく、海沿いのサンセットパームラインは絶景が続く。
まさに自転車のための楽園なのだ。  

この秋から来年1月26日にかけて、大型客船で行く2泊3日のツーリングフリープランが東海汽船ではじまっている。
http://www.oshima-navi.com/pdf/bike_tour01.pdf  

往復船賃、1泊2食の宿泊代、旅行傷害保険、諸税込みで、東京発着1万1800円という魅力的な価格設定だ。
金曜日出発や一部の出発日は3000円アップとなるが、通常は船の運賃だけで往復1万円近くかかることを考えればかなり安い。  

楽しみ方が変わると、その土地を評価する視点も変わってくる。  

首都圏から近いにもかかわらず、大自然に恵まれた大島は、ひとつのきっかけさえあればもっと住みたくなるような場所に転換していくのではないか。  

そんな期待感をもって注目しているエリアだ。
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アクセスのヒント
竹芝から大島まではジェット船、大型客船ともに1日1便1往復運航している。
東海汽船 http://www.tokaikisen.co.jp/
運賃はジェット船が片道7320円、大型客船2等船室で4500円。熱海―大島間がジェット船で4600円。
調布飛行場からは乗客19名の飛行機が1日3往復便出ており、所要時間25分と時間を考えれば決して高いとはいえない。
新中央航空 http://www.central-air.co.jp/index.html
片道大人9500円、往復割引運賃1万7800円。
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/
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