あわづ温泉は加賀温泉郷のひとつに数えられ、開湯1300年という日本有数の歴史の古さをもつ温泉地だ。大きな日本庭園のある高級旅館を初め、10軒以上の宿が、温泉や海の幸に趣向を凝らした宿泊プランを提案している。 |
北陸の海の幸といえば寒ブリ。マグロに匹敵するほどの脂と旨味がある
北陸は越前ガニでも有名。生身を軽く湯通ししたしゃぶしゃぶもうまい
個人的にはマグロよりも寒ブリのほうがうまいと思っている。 照り焼きやブリしゃぶなど、食べ方にもいろいろこだわりはあるが、いまだかつて、石川で食べた寒ブリの握りを超えるものに出会ったことがないのが残念で仕方がない。 石川・金沢に住む大学の後輩に連れられて行った地元の寿司屋。 白木が美しい一枚板のカウンターに腰を下ろし、目の前にうまい握りが次々とお任せで供される。 地魚のうまい地域の寿司というものは、こんなにも違うものなのか、それとも職人の腕によるものなのか。 あまりの味の違いに、ただ嘆息しながら寿司を頬張っていた。 なかでも驚いたのが寒ブリだ。 コリコリとした触感、脂の香り、甘み、旨味、すべてが、それまで食べたブリとはひと味もふた味も異なっていた。 ブリとはこんなにも奥深い味がするのか…… 結局、刺身のほかに、握りを3度もおかわりするほどだった。 流通網が発達して、いまでは首都圏でも、北陸から直送された寒ブリがスーパーに並ぶようになった。 ブリ好きとしては黙っておられず、冬が近くなると必ず購入するのだが、あの食感、味とは程遠く、毎度毎度、その差に落胆してしまうのだ。 今年は昨年に続き、富山湾の寒ブリは大漁というニュースが流れている。 そもそも寒ブリの定義というものはあるのだろうか。 築地市場では、一般に10kgを超えたものを指すようだが、石川県漁協では2011年から規格基準を7kg以上に引き下げるなど、漁協によってまちまちで、統一した基準はないというのが実情のようだ。 白山を背に温泉街を見下ろすのは白山とあわづ温泉の開祖・泰澄大師
粟津温泉総湯 開湯1300年を迎える北陸地方最古の温泉地 所在地:石川県小松市粟津町35 泉質:ナトリウム―硫酸塩・塩化物泉(弱アルカリ性低張性温泉、芒硝泉) 源泉:40.9度 入浴料:大人400円/小学生130円/幼児50円 営業時間:8時~22時 定休日:毎月8・18・28日(土日祝は変更あり) TEL:0761-65-1120 関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと大きさによって呼び方が変わり、80cm以上になると関東でも関西でもブリと呼ばれるようになる。 出世魚なだけに、元となる大きさをさかのぼって示してくれなければ、その確証は得られない。 かくして、実際に北陸に足を運んでみて、自分の舌で確認するのに勝る方法はない、ということになる。 “本物”には、それほど簡単にはたどり着くことができないのだ。 冬の味覚を求め、足を運んだのはあわづ(粟津)温泉。 加賀温泉郷と呼ばれる4つの温泉地のひとつで、古都金沢からもほど近い。片山津、山代、山中温泉は加賀市、あわづ温泉は小松市にある。 金沢から国道8号線(小松バイパス)を南西に約45分ほどクルマを走らせると、国道の南側、白山の山懐に抱かれた温泉町があわづ温泉だ。 さらに15分ほど行った国道の南側には山代温泉、少し南下して山のなかに入ると山中温泉に至る。反対に、国道の北側にあたる日本海沿いには、柴山潟に面した片山津温泉がある。 あわづ温泉は、かつて「世界一古い宿泊施設」としてギネスブックにも登録されていた湯宿「法師」がある温泉地としても名が知られている。 開湯は、718年(養老2)。1300年の歴史を持つ。 仏教によって国を治める「鎮護国家」の発想のもと、越前の僧泰澄は702年(大宝2)に文武天皇より法師に任ぜられる。 717年(養老元)、泰澄は夢のお告げに導かれ、これまで人が足を踏み入れることができなかった白山(2702m・御前峰)に初めて登拝、開山する。 718年(養老2)、白山大権現が泰澄大師の夢枕に現れ、粟津の地に温泉を掘り衆生の病いをすくうべしという宣託を受ける。そのお告げにしたがい、粟津村にて土地を掘ったところ、湯が湧き出したという話が伝えられている。 湯守を命ぜられたのが泰澄の弟子の雅亮法師。雅亮は泰澄を白山山頂まで案内した樵夫・笹切源五郎の次男・初代善五郎であり、現在まで46代続く湯治宿「法師」の由来となっている。 日帰り入浴は不可だが、地下15mからくみ上げる温泉をいっさい加水、加温しない源泉100%のかけ流し風呂。明治23年創業で館主が代々源泉の管理をして新鮮なお湯を提供してきた
かめたに 飲用にまでこだわる源泉かけ流しの宿 所在地:石川県小松市粟津温泉 泉質:ナトリウム―硫酸塩・塩化物泉(弱アルカリ性低張性温泉、芒硝泉) 源泉:57.2度 TEL:0761-65-1811 大きな日本庭園をもつ高級旅館からホテルチェーン資本の宿までさまざまだが、温泉が浅いところから噴出するために、宿ごとの自家掘り温泉であるのが特徴的だ。 湯は無色透明でやわらかい。口に含むとほんのりと塩気と酸味を感じる。飲用すれば動脈硬化や高血圧、糖尿病、痛風などに効果がある。 どの宿も泉質は大きく変わらないが、浴槽や飲泉方法は宿によって趣向が凝らされ、ゆったりと滞在できるようになっている。 かつて、編集を担当した『温泉遺産』というムック本に掲載させていただいたのは「かめたに」という宿だ。 ここは、御主人の湯守としての温泉に対する思い入れに並々ならぬものがある。加温はおろか水も加えずに、源泉100%の湯を温度調整してそのまま浴槽に注ぎ込み、かけ流しにしている。もちろん、飲用も可能。 温泉通を自認する根強いファンは、ここを定宿とする人も多い。 あわづ温泉には、共同浴場として日帰り入浴のできる「総湯」がある。 2008年8月に新装オープンした。ただし、こちらは循環式で、衛生管理が施されているために残念がるファンも少なくない。 “本物”かどうかを見分けなければならないのは食べ物だけではない。 見た目で判断せず、自分なりの視点で実際に試してみないことには、真価はわからないものだ。 泉質にこだわりたいときもあれば、眺めや雰囲気で十分満足できる温泉もある。 また、越前ガニや寒ブリなど、冬の北陸の温泉には海の幸というプラスアルファもある。 自分好みの宿を見つける楽しみも、温泉旅行の醍醐味であると思う。 |
東京都心からは関越自動車道・上信越自動車道経由で上越JCTで北陸自動車道に入る。約530km。上越市からは北陸自動車道で約220km、名古屋市から名神高速道路・北陸自動車道で約210km、京都市から名神高速道路・北陸自動車道で約220kmと、クルマでほぼ等距離にある。最寄りは北陸自動車道小松IC、小松空港方面から国道360号、国道8号小松バイパスで福井方面へ約25分。
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/もよろしく。
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