鳥取には神話・民話が数多く伝わり、歴史ある寺社もたくさんあります。なかでも、千年前に建てられたと伝わる三徳山三佛寺・投入堂は、断崖絶壁に建つ不思議なお堂です。そして、投入堂の周囲には名湯やグルメの名物もあります。 |
山の上部の断崖絶壁にぽかりと投げ込まれたかたちの投入堂
アップにしてみても、どうやって設置したのかがわかりません。なにしろ、山麓からは相当高い場所にありますから
鳥取県を代表する観光地といえば鳥取砂丘であり、大山(霊峰大山もすばらしいパワースポットです)、ゲゲゲの鬼太郎とその仲間たちが迎えてくれる境港です。また、白壁の街として知られる倉吉も人気を集めています。 倉吉に向かって山間部を走っているときでした。クルマから降りた人たちが、はるか山の上を眺めています。駐車場には望遠鏡も設置されていました。 「なにがあるんだろう、こんな山の中に」 私たちもクルマを止めて車外に出て、山の上を眺めてみました。 そこに、投入堂がありました。 三徳山三佛寺は天台宗修験道の古刹であり、山麓に本堂があります。本堂の裏には山の勾配を利用した数々のお堂が建てられており、いちばん奥にあるのが国宝の投入堂です。 もともと修行の場であり、現在でも座禅体験、投入堂登山参拝などが行われているくらいですから、日本を代表するパワースポットのひとつといえるでしょう。 ちなみに投入堂への道は観光というよりも登山であり修行。スカートやブーツでの入山はふさわしくありませんし、木の根や岩をよじ登る難所や馬の背状に道幅が狭く両側が谷になっている場所もあります。 それにしても“人が造ったと思えない”投入堂に驚愕します。 まさに断崖絶壁に掘った穴に、スポリとお堂を投げ入れた雰囲気なのです。その姿を山麓から眺めるだけでもロング・ドライブの価値はあるでしょう。 |
昭和のレトロ感が漂う三朝温泉。ラドン含有量が高いため、細胞を活性化させるとの報告もあります 旅館大橋の巌窟風呂。三つある湯船はいずれも自噴泉。湯船の底の石のあいだからぶくぶくと湯が湧出している 白壁土蔵群が残る倉吉の街。路地が博物館になっており、レトロな商店をめぐるのが楽しい
鳥取県は首都圏や東北はもちろん、名古屋あたりの人でもそんなに気軽に行ける場所ではありません。 「行こう!」と思わないと行けない場所だからこそ、ロング・ドライブの行先候補なのです。 正直なところ、私が鳥取県に行ったのも旅を仕事にしてずいぶん経ってからでした。それまではなかなか行く機会がありませんでした。 最初の取材は鳥取市内と鳥取砂丘。次は米子、境港と皆生温泉、大山でした。つまり、鳥取の代表的観光地に行ったわけです。 しかし、鳥取全県を旅したときに林業の街・智頭や倉吉などに立ち寄りました。それらは首都圏に暮らす人々にとっては知らない街のひとつですが、大観光地ではなくても見るべきところや、食べるべきものが意外と多い場所です。 とくに三朝温泉、倉吉は投入堂から遠くありません。むしろ、三朝温泉や倉吉をベースにして投入堂を訪ねるほうが得策でしょう。 さて、三朝温泉は“三たび朝を迎えると元気になる”と伝わる名湯です。世界有数のラドン含有量を誇り、呼吸によってラドンが体内に入って新陳代謝を活発化させます。 名旅館も多いのですが、たとえば旅館大橋は自家源泉5カ所をもち、そのうちの3カ所は自噴泉となっています。 内湯「巌窟の湯」にはラジウム泉の下の湯、中の湯とトリウム泉の上の湯があります。すべてが自然噴出で、湯船の底からぶくぶくと湯が湧いています。まさに新鮮な温泉なのです。 |
倉吉パークスクエア内の「鳥取二十世紀梨記念館なしっこ館」。梨のすべてがわかる 町屋 清水庵の「餅しゃぶ膳」はさまざまなお餅の味が楽しめる逸品
地元の人々の努力によって、「倉吉レトロまちかど博物館」が整備されています。とくに大きな博物館があるわけではなく、白壁土蔵群や赤瓦周辺の街並みにある昔ながらの約60軒の商店などが公開されているのです。 呉服店で昭和初期の着物・反物を見て、軽食喫茶店では蓄音機で音楽を楽しむといった塩梅です。 そして、倉吉のもうひとつの楽しみはグルメでしょう。パワースポットめぐりの後の“おいしいもの”は格別です。 鳥取といえば梨! 倉吉にもたくさんの梨畑があります。 倉吉パークスクエア内「鳥取二十世紀梨記念館なしっこ館」は、梨に関連するさまざまな展示を行っています。 もちろん、売店では新鮮な梨、梨を使ったジュースやジャム、ソフトクリームなども販売されています。 さて、とくにおすすめしたいお食事は、町屋 清水庵(まちやせいすいあん)の「餅しゃぶ膳」です。 創業100年以上の伝統を誇る名物のお餅をしゃぶしゃぶで食べるのです。お餅も普通の白いお餅だけではありません。ヨモギ餅、栃餅、ゴマ餅、柚子餅など、それぞれに味が異なり、それがなんともたまりません。お店のレトロな雰囲気もムードたっぷり。 パワースポットをめぐり、名湯につかり、おいしいものを食べる。ロング・ドライブでおでかけするのなら、大山や鳥取砂丘を加えればいいでしょう。 鳥取への旅は魅力的です。 |
●鳥取県観光情報
鳥取県全域をカバーしている情報サイトです。三徳山のページもあります。
http://yokoso.pref.tottori.jp/
●倉吉観光情報
倉吉エリアの観光情報サイトです。
http://www.apionet.or.jp/kankou/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。