リーマンショックから続く世界的不況を受けて、日本の景気もまだまだ回復しません。となると、どうしても“神頼み”したくなるのが心情。神頼みはある意味、日本の文化。全国にはお金を洗うとご利益のあるパワースポットが数多くあります。 |
トンネルを抜け、連続する鳥居をくぐると本宮が現れます
本宮の奥には洞窟があり、清水が湧き出しています。ここで銭を洗います
ここで銭を洗うと何倍にもなって返ってくるという説がある人気のパワースポットです。 その由来は歴史をぐっと遡らなければなりません。平安時代の末期、鎌倉は災害続きで、庶民は貧困にあえいでいました。そこで源頼朝が世の中の救済を祈願したのが始まりなのです。 「この地に湧き出す水で神仏を供養せよ。そうすれば天下泰平の世が訪れる」と夢のお告げを受けた頼朝は、鎌倉の小さな山の清水湧き出る中腹に、神社を建てて宇賀福神を祀りました。 その後、世の混乱が収まったことから伝説の神社となったのです。さらに、北条時頼が宇賀福神社の霊水で銭を洗い、一家繁栄を祈ったのが、今日に続く「銭を洗う」信仰の始まりだと境内の解説板に書いてありました。 たしかに、山に掘られたトンネルを抜けて行く神社は神秘的です。トンネルを抜けると鳥居が続き、その先に小ぢんまりした本宮がありました。 銭を洗う場所は本宮の奥の洞窟の中にあり、そこには鎌倉五名水のひとつである清水が湧き出しています。 この神聖なる清水でお金を洗うのですから、ご利益も期待できそうです。 |
お金をザルに入れて清水で洗います。北条家のころから伝わる方法だとか 「御寶銭」を分けていただきました。火打ち石を打ってから手渡してくれます 「洗ったお金は大事に使いましょう」と貼り紙が。何に使うかが問題ですね
団体客はいないのですが、家族、女性ひとり、そして外国人のグループも目につきました。 世界的な不況のなか、外国の人も「銭洗い」のご利益がほしいのかしら! まずは本宮をお参り。境内の「七福神社」などの3カ所の社をめぐり、その後にロウソクとお線香を分けていただき、その代りに「ザル」をお借りしました。 お線香とロウソクを供え、いよいよ銭洗いです。 隣の人は1万円札を入れてザブザブ洗っていましたが、私は硬貨を入れてザブザブ。丁寧にお金を洗います。「本当に何倍にもなって返ってきてね」と祈りながら……。 ひととおりお金を洗い終わると、貼り紙に気づきました。そこには「洗ったお金は大事に使いましょう」といったことが書かれています。 そういえば、私の友人も銭洗瓣財天に来てお金を洗ったのですが、その貴重なお金は「いつの間にか使ってしまった」と嘆いていました。 それではご利益は薄そうです。でも、洗ったお金をずっととっておくのも難しそう。 有効に使うには…そこで考えました。 結論は洗ったお金で境内にある「銭洗瓣財天 御寶銭」を分けていただくこと。この小判型のお守りを財布の中に入れておくとご利益があるとか。 都合2枚いただきました。禰宜さんが火打ち石を叩いてから手渡してくださるのも、なんだかパワーがみなぎったような気になります。さっそくお財布の中に収めてご利益をお願いしました。 これなら、いつの間にか無くなるという心配もなさそうです。 |
銭洗瓣財天は鎌倉の住宅地のあいだを登ったところにあります。甘味処やおみやげ店もありますが、けっして賑やかではありません 高尾山薬王院の銭洗い場所にあった打出の小槌。「金運」と描かれています
銭洗瓣財天のご利益が評判になったために、関東周辺には境内社として「銭洗瓣財天」を設けている神社がけっこうあるのです。 東京でしたら三鷹市井の頭公園内に「井の頭弁財天」があります。さらに、観光名所の高尾山にも。「高尾山薬王院」の場合は、銭を洗う場所に大きく「金運」と描かれた打出の小槌が掲げてあるくらいですから、はっきりご利益を明記しています。 埼玉県川越市の「熊野神社」境内にもあり、神奈川県にはさすがに多く、鎌倉のほかに藤沢市江の島の「江島神社」、箱根町の「深沢銭洗弁天」が地元の人たちや訪れる観光客の人気を集めています。 さらに愛知県の蟹江町に「銭洗尾張弁財天富吉神社」があります。 そのほかにも銭洗瓣財天を境内に設けている神社があるので、金運アップにお参りしてはいかがでしょうか。 また、「金」の字で調べると鳥取県の「金持神社」が金運パワースポットとして評判になっており、さらに「金運神社」と呼ばれる富士山新屋山神社など、全国にはお金にまつわる神社がたくさんあります。 全国に金運をもたらす神社が点在しているのですから、不況の現在に需要があるだけでなく、その昔から「お金持ち」になるのを願って参拝する人が多かったのがわかります。 ご利益を信じてお参りする。昔からの日本人の風習です。 こんな世の中だからこそ、銭洗瓣財天でお金を洗ってみるのもいいのではありませんか? |
●鎌倉市観光商工課[銭洗瓣財天]
http://guide.city.kamakura.kanagawa.jp/
●高尾山薬王院
http://www.takaosan.or.jp/index.html
●金持神社
http://www.kanemochi-jinja.net/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。