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茨城県のつくばは、昔なら筑波山とその口上がおもしろい「ガマの油売り」で有名だった。しかし、1985年の「科学万博-つくば’85」を開催するころからは「科学の街」へ変貌する。つくばには日本の最先端技術が集まっているのだ。


並木が美しいつくばの街並み。クルマを置いて散歩するのもいい


つくばエキスポセンターは1985年開催の「科学万博‐つくば’85」を記念してできた

常磐道を利用してクルマでのアクセスもよければ、平成17年に開業した「つくばエクスプレス」での便もよい。つくばは、おでかけしやすい街なのだ。

このエリアのシンボルといえば標高877mの筑波山。名物は和紙を切りながら「一枚が二枚、二枚が四枚…」と続ける口上で有名な軟膏「ガマの油」であった。

科学万博が開催された1985年よりもっと前、周囲は畑と雑木林が広がる田園地帯だったのだ。

関東平野北部の長閑な一角は、「筑波研究学園都市」の発想で大きく景観を変える。東京教育大学を母体に筑波大学が1973年に発足し、一躍学園都市として整備されていった。

つくばの街を歩いてみると、新しい街並みだけに、区画がきちんと整備されているのに気付く。ポプラなどの並木道が走り、まるで北欧に来たような錯覚さえ覚える。

雰囲気のある並木道に沿って、小さなカフェやパン屋さんなども点在するが、比較的外壁の長い建物が目立つ。これらがつくばの研究施設だ。

つくばには妙な言葉がある。それは「先を歩く人たちに、博士!と呼びかけると半分の人が振り返る」というものだ。

つくばにある研究機関や企業などは約300カ所。それぞれで最先端の技術が研究されているのだから、つくばに暮らす研究者が多いのもうなずける。

そして、研究施設のなかには見学や体験ができる施設もいくつかある。つくばでの施設訪問は、“未来”を知る楽しい体験なのだ。


JAXA筑波宇宙センターの前にあるのはJAXAが開発したH-II ロケット


宇宙センターなどのさまざまな施設が見学できる


地図と測量の科学館の前に展示された測量機「くにかぜ」

つくばで体験できることは数多くあるが、まずは宇宙へ思いを馳せよう。おすすめの施設は「つくばエキスポセンター」と、「JAXA筑波宇宙センター」だ。

ともに屋外にある大きなロケットに圧倒される。つくばエキスポセンターは万博開催を記念して開設され、最新の科学技術や身近な科学を楽しめる体験施設になっている。外にあるのが高さ50mの純国産ロケット「H-Ⅱ」の実物大模型だ。

圧倒されるのはロケットだけではない。座席を倒して観察するプラネタリウムはドーム径25m以上の超大型。ふるさとの土手に寝転がって、満天の星を眺める気分になる。

プラネタリウムは時期ごとにテーマ性をもって上映されるので、何回来ても飽きることがない。

ぼくが観たのは「オリジナル番組 宇宙大旅行」というタイトルのもので、星と宇宙の大冒険に出発した気分になった。

そのほかにも科学者の仕事の一部がわかる展示などが多く、ぼくの世代であれば「お茶の水博士」になった気分になれる(!?)

さて、「JAXA筑波宇宙センター」の正面にあるのも全長約50m、直径約4m、質量約260tの「H-Ⅱ」ロケット。JAXA(旧宇宙開発事業団)が10年の歳月をかけて開発したものだ。

こちらの施設では宇宙航空開発施設の一部が見学できる。「宇宙飛行士コース」「宇宙ステーションコース」「ロケットコース」に見学コースが分かれ、見学方法、見学時間なども決まっているが、なにしろ宇宙開発の本物! JAXAの仕事、スペースドームやロケットの模型、さらに宇宙飛行士の訓練施設や宇宙ステーション「きぼう」の運用管制室、ロケット音響体験などができる。

宇宙を身近に思うひとときになった。


サイエンス・スクエアつくばにある癒し系のロボット「パロ」


ほかにもさまざまなロボットが展示されている

ぼくは小学校のころより地図を見るのが大好きだった。そんなわけで、たまらないのが国土地理院の「地図と測量の科学館」だ。

多くの方も、教科書で「国土地理院」という言葉は見た経験があるだろう。国土地理院は地理情報の把握から災害時に必要な地理情報まで管轄しているから、教科書に掲載される多くの地図も国土地理院が制作して保有しているものなのだ。

展示館前には測量用航空機「くにかぜ」がある。この飛行機は1960年から83年まで地球約5周半分の距離を測量のために飛んだ。

また、館内エントランスには縮尺10万分の1の3D「日本列島空中散歩マップ」がある。かつて旅した地を辿るのが楽しい。

「サイエンス・スクエアつくば」は日本の産業の最先端がわかる施設だ。さまざまな展示があるが、ぼくが興味深く観たのはロボットに関する展示だった(すでに、お茶の水博士の気分だから…)。

働くロボット「ヒューマノイド・ロボット」、癒しのロボット「メンタルコミットロボット・パロ」から「恐竜ロボット・ティラノサウルス」まで、最先端の科学が生んだロボットたちが出迎えてくれる。

最先端の宇宙開発と科学を堪能すると、なぜか緑が恋しくなった。そこで、並木道を通って最後は「つくば植物園(筑波実験植物園)」に。

この植物園もただものではない。国立科学博物館が植物の分類や系統学の調査のために管理している植物園なのだ。

中部日本の植生を区分して再現した区画など、日本本来の「森」が見られるのも印象的だ。

つくばでの1日は、想像をはるかに超えた充実したものになるだろう。


「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●つくばエキスポセンター
http://www.expocenter.or.jp/
●JAXA筑波宇宙センター
http://www.jaxa.jp/visit/tsukuba/tour_j.html
●地図と測量の科学館
http://www.gsi.go.jp/MUSEUM/
●サイエンス・スクエア つくば
http://www.aist.go.jp/aist_j/sst/
●筑波実験植物園
http://www.tbg.kahaku.go.jp/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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