江戸時代に皆中稲荷神社にお参りしてから射撃訓練を試みたところ百発百中! その噂は瞬く間に広がって、神社の霊符を求める人が殺到したという伝説が残るだけに、今では「宝くじ」が当たるパワースポットとして人気を博しています。
ほほー、なるほど。
何枚も重なってぶら下がった「開運的中絵馬」には、お参りした人たちの想いが満ちています。
「今度の宝くじ、頼みます!」
「BIGが当たりますように!!」
「宝くじを当てて、それを資金に事業を始めたい」
どの言葉もすごく現実的。宝くじやtotoの当選を願う言葉が次々と並んでいます。
場所は東京・新宿区百人町。新大久保駅と大久保駅に挟まれた、韓国料理の看板が目立つ“雑踏”とも呼べる商店街の一角に皆中稲荷神社(かいちゅういなりじんじゃ)があります。
新大久保駅から大久保方向に向かって1分弱、交番の横に鳥居が建ち、神社の入り口になっています。
取材した日は「5億5000万円」宝くじのテレビCMがすでに流され、ニュースではワールドカップtotoが発売されると発表されたころ。
境内は広くありません。敷地の横の路地は、小さなスナックなどが並ぶまさに新宿裏町の光景。
しかし、訪れる人が後を絶ちません。ご年配の夫婦、親子連れ、若いカップルなど、さまざまな人たちが楽しげにやってきます。
「本当に当たるかしら…」、「当たったらすごいね」などと口にする人々。
手水舎で清め、御賽銭をあげてお祈りをし…。
そのあとは開運的中絵馬を手に入れて想いを書いたり、弓矢をモチーフにした「的中御守」や「心願成就」守りを買って…。
誰もがご利益を期待して参拝しているのです。
ちなみに今回のプレゼントは「的中御守」、みなさんの代わりにいただいてきました!
皆中稲荷神社は天文2年(1533年)に稲荷之大神を奉斎することで、この地の総社として建立されました。
それ以来、新宿の発展と共に重要な地位を与えられ、由緒ある神社として名を残しています。
とくに、その名を広めたのは徳川幕府が組織した「鉄砲組百人隊」によってでしょう。
寛永年間、徳川幕府は鉄砲組百人隊を新宿に駐屯させました。現在の百人町の名の由来も、百人隊が駐屯したためです。
天下を治める徳川幕府の鉄砲隊、隊員たちは鉄砲の手腕の向上に励んでいました。
しかし、最初のうちは結果が思うようにならず、悶々とした日々を過ごしていたそうです。
そんなとき、鉄砲組与力の夢に稲荷之大神が現れ、霊符を示しました。
不可解に思いながらも、与力は皆中稲荷神社を訪れてお参りを済ませてから射撃を試みると、なんと百発百中!
その姿を見せつけられた旗本の士が競って霊符を受けるようになりました。
それからの鉄砲隊は以前と比べられないくらいの優れた部隊に変身したそうです。誰もがみごとに的に的中させる技量にアップ。神社のご利益は抜群でした。
この話はやがて近隣の人々にも広く伝わりました。射撃の腕だけでなく、さまざまな願いが的中するように…と、お参りする人が殺到したのです。
いつしか、皆中稲荷神社は「皆中(みなあたる)の神社」と称えられ、親しまれる存在になりました。
境内に足を踏み入れたとき、絵馬に書かれた言葉を少々おかしく思った私でしたが、結局、御賽銭をあげてお祈りをし、絵馬に宝くじの当選を記載し、おみくじを引き(大吉でした!)、新大久保で最初に見つけた宝くじ売り場で5億5000万円くじを購入したのでした。
さてさて、どんな結果になりますか…。
新大久保から東新宿にかけての一帯は、ご存じのコリアンタウンです。
韓流スターのDVDにブロマイドや関連グッズ、韓国で話題の美容グッズを売るお店、韓国料理店が軒を並べています。
皆中稲荷神社へ参拝した後は、韓国異国情緒を存分に楽しみたいものです。
私の散策は皆中稲荷神社から新大久保駅を通り越し、宝くじ販売店でくじを購入。その後は新大久保周辺のコリアンタウンをめぐり、東新宿へ移動しました。
「これ、すごい。きれいになるよ」と、声をかけられて振り向けば、顔の半分にパックを貼ったおねえさん。美容パックの実演販売ですが、その方法がいかにも韓国流。
これまでに取材でソウルを数回訪れています。明洞(ミョンドン)はソウルの繁華街のひとつで、化粧品店や洋品店、ブランド店、飲食店が多く、熱気のある街並みです。
化粧品店ではさまざまな販売方法を展開していますが(ikkoさん看板が多いですよね)、それを思い出させてくれました。
お参り、お店めぐりをしたら、締めくくりはお食事です。
周辺の飲食店では食べ放題プランやランチプランを実施しているところが少なくありません。また、クーポンを発行しているお店もあります。
私はランチプランがお得なお店で、サムギョプサルにしました。
斜めになった鉄板の上でジュワっと焼けていく大きな豚のバラ肉。一緒に焼くニンニクやキムチの香ばしさ。なんとも食欲をそそる香りです。
店員さんがハサミで豚肉を切り分けてくれてヨーイドン。
いっせいにサンチュに焼けたお肉とニンニクやキムチ、ネギを包んでいただきます。
なんともうれしい参拝のご褒美になりました。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。