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浅草、鎌倉、京都、道後温泉など、歴史ある街並みを人力車でめぐる、のんびり散策が人気を集めています。近年では外国人観光客も注目する人力車。初詣でや新春には人力車が走る街並みへおでかけしたいものです。

鎌倉の街で見かけた人力車のある風景


京都・嵐山の路地で人力車がすれ違う


ぼくがアウトドア雑誌の編集長を務めていたときのこと。マスコミ志望学生懇親会で出会ったひとりの女子大生が、編集部での仕事を希望した。

身体が細く、“アウトドア”といった雰囲気はちっとも醸し出していない。「編集部に入れても、続かないだろう」と、ぼくは判断した。

かかってくる電話で、やんわりと断りを入れるのだが、彼女はなかなかあきらめない。熱意を語ってくる。

初めて会ってから、3カ月が経ったころ、後から聞いたところによると、「これが最後!」と決意した彼女からの電話がかかってきた。

その電話で、編集部付で彼女に働いてもらうのをぼくは決意する。なにが決め手になったかは、未だにわからない。

話す内容もそれまでのものと、そんなに違いはなかった。

それでも、「4月から編集部に来てください」と、ぼくは言ってしまったのだ。

大学を卒業して編集部に来た彼女。新人の役割である読者ページと情報ページの担当を任せた。先輩編集部員のアシスタントも兼務させる。

彼女は無難に担当をこなし、月に一度開催するキャンプイベントの会場でも読者たちの人気者になっていった。

半年以上経ったころだろうか。まったく新しい発想のハワイガイドブックを編集することになった。しかし、先輩部員たちは月刊誌の担当に忙しい。

そこで、ぼくが別冊全体を担当し、彼女にアシスタントを命じた。

航空会社との交渉、海外のお店などのアポ取りを含む、彼女にとって初体験の仕事ばかり。

残業中に彼女が涙を流していたのも1回きりではない。それでも、翌日になると、彼女は仕事に精を出し、1テーマずつ確実にこなしていった。 細身のボディと、くしゃっと笑う表情の内側に、鍛えられた心の強さを彼女は持っていたのだ。

「編集部に来たときの根性といい、仕事ぶりといい、どこからその強さは来るの?」と、ぼくは彼女に尋ねた。

「大学のときに、人力車愛好会にいましたから。気合は負けません」と彼女は言った。

初詣で客でにぎわう京都。人力車の似合う街


今年の初詣でや新春は人力車のある街へ


西新宿と中野新橋駅の中間に位置する「川島商店街」にあるカウンターだけのお店「T-Label(ティーラベル)」は、お隣がゲストハウスだけに、1日東京観光を終えた外国人旅行客が生ビールやワイン、日本酒を軽く飲みに来る店だ。

そこで、しばしばアメリカ人やオーストラリア人、ヨーロッパからやってきた観光客に会う。

彼らは「マリカー(あのゲームのようなカートです)」で東京を疾走し、築地でマグロを食べ、新宿のロボットカフェに驚く。そして、浅草を訪れて、人力車によって散策をしているのである。

彼らのクチコミや、SNSは広く拡散されるから、続いてやって来る観光客たちも同様の体験を東京で行うことになる。

マリカーといった最新の流行もいいけれど、やはり“和”が感じられる人力車の人気は根強い。

人力車は明治から大正時代にかけて、徒歩よりも速く、カゴよりも快適な移動手段として重宝された、人力によって動く乗り物である。

考案したのは日本人という説が強く、それゆえに古都に似合うのだろう。

ついでに、楽天市場で調べてみた。すると、人力車が売られているのがわかった。明治40年に製造された人力車を、修復して発売しているのである。ひとり乗り人力車でお値段は150万円。

ちなみに道路交通法では人力車は軽車両扱いとなる。自転車とは異なるために、自転車道や自転車のみの通行が許可された道には入れない。

それにしても、楽天市場にお店を開設した人力車の工房。果たして年間何台くらい売れるのだろうか。

編集部の彼女は大学イベントなどでも人力車を引いていたというから、案外、売れているのかもしれない。


俥夫の愉快なガイドで街をめぐる


浅草も人力車でまわりたい観光地


新春ならではのグルメを楽しみたい


Webで検索してみると、北海道・小樽、東京・浅草、埼玉・川越、千葉・成田、神奈川・横浜中華街と鎌倉、静岡・伊東、岐阜・高山と郡上八幡、京都・嵐山、奈良・奈良公園、愛媛・道後温泉、福岡・門司港、大分・湯布院などが「人力車が走る街並み」として浮かびあがってきた。

どこもレトロ感のある有名観光地である。

浅草や成田山、鎌倉、郡上八幡、京都、奈良などは、新春に訪れたい初詣でに適した場所でもある。

そこで提案。新春には和服で、これらの土地にでかけてみたらいかがだろうか。

新鮮な気持ちで神社やお寺に参拝し、おみくじを引き、その後は人力車で街並みを散策する。

これぞ、日本の新春という演出をしてみるのである。

「走行距離を考えれば、人力車は相当高い乗り物」と、したり顔で語った知人がいる。確かに、移動距離と料金の関係をみれば、飛行機や新幹線、公共の交通機関に比べて分が悪いのは当たり前だ。

人力車サイトで料金を調べれば、30分でひとり4500円、1時間8000円などという数字が普通に現れる。

しかし、日本の人力車には“人力車で移動する”以外の楽しみもある。それは「俥夫(しゃふ)」の存在である。

土地のガイド、グルメ、とっておきの情報など、俥夫のクチコミは信頼性が高い。俥夫に教えてもらったお店に寄って、おいしいものをいただくというのは格別だろう。

話は一気に飛ぶが、ツェルマットは、名峰マッターホルンを望むスイスの一流リゾートだ。街中はガソリン車の立ち入り禁止。観光客は馬車や電気自動車で移動する。

ツェルマットの空気を汚さないためだ。ガソリン車禁止のリゾートは、スイス国内に何か所もあり、スイスの山岳リゾートの美しさを世界へアピールする要素にもなっている。

同様に、人力車は空気をいっさい汚さない。これから、観光地でますます盛んになっていくと予測するのはぼくだけだろうか?

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筆者とスタッフの合計3人が全国の「ぶくぶく自噴泉」をめぐり、女将や湯守の話を聞き、写真を撮影し、実際に入浴してみての感想を執筆した書籍。温泉好き必読の改訂新版
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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