日光の華厳滝、和歌山県那智勝浦の那智滝と共に、「日本三大名瀑」に数えられるのが茨城県大子町に位置する袋田(ふくろだ)の滝です。この滝を久しぶりに訪ねたら、いつのまにか恋愛に即効性があるパワースポットになっていました。
観瀑台に続く長いトンネル
ありました!「恋愛即効」の絵馬
トンネルの合間には景観とアートを楽しむスポットも
日本三大名瀑に数えられる袋田の滝は、「日本の滝百選の人気投票」においても第1位に輝くという名実ともに日本を代表する滝です。
高さは約120m、幅は73m、大自然の中にみごとな景観を誇ります。
「四度(よど)の滝」と呼ばれるように、大きな岩壁を四段に落下する迫力が人気を呼んでいます。
新緑の春、深い緑に包まれる夏、紅葉の秋に加え、厳冬期には滝全体が真っ白に凍結して神秘的な姿を見せます。凍結した滝はアイスクライマーたちを迎えます。
かつて、西行(さいぎょう)法師(1118年~1190年)が訪れた時、「この滝は四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえない」と絶賛したほどです。
私が以前訪れたのは10年以上も前でした。トンネルを歩いて滝のすぐ前に設置された観瀑台まで行ったのを覚えています。
袋田の滝を再び訪ねました。「恋愛のパワースポットとして人気になっている」という噂を耳にしたからです。
恋愛成就のパワースポットで、しかも即効性があるというのですから、行ってみないわけにはいきません(笑)。
ただし、少しばかりの不安もありました。
全国の名所や景観のいい土地を取材で訪ねてみると、いつのまにか「恋人たちの聖地」やパワースポットになっているケースが多いからです。
前回のコラムで取り上げた水族館の神社も、「ペンギンは一生涯同じ伴侶をもち、決してパートナーを変えない」という説をもとに、恋愛と夫婦愛のパワースポットになっていました。
それはそれで微笑ましくもあるのですが、場所によっては“とってつけた感”も否めません。
袋田の滝がどんなパワースポットになったのか。それを探るためにでかけて来ました。
観瀑台に続くトンネルの入り口で入場券を購入、長さ300m弱のトンネルを滝に向かいます。すると、途中でアート作品が自然とマッチしたスペースや、恋愛成就の絵馬がかかったスポットがありました。
トンネルの奥にある四度瀧不動尊の拝殿
第2観瀑台から見る袋田の滝
絵馬がかけてあったのは、観瀑台へ続くトンネルのちょうど真ん中ぐらいでしょうか。
「恋愛成就の大作戦 絵馬に願いを 恋のぼり 袋田の滝」と、看板に描かれています。しかも、サブタイトルには「ようこそ恋愛の即効パワースポット袋田の滝へ 恋人の聖地」とあります。
これは、相当気合いが入っています。
しかも、よく見ると「大子町役場 恋結び課(観光商工課)」と…。
うーーーむ。ついに地方行政の観光商工課は恋結び課まで作ってしまうのですね。
「やっちゃった感」半端ないのですが、そこには多数の絵馬がかかっていました。
絵馬に願いを描いてかけた人は、それぞれが真剣な思いを寄せたはず。それはそれで素敵なことです。現代ならではのパワースポットであるのだと納得したのでした。
トンネルをさらに進めば、やがて右手に第1観瀑台が現れます。観瀑台のすぐ前は滝の三段目。黒い岩の前を水が何筋にも流れ、まるで水墨画のように見えます。
トンネルの正面は「四度瀧不動尊」の拝殿です。本堂はトンネルを入る前、おみやげ店が並ぶ通り沿いにあります。ご本尊は不動明王。煩悩を断ち、正しい道へと導いてくれる明王様です。
拝殿の左手にも先がありました。10年以上前に訪ねた時は、なかった施設です。
それは、2008年に完成した第2観瀑台に続くエレベーターの入り口でした。
エレベーターに乗って上に行けば、第1観瀑台より約50m高い第2観瀑台に出ます。ここからは最上段も眺められ、滝全体を観賞できます。
観瀑台の下の斜面には四度瀧不動尊の奥之院も見られました。
【おまけの素人動画 袋田の滝】
滝の入り口付近にある四度瀧不動尊
舟納豆はもはやごちそうです
10年を超える歳月で袋田の滝は変わりました。もちろん、滝は変わりませんが、第2観瀑台の完成によって、違う角度から滝が眺められるようになりました。
第1観瀑台からの滝が水墨画の魅力だとしたら、第2観瀑台からの滝は色鮮やかな水彩画です。滝の左右の森の緑が鮮やかで、青空を反射した水はややブルーに見えます。
そして、いつのまにか恋愛成就のパワースポットになっていました。こういう楽しい変化も、進化を続ける観光地の魅力なのでしょう。
実際に、10年以上前に訪れた時は観光バスに揺られてやってきた中高年の団体が大半でしたが、今回は若いカップルや、海外からの女性グループが目立ちました。
滝見物の後は、周囲のみやげ店や道の駅などに立ち寄るのがおすすめです。
奥久慈は空気がおいしい自然豊かな土地です。食の名物も目白押し。
たとえば、“奥久慈しゃも”を使った加工食品、お刺身で食べるのがもってこいのこんにゃく。さらに、茨城だけに納豆製品も数多く販売されています。
「舟納豆」は“ごちそう納豆”とも呼ばれている名物納豆です。「おいしくなければ納豆ではない。安全・安心のブランドを地域力を活かして生産していく」との主旨で製造されています。
日帰りも簡単な北茨城のパワースポットである名瀑と、名産品探しのおでかけはいかがでしょうか。
【おでかけのヒント】
●「観光いばらき」袋田の滝
http://www.ibarakiguide.jp/db-kanko/fukuroda_falls.html
●舟納豆
https://www.funanatto.co.jp/
●クルマでおでかけ
常磐道那珂ICから国道118号を久慈川に沿って北上、「袋田の滝入口」を右折、約50分。滝の周囲には駐車場がある。みやげ店で何かを購入すれば駐車料金無料という店舗が便利。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。