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平成30年は明治維新150年に当たります。幕末、新しい時代の夜明けのために躍動したのが薩摩(鹿児島)、長州(山口)、土佐(高知)の三藩であり、舞台は主に京都でした。明治維新150年の今年、所縁の地を訪ねてみませんか?

パリの教会の内部


右より中岡慎太郎、坂本龍馬、武市半平太像(高知駅前)


これまでにずいぶん旅をした。目的地は国内であったり、海外であったり…。

旅に出る前に、本を読むのがいつしか習慣になった。小説が多いので、多分に作家の創作要素が含まれる。それでも、それらの小説はよりいっそう旅への高揚感を高めてくれるのだった。

中国・シルクロードの敦煌に旅する前に読んだのは、井上靖が1960年に毎日芸術賞を受賞した『敦煌』である。実際に1900年に敦煌の莫高窟で「敦煌文書」が発見されたのを題材にした物語だ。それを読んでから敦煌に旅し、実際に仏画が描かれた数多くの巨大な莫高窟と、敦煌文書が発見されたあまり目立たない小さな第17窟を目の当たりにしたときは、それなりの感慨があった。

スキー雑誌の編集長だったころ、フランスのパリに数回出かけた。パリをベースにシャモニー、アルベールビルなどの雄大なスキー場に行くためだ。

スキー場の行き帰りにパリに滞在するから、ルーブルやオルセーなどの美術館、ノートルダム大聖堂にも足を運んだ。そのときは、サン・シュルピス教会の名前さえ知らなかったから、当然訪れることはなかった。

スキー雑誌の編集長を辞めてから数年後、再びパリを訪れる機会を得た。

旅の前に読んだ小説は映画でも有名になった2003年に発行されたダン・ブラウンの著作『ダ・ヴィンチ・コード』である。

僕はこの小説を読んで初めてサン・シュルピス教会に興味を持った。教会内に精巧に作られた日時計があり、真鍮製のラインは子午線を表している。

小説のおかげで、また一つ旅が楽しくなった瞬間だった。

場所を日本に移そう。今年は明治維新150年に当たる。薩摩藩と長州藩が手を結んだ1866年の薩長同盟が契機になり、それは翌年の大政奉還に繋がる。

これらを含む幕末の歴史を僕は学校では学ばなかった。年号の暗記に追われる歴史の授業が大嫌いだったのだ。

日本の歴史を教えてくれたのは司馬遼太郎だ。もちろん、作者の創作が含まれているのは百も承知。それでも、日本の歴史の流れを知るには最高の教科書だった。

『竜馬が行く』で坂本龍馬を知り、『燃えよ剣』で土方歳三と新撰組を知り、『最後の将軍』で徳川幕府の末期を知り、『翔ぶが如く』で西郷隆盛を学んだのである。

多くの偉人を輩出した土佐藩(高知城)


陸援隊を組織した中岡慎太郎の生家


高知市内の観光案内所をのぞくと、『志国高知 幕末維新博』、『幕末維新の土佐 人物紹介』というタイトル文字が印刷されたパンフレットが並び、明治維新150年であるのを感じさせた。

これが、なかなかよくできたパンフレットなのだ。

前者は高知県一帯で開催中の「幕末維新博」についての全容がわかる。4月21日にグランドオープンした「高知県立坂本龍馬記念館」や、「高知県立高知城歴史博物館」について詳しく紹介され、そのほか県内の史跡・名所が満載されている。

明治維新にはあまり関わりのない観光スポットの掲載もあるが、坂本龍馬や陸援隊隊長・中岡慎太郎、藩主・山内容堂、三菱グループの基礎を築いた岩崎彌太郎、自由民権運動を率いた板垣退助、アメリカに渡った日本人として知られるジョン万次郎ら、輩出した人物の多さに驚かされる。そして、彼らにゆかりのある史跡も数多く現存するのである。

掲載されている立ち寄りスポットの中には、古い街並みをガイドとともに歩いて体感するイベントもあれば、アクティビティを体験できる施設もある。

明治維新150年によって、改めて歴史を振り返るのと同時に、高知県内のさまざまな体験ができるチャンスでもあるのだ。

ところで…。かつて、「高知県は脱藩志士たちをどこまで売りものにするのだろう」と、笑ってしまったことを鮮明に覚えている。

高知県の東側に位置する田野町に「二十三士温泉」という宿泊施設もある温泉施設が完成、僕は招待された。

施設のすぐ前に二十三士公園がある。清岡道之助を首領とする二十三士は藩庁へ「藩政改革・攘夷・瑞山の釈放」の嘆願書を差し出したが、藩より反乱を企てる不逞の徒として阿波で捕らわれて処刑される。その場所が二十三士公園のある河原だ。

志士たちが処刑された場所に隣接する温泉の名前が「二十三士温泉」。少々怖いネーミングである。

だが、この温泉はやがて休業。2年の歳月を経て2015年に「たのたの温泉」となり、日帰り温泉として復活する。ネーミングはこちらのほうが好ましいと思うのは僕だけだろうか?

西郷隆盛の像は鹿児島や東京・上野にある


萩の松下村塾は世界遺産の構成資産の一つ


京都・伏見に残る旅籠・寺田屋。内部の見学も可能だ


文書を保存する環境がそれほど整っていなかった江戸時代以前と比較すれば、幕末は多くの文書が残っているし、写真技術も日本に入ってきていたから、時代を振り返るのは容易だ。

もちろん、高度成長期などを背景に、その時と同じ状態で保存されている史跡は少ないし、もはやビルとなって石碑しか残っていない場合も多くある。

それでも、高知や鹿児島、山口(とくに萩)へのおでかけは、現代日本の背景を知る壮大なスケールになる。

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産には「旧集成館・反射炉跡」や「三菱長崎造船所」に関わるジャイアント・カンチレバークレーンなどのいくつかの施設が入っている。また、「萩反射炉」「松下村塾」なども構成資産の一つだ。

明治維新後に日本の産業は著しい発展を見せるのだが、その原点は高知、鹿児島、山口にあると言っていい。

たとえば、三菱グループの基盤を築いたのは土佐出身の岩崎彌太郎であるのは前述したが、その生家は高知県安芸市に今も修復保存されている。彼の祖先は安芸国の家臣だったようだが、山内氏が土佐に入国後は開墾に従事し、農業を営んでいる。建坪30坪の藁葺きの平屋はそれほど大きくない。

坂本龍馬と共に、1867年に京都の近江屋で暗殺された薩長同盟締結の立役者のひとり、陸援隊隊長の中岡慎太郎は高知県東部北川村の出身である。今や高知県の名産となった「ゆず」の栽培や林業に力を入れ、村の発展に力を注いだ庄屋に生まれている。

中岡慎太郎の生家は今も残り、隣接して設置された中岡慎太郎館では慎太郎と彼と交流のあった志士たちの資料が保存されている。

鹿児島も同様である。今年はNHK大河ドラマ『西郷どん』が放送中。歴史の舞台になったところをめぐるツアーなどに加え、ドラマとコラボレーションした施設も特別に公開されている。

さらに、鹿児島には島津斉彬が藩主に就任して「富国強兵」を目指して建造させた反射炉や造船事業の中心となった集成館がある。

僕も鹿児島をさっそく訪ね、桜島を望む集成館を見学。西郷隆盛がつかった温泉に入り、薩摩ガラスの「吹きガラス体験」に挑戦してきた。

萩では松下村塾などが見学できる。

京都は近代化によって神社仏閣は残るものの、近江屋などの宿のほとんどは姿を消した。しかし、島津久光が過激派を始末した寺田屋騒動の舞台となった寺田屋は今も残る。

ちなみに、お龍(後の龍馬の伴侶)の機転によって逃げ切ったものの、坂本龍馬が伏見奉行の捕り方に襲われて負傷を負うのも寺田屋である。

明治維新150年に歴史を体験する旅に出る。これもまた日本人ならではの贅沢だろう。

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●コラムに関連のあるサイト

志国高知 幕末維新博
http://bakumatsu-ishinhaku.com/

鹿児島県観光サイト かごしまの旅
http://www.kagoshima-kankou.com/

ぶらり萩あるき 萩市観光協会公式サイト
http://www.hagishi.com/

京都観光Navi オフィシャルサイト
http://kanko.city.kyoto.lg.jp/
< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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