1. Smart Accessトップ
  2. おでかけマガジン(+バックナンバー)
  3. 松尾芭蕉が訪ねたパワー溢れる山上の寺へ【山形県・宝珠山 立石寺】
「Smart Access」おでかけマガジン 毎月2回、「Smart Access」会員のみなさまへ、旬のドライブ&スポット情報をお届けします。
トップページへ戻る


山形から仙台方面に向かう山間に立石寺があります。860年に清和天皇の勅願によって慈覚大師が開いた天台宗の山です。本坊、山門から大仏殿、五大堂などへと続く上り斜面はかなりの急斜面。山全体がパワーに溢れる山寺です。

五大堂からの景観


上部の五大堂と開山堂


ブナ材でできた根本中堂


この連載のために、これまでにずいぶん坂を上ってきました。日本には山岳宗教という歴史的背景もありますし、修行の場として開かれた山があるので、お参りに際して山を登るケースが多くありました。



強烈な石段が忘れられないのは、香川県の金刀比羅宮です。表参道から御本宮までの石段の数は785段。御本宮の前から見た瀬戸内海は忘れられません。
【バックナンバー】
http://www.smart-acs.com/magazine/12090101/experience001.php



同じように、上部から見た東京湾と三浦半島の景色がみごとだったのは、千葉県の房総半島鋸山日本寺でした。石切場跡である「地獄のぞき」のスリルも印象的です。
【バックナンバー】
http://www.smart-acs.com/magazine/17040101/experience001.php



「これ、どうやって建てたのだろう?」と感心してしまったのは、鳥取県の投入堂です。千年も前に、はるか上部の祠に堂を建てたのですから、とても驚かされました。
【バックナンバー】
http://www.smart-acs.com/magazine/12060101/experience001.php



そして、今回取り上げるのが山形県の宝珠山立石寺です。創建は860年。登山口から上ると、まずは重要文化財の根本中堂に出ます。1356年に初代山形城主・斯波兼頼が再建したもので、ブナ材の建築物としては現存する日本最古のものと伝わっています。
根本中堂の横には日枝神社、宝物館、念仏堂、鐘楼、山門、そして立石寺本坊などがありますが、これらはいうなれば山麓部。その上の中腹、上部にもさまざまな建造物や塚が建っています。
ちなみに奥之院までの所要時間は約50分。
まさに、ハイキングともいえる参拝になります。

境内にある松尾芭蕉像


セミの声響く参拝道


「閑さや岩にしみ入る蝉の声」
1689年に奥の細道を行き、山寺を7月13日に訪ねた松尾芭蕉の句です。
「ああ、この句なら知っている」と言う人が多い、芭蕉が残した多くの句のなかでも人気の句ですが、これは山寺の深い緑に包まれた参道において生まれたものです。



行楽シーズンの休日ともなると、参拝者も多く参道や山道もそれなりに賑わっていますが、私が訪ねたのは初夏の平日でした。
全日本の大会で2連勝を飾った山形県出身の名スキーヤーに案内してもらったのです。



その日は東根でサクランボ狩りに興じ、それから山寺を訪れました。
山門から上部へ向かって歩き出したときです。
「ああ、やっぱり感じる…」と、名スキーヤーが言いました。
なんでも、小さい頃から時々山寺を訪れていたそうなのですが、来るたびに全身に小さな震えを感じるらしいのです。
「ここのパワーはすごいんですよ。それを全身に受けてしまいます。ここには底知れぬ力があります」と、彼が続けました。
全日本の大会で2連覇を成し遂げ、スキーシーズンを終えた直後の参拝でした。長身で、筋肉も隆々。そんな彼が山寺では萎縮してしまっているように見えました。
「でも、ここに参拝するとその後に力が出るんですよ」



山門から姥堂へ。姥堂の本尊は奪衣婆の石像です。ここから下は地獄、ここから上が極楽という浄土口です。
さらに上がって仁王門、僧が修行に励んだ山内支院などを経て奥之院、大仏殿。
大きな岩の上に開山堂と五大堂があります。
開山堂は慈覚大師の小さなお堂で、写経を納める山内でもっとも古い建物です。
五大堂は五大明王を祀っていますが、山寺唯一の展望台でもあります。ここから見下ろせば、JR仙山線の山寺駅や、周囲の小さな街並みが見下ろせます。

6月に訪れたならサクランボ狩りを


秋はラ・フランス狩りが楽しめます


玉こんにゃくは山形名物です!


五大堂で雄大な山村風景を堪能した後は、山を下って姥堂を過ぎ、地獄の世界に戻ります。



山形の場合はこの“地獄”が非常に魅力的なのです。
私たちが参拝したのはサクランボの季節だったので、サクランボ狩りを楽しみました。とくに、東根や将棋のコマの製造で知られる天童付近にはサクランボ農家が数多く点在しています。
私たちが訪れたサクランボ農家は、佐藤錦、紅秀峰、ナポレオンなどの複数の種類を育てていて、食べ比べもできました。



JR仙山線の山寺駅の周囲にも多くのお店があります。名物は“玉こんにゃく”とそば。
玉こんにゃくは蔵王をはじめ山形県内の観光地でも見かけます。茶色に染みた丸形のこんにゃくが串に刺さっており、1串100円前後で売られています。参拝後は汗をかいていますが、大きな鍋で煮られている玉こんにゃくを見ると、「ひとつくださーい」と、つい声をかけてしまいがちです。



そばも山形の名物です。“山形そば街道”“そばの郷”などが人気です。やや太めで風味の強いそばを求めに各地から観光客がやってきます。
そばが収穫される秋は、まさにそばの季節。山形各地でもそば関連のイベントが開催されます。



そばに続くように、10月中旬以降はラ・フランスの季節になります。フルーツ狩りはたとえばイチゴなどは全国各地で行われていますが、ラ・フランス狩りとなるとそれほど多くはありません。
フルーツ王国の山形ならではといえるでしょう。



パワーに満ちあふれた山寺を訪ね、各種フルーツやそばといった自然の恵みを堪能する。
山形へのおでかけは、魅力的なドライブになるでしょう。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●山形自動車道山形北ICより約20分。
●山寺観光協会
https://www.yamaderakankou.com/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
  • スポット特集
  • B級グルメ特集
  • オートキャンプ特集
  • レジャー&リゾート特集
  • ロケ地特集
  • 絶景特集
  • 子供といっしょにお出かけ特集
  • 特産品・名産品特集
  • 温泉・スパ特集