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島国日本を効率よく結んでいるのがフェリー航路だ。北海道や九州などへの旅に、首都圏近くから長距離フェリーを使った人もいるだろう。また、近距離フェリーは瀬戸内海をはじめ数多く出航している。フェリーの旅は普段のドライブ以上にわくわくするものなのだ。

かつて温泉達人・野口悦男さんと桜島の温泉へフェリーで出かけた


すれ違うフェリーとその間を飛ぶ海鳥


フェリーに順番に乗り込む乗用車(東京湾フェリー)
初めてフェリーに搭乗したのは大学生の時だった。

夏の水泳指導員、冬のスキー教師、年間通じて家庭教師のバイトをして貯めたお金で三菱ランサー(2009年で製造終了)を手に入れた僕は、友人をさっそく誘って夏休み北海道一周の旅に出た。

行きは陸路、まだ東北自動車道がない時代だ。

福島で1泊して常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)で遊び、2泊目は岩手の山奥。3泊目は青森のむつ市内に泊まり、翌日、大間からフェリーで函館へ渡った。

大間は今では上質マグロの産地として知られるが、当時は本州の果ての感があり、飛んでいるカモメも寂しそうに見えた。

恋をすれば南の海に向かい、失恋すると北の海に向かう…、演歌の世界そのままの風情を失恋以前に恋すらしていなかった大学2年生の男3人は感じていたのだった。

キタキツネを跳ね飛ばしそうになったランサーは、摩周湖だ、阿寒湖だ、知床だと北海道を一周し、帰路は苫小牧港からフェリーとなった。

当時は茨城県の大洗ではなく、苫小牧と東京湾港を結ぶフェリーがあった。

しかし、日が最悪だった。台風の影響を受けて海は荒れていた。

北海道で気分爽快だった僕らは船の横揺れでどん底に落とされた。横たわっているのが精一杯、「もうフェリーになんか乗らない」と誓った3人だった。

東京湾フェリーの規模でも案外多くのクルマが入る。料金はクルマの全長によって異なるのが一般的なケース


ビルやマンションが並ぶ三浦半島の久里浜港


東京湾フェリーの客席は2階建て。イスも座りやすい
それから20年近くが過ぎたころ、ぼくはアウトドア雑誌の編集部におり、編集部はキャンピングカーを所有していた。

キャンピングカーにはクジラの模様が大きく入っていたから、雑誌のマスコット的存在であり、読者との交流を深めるためにも一役かっていた。

そのためにキャンプイベントにはできる限りクジラ模様のキャンピングカーで出かけた。

ある夏、北海道でのキャンプイベントがあり、そのために大洗からフェリーに乗ることになった。

一瞬、昔のいやな思い出が頭を過った。しかし、20年ぶりに搭乗したフェリーは非常に快適だったのである。

畳の部屋を確保したのも良かったが、デッキで浴びる海風が気持ちいい。カモメの見送りもなんだかうれしい。

レストランの食事もそれなりにおいしく、海風を流すお風呂も爽快で快適な移動になった。

まぁ、揺れなかったのがいちばんなんですけども…。

それ以来、フェリーの旅がお気に入りになった。九州のキャンプイベントに行った時も、フェリーで鹿児島県の志布志港まで行った。

長距離移動の手段としてのフェリーだったが、そのうちに四国や瀬戸内海、九州西海岸へ取材に出かけると、短距離フェリーが非常に多いのに気づいた。そして、それは観光客のためというよりも、日常生活の足として使われていた。

岡山県から小豆島、小豆島から高松へ。四国から別府に渡った時も。島原から天草、天草から鹿児島へ向かった旅も。島を結ぶ短距離フェリーの主役は地元の人たちだった。

東京湾フェリー内には売店も。長距離フェリーにはレストラン、カフェ、大浴場、ゲームコーナーなどもあり、部屋もスイートから1名室まで


カモメはエサを求めてどこまでもフェリーについてくる


久里浜港と景色が大きく異なる房総半島金谷港付近
長距離フェリーも短距離フェリーも数多く搭乗した僕だが、フェリーの旅は何回行ってもうきうきする。

最大の魅力は出港地と到着港の景色の違いだ。陸路を行くと徐々に景色が変わっていき、目も周囲の景色に慣れてしまうから、目的地に着いてもそれほどの驚きはない。しかし、フェリーの旅は海を渡ると突然景色の異なる世界に身を置くことになる。

これがおもしろいしフェリー旅の醍醐味だ。もちろん、長距離フェリーに限った話ではない。短距離フェリーであっても高層ビルが並ぶ高松港と小豆島の小さな港では景色がまったく異なる。

首都圏に身近なところでは東京湾フェリーだってそうだ。三浦半島久里浜港の背後にはビルが並ぶが、房総半島金谷港にはヤシの木が並ぶ。

第二のおもしろさは海の生物だ。

フェリーを追って飛ぶカモメ。フェリーに驚いて空を飛ぶトビウオ。かつて東京湾フェリーに乗った時は、イルカの群れを見た。

そして、三つ目のおもしろさは人間観察だ。長距離フェリーでは毎度利用しているトラックドライバーを見かける。

彼らはフェリーを熟知しているから食事時間、風呂などの行動が機敏で、それに習うと効率的なフェリー旅ができる。

短距離フェリーでは地元の人と、フェリー乗組員との会話が聞ける。それもまた旅情をそそるものだ。

近年はさまざまな場所に橋が架かり、短距離フェリーが運航をやめるケースが増えている。まだあるうちにフェリーの旅に出かけてみてください!

フェリー旅の参考に

●日本長距離フェリー協会
http://www.jlc-ferry.jp/

●東京湾フェリー
http://www.tokyowanferry.com/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
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