「江戸切子」のようにガラスを削るのでもなく、「サンドブラスト」のように砂などの研磨材料をガラスに吹き付けるのでもない。「ガラスエッチング」は特別なクリームを塗るだけで美しいガラス細工ができる気軽で新しいアートなのだ。 |
ガラスエッチングに必要な用具はクリームとシート、デザインカッターなど
Outside inの店内には大きなテーブルがあり、ステンシルやガラスエッチングなどの講座が開かれる 塚田さんの手によるガラスエッチング用シートの原型
ガラスエッチングやステンシルの用具や素材などがショップ内に置かれているが、目を引くのはセンター部にある大きなテーブルだ。 訪れたときには近隣の女性たちが集まり、塚田さんを中心に作品作りに励んでいた。 教室が終わるまでの時間、鎌倉の暖かい太陽が差し込むショップ内をのんびり見てまわる。ステンシルに使うキットが楽しく、各色あるカラーペイントになんだか気持ちがわくわくする。 とくに印象的なのが模様の入ったランプシェードやガラス窓。透明なガラスの一部が曇りガラス状になっており、草木の模様を美しく描き出している。それがガラスエッチングだった。 「もともとはステンシルをしていたので、年に1回のステンシルホビーショーに行っていました。25年程前になりますが、そこにガラスエッチングが出品されていたのです」 ステッカー状のシートに模様を描いてから、デザインカッターでていねいにカット。それをガラスに貼って模様として残す、シートが切り抜かれた部分に「エッチングクリーム」を塗ればいい。 約15分そのままにしておくだけでガラスの腐食が進行して、すりガラス状になって模様が浮き上がるのだ。 「これはおもしろいとすぐに思いました。ステンシルはいろいろな素材でできますが、残念ながら透明感はありません。ガラスエッチングならガラス素材で行うために、独特の透明感を表現できるのです」 塚田さんが作品を見せながら笑った。 |
シートをデザインカッターで切り抜いていく
作品例。クリームがガラスを腐食させて模様ができる
ガラス素材を店内で購入してガラスエッチングを楽しもう
そのために「ガラスエッチングがしたい」と望んでも、すぐにクリームを日本に持ってくるわけにはいかなかった。 塚田さんは医薬用外劇物について猛勉強。輸入と販売のふたつの資格を取り、晴れてガラスエッチングを日本で楽しめる環境を整えた。 ちなみに医薬用外劇物指定成分といっても、エッチングクリームは適切に用いれば恐ろしいことはなにもない。 小さい子どもの手に届かないところに保管する、目や口に入れない、換気に注意するなどの必要事項を守ればいいだけだ。 そして、エッチングクリームには何回も繰り返して使える利点がある。ガラスに塗ったクリームを回収し、ボトルに入れれば次回もまた使用できる。 つまり、この魔法のクリームさえきちんと取り扱えば、ガラスエッチングは誰でも気軽に楽しめるのだ。 また、Outside inには塚田さんのオリジナルの模様が入った「ガラスエッチング用シート」が売られている。グラスや鏡などにこれを丁寧に貼ってクリームを塗るだけの作業でガラスエッチングは完成する。 体験時間はものの30分くらいのものだ。 「もっと凝った作品を作りたい」のであれば、シートに自分自身で模様を描き、デザインカッターで切り抜くという工程を加えればいい。苦労と工夫したぶんだけオリジナリティは出るだろう。 いずれにしても、気軽に簡単にガラスエッチングは楽しめるのだ。 |
レジの後ろにかかったさまざまなガラスエッチングシート。塚田さんのオリジナルだ。
ジョッキにガラスエッチングを施してランプシェードが完成
ガラスエッチングの魅力を広く発信しているのが、鎌倉の小さなワークショップOutside inだ。 マネジメントを担当する山口佳余さんが言う。 「このクリームを輸入しているところは少ないと思います。私たちはガラスエッチングの魅力を少しでも多くの人に伝えたいと思っています。 そのために教室を開いており、本格的に始めるのなら全12回の定期教室がお勧めです。 でも、鎌倉へのドライブがてら、ファミリーで楽しみたいという方も歓迎。事前に連絡をいただければ、定期教室などがない日にご家族やグループのための体験教室を開きます」 ガラス素材費+体験費用1000円で、塚田さんオリジナルのシートが1枚と教則本が付いてくる、お得な約1時間の体験教室だ。 「鎌倉での教室以外にも全国のイベントに呼ばれて体験教室を開いています。そちらにも来ていただけたら…」と山口さん。 10月にも東京・浅草、東京・二子玉川でガラスエッチングの体験教室が開催された。ホームページなどに掲載される今後の出張体験教室にも注目してほしい。 |
第1会場となるOutside in
第7回 ステンシル&ガラスエッチングスクール 作品展
11月23日(金祝)~26日(月)11:00~17:00
*最終日は15:00まで
「暮らしを自分らしく彩る」をテーマに、楽しみながら製作された作品が展示されます。
ステンシルクラスは「Tea Time」「Garden」「Wall」を主題に。エッチングクラスはテーブルウェア、照明、時計などを展示。 また、ハンダで組み立てたり、ガラスに色付けした高度な作品の展示も。会場ではガラスエッチングの体験レッスンも行われます。
【会場】
第1会場 Outside in
第2会場 鎌倉市佐助1-9-7 佐助自治会館 (アウトサイドインより徒歩3分)
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載