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  3. いにしえの貴人を温かく迎えた日本三古湯のひとつ 和歌山県・南紀白浜温泉
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南紀白浜は有馬温泉や道後温泉とならぶ日本三古湯のひとつ。記述のある『日本書紀』のエピソードは、有間皇子のはかなき生涯について語っている。夏の海水浴場としても人気のリゾート地だが、歴史をひもとくといにしえの物語が見えてくる。
家族とすごす白浜の宿 柳屋
古湯の源泉「行幸源泉」を利用する湯崎温泉の宿。海を眺めながら入れる源泉100%かけ流し。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町1870
TEL:0739-42-3360
泉質:ナトリウム-塩化物泉
泉温:78.6度


宿の目の前には鉛山湾が広がる


勢いよく吹き出す「行幸源泉」。周辺には歴史のある共同浴場もある


冬はクエ、春はもちガツオが白浜ならではの味覚。夏はトコブシがおいしい


写真=『温泉遺産』(実業之日本社刊)より
和歌山県紀伊半島の南西に、太平洋に突き出した湾がある。
三日月のように白砂で覆われた白良浜は、リゾート地南紀白浜を象徴する美しい砂浜として多くの観光客でにぎわいをみせる。
そのすぐ南側にある湯崎海岸には、太古の昔から温泉が湧き出し、白煙を上げていたという。

『日本書紀』にこの温泉の記述が現れる。
父である孝徳天皇(596-654)崩御ののち、政争に巻き込まれるのを避けるために、有間皇子(640-658)は気がふれたふりをして「牟婁(むろ)の湯」に滞在する。
この「牟婁の湯」が湯崎地区の温泉で、のちの白浜温泉となる。

657年(斉明天皇3)、牟婁の湯から飛鳥へ戻った有間皇子は、かの地の景勝を称賛。
この話を受け、腹違いの伯母に当たる斉明天皇(594-661/宝皇女・皇極天皇)は、658年(斉明天皇4)、「紀の湯」(白浜温泉)へ行幸する。

そのとき有間皇子に近づいてきたのは蘇我赤兄(623?~672以降?)だった。赤兄は蘇我馬子の孫で、中大兄皇子(626~672/天智天皇)の妻の伯父に当たる。
赤兄は自分が有間皇子の味方であることを伝え、斉明天皇と中大兄皇子の失政を指摘して、皇子から両者打倒の言質をとる。

赤兄は有間皇子に謀反の企てがあることを中大兄皇子に密告。
中大兄皇子はすかさず有間皇子をとらえ、尋問。2日後には有間皇子は藤白坂(和歌山県海南市)に送られ、絞首刑となるのだ。

720年(養老4)に完成した『日本書紀』は、当時実権を握っていた藤原不比等(659~720)の影響が非常に強いと考えられる。
乙巳の変(645年/大化の改新)で蘇我蝦夷、入鹿父子を滅ぼした中大兄皇子の背後には、不比等の父・藤原鎌足(614~669/中臣鎌子・鎌足)がいる。
蘇我氏を葬り、実権を手中にした藤原氏による歴史書であることを考えると、だれが善人でだれが悪人なのか、この話を鵜呑みにするわけにはいかなくなる。

ただ、少なくとも、抹殺された有間皇子にとっては悲劇であった。  

『万葉集』に、有間皇子が詠んだとされる辞世の句がある。

「磐代の 浜松が枝を 引き結び
     ま幸(さき)くあらば また還り見む」

「家にあれば 笥(け)に盛る飯(いひ)を 草枕
     旅にしあれば 椎の葉に盛る」

『記紀』に登場する日本三古湯として挙げられるのが、この南紀白浜温泉と、有馬温泉(兵庫県神戸市)、道後温泉(愛媛県松山市)になる。

南紀白浜温泉は、田辺湾から鉛山湾にかけて点在する温泉地の総称だ。
湯崎、大浦、古賀浦、綱不知、白浜、東白浜、新白浜といった土地に温泉が点在している。

有間皇子が入湯したといわれる「牟婁の湯」は、鉛山(かねやま)温泉と名を変え、のちに湯崎温泉となっている。

いまもその名が公衆浴場として残っている。

この一帯の温泉の特長は、塩気が強い食塩泉であること。
泉源によって硫黄臭が感じられるものや重曹泉がある。

温度は十分に高いので、入浴法に湯揉み棒を使う風習もある。
「上熱く下温し。湯揉み棒にて湯の花湧かせ、適温とする」  

湯量が豊富なために、どの公衆浴場も料金が非常に安い。こうした施設がたくさんあり、きちんと管理されている温泉地は、町自体にパワーを感じる。
活気の源となる豊かさ、といってもいいだろうか。  

温泉がもたらす温かさは、体を癒すだけでなく、心までをも力づけてくれる。

「牟婁の湯」につかった有間皇子は、何を思いながら体を温めたのだろうか。

18歳で生涯を終えた有間皇子を偲び、お湯の中で海を眺めながら合掌した。


南紀白浜外湯めぐり
崎の湯
眼下に太平洋が広がるダイナミックな湯。湯船から海までは約10mで、岩に打ち寄せる波の音を聞きながら入浴できる。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町湯崎1668
TEL:0739-42-3016
営業時間:8:00~18:00(7月~8月7:00~19:00/10月~3月~17:00)
定休日:水曜日 料金:400円(3歳以上)
泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
泉温:86度
pH値:7.4
牟婁の湯
日本書紀や万葉集にもその名が登場する古湯。2種類の温泉を楽しむことができる。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町湯崎1665
TEL:0739-43-0686
営業時間:7:00~22:00(7月~8月7:00~19:00/10月~3月~17:00)
定休日:火曜日
料金:大人400円 中人130円 小人70円
泉質:ナトリウム-塩化物泉/75度/pH6.6(砿湯[まぶゆ])
ナトリウム-塩化物-炭酸水素塩泉/83度/pH7.4(行幸湯)
しらすな
白良浜海水浴場に隣接した温泉で、水着を着たまま入る混浴露天風呂。デッキテラスがあってプールのようになっている。お湯は砿湯(まぶゆ)から引湯している。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町864
TEL:0739-43-1126
営業時間:10:00~15:00(7月~9月15日~19:00/5月・6月イベント時~17:00)
定休日:月曜日(7月~9月15日は無休)
料金:100円(3歳以上/5月~9月以外は無料)
泉質:ナトリウム-塩化物泉
泉温:75.5度
pH値:6.6
白良湯
番台がある昔ながらの銭湯スタイル。1階は休憩所、2階が温泉になっている。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町白浜3313-1
TEL:0739-43-2614
営業時間:7:00~22:00
定休日:木曜日
料金:大人400円 中人130円 小人70円
泉質:含二酸化炭素-ナトリウム・塩化物強塩泉
泉温:67.3度
pH値:6.73
松乃湯
円月島をめざす瀬戸湾沿いの歩道脇にある。公民館風の建物で泉質は塩分濃度が高いのが特徴。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町瀬戸743-1
TEL:0739-43-0988
営業時間:13:00~22:00
定休日:火曜日
料金:大人300円 小人100円
泉質:含二酸化炭素-ナトリウム・塩化物強塩泉
泉温:67.3度
pH値:6.73
綱の湯
平成20年6月に新しくオープンした共同浴場。温泉街の中心から少し離れ、白浜桟橋の近くにある。
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町3354-1
TEL:0739-43-0533
営業時間:12:00~22:00(7月~9月10:00~)
定休日:木曜日
料金:大人300円 小人150円
泉質:含硫黄-ナトリウム・塩化物泉
泉温:55度 pH値:7.1
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/
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