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冬だからこその“体験”が日本各地にある。雪といえばスキー&スノーボードを連想しがちだが、調べてみると冬体験には各種あるのがわかる。寒いからと部屋に閉じ籠るより、冬ならではの大地に飛び出し、寒い日を思いっきり楽しんでみよう!
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うちの叔母は東銀座で喫茶居酒屋のようなお店をやっている。亡くなった夫は三十代式守伊之助、相撲の立行司だった。
場所が終わると保養を兼ねてハワイに夫婦でよくでかけていた。ハワイの開放的な雰囲気が、わずか1分ほどの力士と力士の勝負をさばくという真剣勝負で疲弊した心身を癒すには、ちょうどよかったのだろう。
しかしこの前、居酒屋に遊びに行くと、「ねえ、寒風吹き荒ぶ光景が見てみたいのよ。国内で簡単に行ける場所はないのかね」と、80歳近いおばさんに言われた。
さっそく旅行代理店の知人に尋ねてみたし、自分でも調べてみた。
まず、思いつくのは北海道である。旅行代理店のおすすめも北海道だ。近ごろは「北海道の雪景色が観たい」という希望で、台湾や香港からも大勢の旅行客がやって来るくらい。
冬の北海道で集客がいいのは、札幌の雪まつりと旭山動物園をパッケージしたツアーだ。しかし、ぼくは思った。それでは寒風の度合いが低い(と、感じた)。
やはり、もっと海風がビュービュー吹かないと。誰もいないような海が目の前に広がっていないとおばさんのリクエストには応えていないような気になった。
☆
ぼく自身、真冬の利尻島と紋別に行った経験がある。
そりゃ、寒かった。海岸線の散歩は、けっこう悲惨な状態になる。
それでも、とてもいい思い出になっている。
紋別には流氷を砕きながら進む流氷砕氷船ガリンコ号があり、冬のツアーの目玉になっている。船から見る流氷は素晴らしいし、ときには鷲や海の生物との出合いもある。
ぼくはガリンコ号を楽しみ、夕食までの空いた時間を寒さに耐えるたくさんの海鳥を眺め、水産会社を覗き、気ままに現地を楽しんだ。東京暮らしのぼくの日常とは無縁のことばかりで、寒風さえ貴重な体験になった。
一緒に乗船したバスツアーの面々は、ガリンコ号下船後に網走や旭川、札幌方面へと移動してしまい、紋別に留まる旅人はあまり多くない。
その証拠にカニが名物の料理店は空いていたし(札幌よりはるかに安く、大量だった)、スナックは40代半ばのママと漁師2人、ぼくだけだった。
無骨でとっつきにくい感じの漁師たちも、話してみれば気さくで、帆立貝漁の苦労話と愉快な話をたっぷり聞かせてくれた。
旅の取材をしていると思うことがある。とくにアクティビティがなくても、暖かいところ、暑いところには人がやって来る。しかし、寒いところに人はなかなか来ない。スキー場を作り、温泉施設を建て、そのほかのアクティビティを整備して、やっと人は来るようになる。
しかし、本当は雪や自然の地形を生かした小さな体験は、小さな町にもたくさんある。北海道だって、本州だって、雪があるからこその体験はいくらでもあるのだ。
そして、地元の人との触れ合いは心に残る。これは雪国に共通する点だ。寒いなかで1日を過ごした人を、居酒屋やスナックの人は温かく迎えてくれる傾向にある。
八代亜紀の『舟唄』が似合う酒場は、人情という言葉も似合うのだ。
おばさんにはガリンコ号とカニ、冬の海の幸がおいしくて安く、居心地のよいスナックがあり、直行便が飛んでいる紋別や網走を進めるつもりだ。
☆
さて、脱線が過ぎたようだ。
今回は冬ならではの体験がテーマ。そこで、ネットをサーフしていろいろ検索してみた。
以下にご紹介するのは、ぼくが「行ってみたい!」を基準に選んだ体験ばかりだ。
ひとつ、ふたつは出かけてみようと思う。さて、原稿を書いている最中から、なんだかウキウキしてきた。豪雪時期が待ち遠しい!
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まずはコラムでも紹介したガリンコ号。正式にはガリンコ号Ⅱだ。流氷の時期に合わせて旅立たないといけないし、本州の人は気軽にマイカーでおでかけとはいかないが、一見の価値はある。まずは搭乗してみることだ。紋別には海洋見学施設や温泉付きのホテルもある。
http://www.o-tower.co.jp/garinko/
☆
冬体験といえば北海道が絶好の舞台で、雪の体験として思いつくアクティビティはほとんどできる。これは、「北海道体験.com」を検索すれば一目瞭然だ。しかし、おでかけマガジンの愛読者の方が、北海道に行くのは困難だと思うので、以下は本州を中心に探してみた。
北海道体験.com https://h-takarajima.com/
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ぼくがスキー雑誌の編集をしているとき、猪苗代周辺はスキー場オープンブームだった。裏磐梯猫魔、アルツ磐梯、グランデコなどのスキー場が相次いでオープンし、しばしば冬の磐梯に行った。そのときに見たのが桧原湖の氷上ワカサギ釣りだった。スキーとは対照的なのんびりとした冬の1日の遊び方に、「いつかは…」と思ったものだ。
http://www.wakasagi-tsuri.com/hibarako/
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ぼくが初めて犬ゾリに乗ったのはアラスカだった。現地のガイドが後ろに乗って、ぼくはソリに座ったのだが、そのスピード感に驚いたのを覚えている。ソリからの視線が低く、森の間を抜けていくから、とても速く感じるのだ。加えて、犬の息遣いが聞こえ、なんとも心地良い。本州では唯一本格的な犬ゾリ体験ができるのがここだ。
http://www.minakami-ski.jp/activity/sled_dog/
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スノーシューは岩手県の安比高原などでも体験し、熊の爪跡が残る冬の森を歩いたが、信州でもスノーシューは盛んだ。岩岳は滑り派に人気だが、現在では雪遊びフィールドとして充実した対応を行っている。スノーシューコースは白馬三山を眺めながら歩くコース。ねずこの森は「ネズコ(別名クロベ)=ヒノキの仲間」がたくさんある森。森の中にあるねずこの大木は自然のパワースポットとしても地元で知られ、そこをめざして歩いていこう。
http://iwatake.jp/index.php/field/snowshoe-course
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ネット検索をしていてこれを見つけたときに、「おお!」と、感嘆の声をあげてしまった(!)。太宰治は青森県津軽で明治42年に生まれ、斜陽館と名付けられた和洋折衷・入母屋造りの生家も残る。また、この地には「津軽地吹雪会」があり、毎年雪国地吹雪体験プログラムを開催しており、予想以上の集客をしているそうだ。
http://dazai.or.jp/modules/contents/expe02.html
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野沢温泉では四季を通じてさまざまな体験を行っている。冬はスノーシューや雪上車で楽しむ雪原遊覧ツアーなども楽しそうだが、作って歩くかんじき作りに心惹かれてしまった。スキー場ができる前の野沢の冬は、室内でのつる細工や竹細工が暮らしの支えだった。雪の上を歩くためのかんじき作りもそのひとつ。それを作って、雪上を散歩しようというのだ。昔の雪国を知るうえでもいい体験だ!
http://www.nozawakanko.jp/program/winter.php
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蔵王スキー場に初めて行った時、樹氷を見るだけで幸せな気持ちになった。それはみんな同じだったようで、蔵王周辺にはスキーヤーやスノーボーダーにまじって、長靴を履いた観光客をよく見かける。国内外からやって来た、樹氷ウォッチャーたちなのだ。宮城蔵王、山形蔵王では雪上車を利用した樹氷めぐりツアーを行っている。巨大化する時期を狙ってでかけよう。
http://www.zao-machi.com/1119
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最後にご紹介はちょっとおまけといった感じ。雪国体験ではありません。でも、とても魅力的。鳥羽市内の焼き牡蠣小屋で、地産のカキが食べ放題。お店によって内容は若干違うらしいけれど、カキご飯、カキフライ、カキのみそ汁なども出すようで。同様の食イベントは石川県の能登半島でも経験済みで、地産のカキを存分に堪能したものだ。食いしん坊はぜひ!
http://www.kankomie.or.jp/mTaiken/winter_01.html
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。