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越カメラマンが教えてくれるのは、前に何かをボカして入れ、後ろを引き立てる“前ボケ”の手法。より印象的な写真になるでしょう。そのほかに「箱根」写真コンテストのご紹介や壁紙プレゼントも。
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寒かった冬が終わり、あっという間に春も過ぎてモノトーンだった世界から一気に色鮮やかな季節になりました。華やかな季節になったのですから、写真に活かさない手はありません。
そこで今回は、これまでにも何度か出てきている「前ボケ」について、より具体的に解説したいと思います。
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今回は、完成した写真から紹介していきましょう。
先日、富山県立山の麓の町を訪れました。車を走らせていると、道ばたの畑にナノハナが咲いていました。
残雪を抱いた立山と一緒に撮影しようと思い、そのまままずは1枚(写真A)。
当然、これでは散漫な写真になってしまいます。そこで、ナノハナを“前ボケ”にしようと思って撮影したのが写真Bです。
ナノハナを前ボケにして、山との間にあった住宅を隠すことが狙いです。結果として山のすぐ間近でナノハナが咲いているような印象になりました。
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写真C/Dも同様に前ボケを活かした例です。
千葉県南房総の花畑の中で咲いているナノハナですが、そのままでは平面的な印象です(写真C)。そこで、その手前に別のナノハナをボカして入れ、花のボリューム感をアップ。華やいだ印象にしてみました(写真D)。
このように、前ボケは作品作りに欠かせないテクニックです。そのポイントを解説していきたいと思います。
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まず失敗例(写真E)から紹介していきましょう。
前ボケを狙うときに陥りやすいのが、「やり過ぎ写真」です。つまり、何でもかんでも前ボケを入れればいいというものではありません。
とくに多いのが、前ボケの量が多すぎて、肝心なメインの被写体の存在感が弱まった例(写真E)です。ただし、私自身もよく使う方法ですが、色として完全にボカしてしまい、メインの被写体を目立たせている場合は除きます(写真F)。
もうひとつは、ぼかした物とメインの被写体との関連性がハッキリしない写真Gのようなケースです。古い街並みの前ボケにチューリップの花をぼかして入れてみましたが、「チューリップと古い街」の関連性が今ひとつハッキリせず、ただ前ボケを入れただけの印象になってしまっています。
前ボケ写真は「適度に」がポイントになります。
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次に、前ボケをどのくらいぼかすかが大切になります。
写真H/I/Jはそれぞれ絞りをF2.8/F5.6/F16にした写真です。以前に解説したように、絞りを開ける(数字を小さくすればする)ほどボケは大きくなります。
写真をシンプルに見せる(狙いをハッキリさせる)のであれば、絞りは開けてボケは大きくしたほうがよいかと思います。
ただし、今回のテーマとは逆の余談になりますが、ナノハナも山も両方見せたい場合は露出を絞ってみてください。このときのピントの位置は、通常奥の山(写真J)ではなく手前のナノハナ(写真K)になります。
ちなみにこの手法を「パンフォーカス」といい、いずれ機会をみて解説したいと思います。
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もうひとつ大切なポイントが前ボケにするものが、レンズ前のどのくらいの位置にあるかです。
写真L/Mは黄色のポピーを狙った写真ですが、写真Lはレンズ前15センチくらい、写真Mはレンズの目の前に白い花を入れて撮影しています。
写真Lよりも15センチほど近づいたのが写真Mですが、近づくことでボケが大きくなったのが分かるかと思います。
先に紹介した写真Fは、こうして原型を留めないほどナノハナを大きくぼかし、色として写真に活かしています。
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☆
色のない冬場ではなかなか試せない前ボケ写真。今回、季節的にナノハナばかりになってしまいましたが、ほかの花や木の葉などもボケとして活かすことができます。ぜひ試してみてください。
こし のぶゆき
1968年神奈川県生まれ。カメラ専門誌や旅雑誌の撮影・取材を行なう傍ら、「メルヘンステーション」をテーマに全国の駅を撮影し、雑誌などに作品を発表している。公益社団法人日本写真家協会会員、日本旅行写真家協会理事。
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越カメラマンの“前ボケ”の例では、さまざまなお花畑が出てきました。手前にきれいな色の花を入れて、後ろにあるものを引き立てるというのは、ひとつの手法のようです。
さて、雑誌や書籍の編集、執筆をしている「プレスメディア」社が、そのノウハウを活かして運営しているウェブサイトに『花の名所案内』があります。
ここでは、季節ごとに見頃のフラワーパークや花名所が紹介されています。
ぜひ、チェックして花名所に行き、“前ボケ”の名作をものにしてください。
●『花の名所案内』
http://www.hanazakura.jp/
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撮影場所:大涌谷 (応募ホームページより)
http://photo.hakone-ryokan.or.jp/
これからの観光シーズン、箱根を訪れる人も多いでしょう。そのときに、たとえば芦ノ湖から望む富士山、情緒ある箱根の温泉街、登山鉄道などの箱根の観光スポットをおさめて応募してください。
箱根温泉旅館協同組合が主催する写真コンテストです。
応募受付期間
2014年4月~6月、7月~9月、10月~12月、2015年1月~3月の4期制
賞 品
3カ月毎に入選者5名に「箱ぴた」宿泊券1万円分、さらに抽選で10名に限定の香「はこねばら」をプレゼント
発 表
3カ月毎にコンテストホームページで発表
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編集部が取材で出かけて撮影したたくさんの写真の中から、壁紙向きの写真をプレゼントします。お気に召されたら、壁紙などにお使いください。
☆
オレンジやオリーブが名産のナポリのそばの小さな港町。そこで印象に残ったショットです。
構成と写真
岩崎幸則
東京都生まれ。雑誌編集などを経てカメラ&ライターになる。現在は旅行雑誌、企業会報誌などに執筆。プロレス観戦が趣味。