観光客やお腹を空かせた人たちで賑わう横浜中華街は、風水に基づいて完成した町です。四方に青龍、朱雀、白虎、玄武の門があり、中心には関帝を祀る関帝廟があります。中華街は心も舌もお腹もうれしいパワースポットなのです!
爆竹の音がパンパンパンと小気味よく響き、そのあとに獅子舞や龍舞が続いて…。
横浜中華街を訪れた10月1日は「国慶節」、中華人民共和国の建国記念日でした。
横浜中華街の年間スケジュールを見れば、1月の春節にはじまり、媽祖誕、関帝誕など数多くのイベントが開催されています。これも横浜中華街が活気にあふれているひとつの要因でしょう。
一時期、横浜に住んでいたために、中華街は頻繁に訪れました。そのうちにお気に入りのお店もでき、そこへ通う楽しさと(当時は牡丹園の生うに中華風茶碗蒸しに夢中でした)、新しいお店を見つける楽しさを味わっていました。
独特の雰囲気とお料理を堪能して、中華街を出るときはいつも満足感でいっぱいになります。満腹なのはもちろんですが、心までリフレッシュした気分になるのです。
そのころは知らなかったのですが、日本のパワースポットを調べているうちに、横浜中華街が巨大なパワースポットであるのがわかりました。風水思想に基づいて街づくりが行われたというのです。
中華街を訪れた後に、心も満たされるのは、きっとそのためでしょう。中華街のもつパワーが身体をリフレッシュさせてくれるのです。
“四神”とは中国の神話に登場する天の四方を司る霊獣です。東の青龍、南の朱雀、西の白虎、そして北の玄武。この四神が横浜中華街にいるのをご存じですか?
中華街にさまざまな“門”があるのを気付いている方も多いはず。四方に築かれた門の守護神がこの四神だったのです。
中華街はこれらの霊獣が四方を司る、“結界”ともいえます。だからこそ、横浜中華街には観光客を魅了するパワーが満ち溢れているのでしょう。
横浜中華街がパワースポットだと知ると、散策がますます楽しくなりました。
クルマを周辺の駐車場(横浜中華街パーキング協同組合経営の駐車場をはじめ、コインパーキングなどが点在しているために、通常なら駐車場探しに困りません)にとめて、中華飯店に一直線ではなく、まずは街をぐるぐる歩いてみてください。
山下公園方向(東)にあるのは「朝陽門」です。
守護神は青龍ですから、門は青色をしています。朝陽門は日の出を迎えるだけに、朝陽が街全体を覆い、繁栄をもたらすことを意味しています。つまり、この門は財運出世にご利益があります。また、ガイドブックには進出力や想像力が向上する効果も書かれています。
元町方向(南)には「朱雀門」があります。
火を象徴する朱雀だけに、門は赤く塗られています。朱雀は昇る太陽の象徴、光で明るく世界を照らす=「家運隆盛」を意味します。さらに、恋愛運のアップにも朱雀は力を貸してくれるそうです。
JR石川町駅方向(西)にある門は白く塗られた「延平門」です。
ここの守護神は白虎。虎のもつ統率力は「ライバルに打ち勝つ」ことを意味しています。
横浜スタジアム方向(北)にあるのは「玄武門」。
亀(玄)にからみつく蛇(武)の姿をイメージした霊獣だけに、長寿と繁栄を意味しています。また、亀と蛇が男女の交わりも表すために、子孫繁栄にもご利益があります。
四つの門をまわるだけで財運出世、家運隆盛、恋愛成就、ライバルに打ち勝つ、長寿・子孫繁栄のご利益があるなんて…!
中華街を訪れたら、4つの門をぜひまわってみてください。色の違いを楽しみ、それぞれの門に飾られた朱雀や玄武の姿を見る。
そのほかにも、今まで気付かなかった発見があるはずです。
中華街を訪れる多くの人は、萬珍楼や同発、聘珍楼などの有名店がある「中華街大通り」を中心に歩きます。
有名店や肉まんや焼き栗を売るお土産店も並ぶ中華街大通りは、活気もあり、ゆっくりと散策するのに最適です。
しかし、パワースポットをめぐるなら関帝廟通りを歩いて「関帝廟」や南門シルクロードの「横濱媽祖廟」に立ち寄りたいところです。
関帝廟はその名のとおり、関帝(関羽、関聖帝君、関帝聖君)を祀る廟です。本殿の中央に関羽を祀り、右に関平、左に武将周倉を祀っています。
日本でも『三国志』は大人気ですから、義理人情に厚く、約束を守る武将・関羽ファンも多いでしょう。
この約束事を守る信義の精神が商人にとっても大切とされ、華僑は関羽を商売の神様として信仰しています。
また、頭脳明晰であったこともあり、学問の神様でもあります。
彼の人生にちなみ、関帝廟は商売繁盛、合格、学問、交通安全にご利益があるパワースポットなのです。
媽祖廟の「媽祖」は実在した女性の名前です。小さいころから才能に溢れていて、神様から銅製のお札を授かったという伝説があります。
風水によれば、銅はエネルギーを集めるパワーをもっています。事実、銅を活用して運気を手にした先人も多いのです。
媽祖廟は媽祖をはじめとする数々の神様が祀られています。
それだけに商売繁盛、志願成就、身体健全、安産祈願、旅行安全、除災招福など15種類のご利益が…。
男性的な関帝廟と女性的な媽祖廟は中華街パワースポットめぐりで欠かせない霊所です。
心にたくさんパワーをいただいたら、中華街のレストランへ。
冒頭で紹介したような名物料理を大事にしているお店、全国的な知名度をもつ名店、そして近ごろでは低価格食べ放題を提案するお店が増えています。
ちなみにわたしは友人12人と訪ねたときに食べ放題に挑戦しました。お料理、麺類、ごはん類、スイーツと合計で100品ほどあったので、ひとつずつ全食オーダーによる完全制覇をめざしました。
しかし結果は惨敗。ごはん類と麺類の完食がネックになりました。それでも、低予算でおなかは大満足でした。
行けば楽しく、おいしく、パワーも授けてもらえる横浜中華街。この街の魅力は訪問者を飽きさせません。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。