キャンプといえば飯盒で炊くご飯があたりまえでした。しかし、AC電源が普及すると家庭で使われている炊飯器が持ち込まれ、炊き方と洗うのが面倒な飯盒は姿を消しました。キャンプだからこそ、もう一度“炊く”という行為を見直してみませんか?
取材などで全国を旅していると、印象に残る“ご飯”というのがあります。ご飯といっても“おかず”も付いているそれではなく、お米だけ。お米のお話です。
ひとつは日本有数の米どころ、新潟県南魚沼市でのお話。そう、南魚沼市はコシヒカリの名産地。きれいな雪どけ水と温暖差、そしてリフトを使っての天日乾燥をはじめとする農家の努力がおいしいお米を生み出しています。
南魚沼市六日町に、すべての個室に設置された源泉かけ流し露天風呂が評判の温泉宿「温泉遺産の宿 かわら崎湯元館」があります。日本海も近いことから新鮮な海の幸も夕食に並ぶのですが、ここの名物はなんといっても白いご飯。
普段でもお客は小さなお釜で炊いて食べるのですが(ボリュームいっぱいの夕食のため、ご飯が残ったときは頼めば塩にぎりにしてくれます。これが夜食にいいんです)、お正月に訪ねたとき、お米炊きのイベントが開催されました。イベントといっても、お米を炊くだけなのですが…。
ただし、それが本格的でした。大釜を用い、ワラに火をつける。阿部さんという「米炊き名人」で知られる地元のおばちゃんが、お客にはわからない絶妙なタイミングでワラの量を加減してお米を炊いていく。
炊き上がったご飯のおいしさといったら! 数年前の出来事ですが、今でも忘れられないご飯です。
☆
もうひとつのご飯のお話は、四国西南地区でのことです。
高知県と愛媛県の県境にまたがる農村地域での体験でした。ここは、日本でもっとも早く稲刈りが始まるエリアのひとつです。
そのために「日本一早い新米炊き」が開催され、それに参加してかまどで炊き上げたご飯をいただきました。
稲刈りや新米を食べるのは、秋の香りがする季節の風物詩ですが、まだまわりは夏景色。その心地良い違和感が新鮮でした。
キャンプ場で過ごすのが幸せなのは、自然に囲まれて食事をすること、星空を見上げながらアルコールが飲めること、自然の静寂の中で眠ることなど、さまざまな要素があるためです。
そして、「食の満足感」も、“幸せ”を構成する大きな部分でしょう。
キャンプ場は都会とは離れた場所にありますから、地元で収穫された野菜や鮮魚、その地方で育てているブランド肉が手に入りやすくなります。
お米だってその例に漏れません。道の駅にはその地域で育ったお米が売られていますし、地方のお米やさんに行けば玄米が手に入る可能性もあります。
お米の名産地の道端には自動精米機が設置されている場合が多いので、これからのキャンプでは精米したての新米をいただける可能性が非常に高いというわけです。
しかし!! キャンプ場のサイトに目を向けると、地域の名産米を楽しんでいる人をあまり見かけません。
ビニール袋から取り出した家から持ってきたお米(無洗米も多いですね、便利ですから)を、炊飯器に入れて炊くという人がとても多いのです。オートキャンプ場をはじめとする高規格キャンプ場を中心に、AC電源が普及したのがその理由でしょう。
なかには「キャンプでは気軽に食べられるパン」と、ご飯を炊かなくなった人たちも少なくありません。
ひと昔前ならキャンプの主食は飯盒(はんごう)で炊いたご飯でした。しかし、水加減や炊き方の難しさ、使った後の飯盒洗いの面倒によって、飯盒はキャンプ場から姿を消してしまいました。
☆
これから訪れる新米のシーズン。今年は飯盒やお釜を使って炊飯そのものを楽しみませんか?
最初は水加減、火加減を失敗してもいいじゃないですか。経験はおいしいご飯を炊くために役立ちます。
キャンプ場だからこそ、炭や薪を使ってご飯を炊くことができるのです(直火禁止のキャンプ場では焚き火台などを使うこと)。
そして、炊き立てのご飯、家庭ではなかなか食べられない“おこげ”を味わう。
またひとつ、キャンプの喜びが増えそうです!
(価格目安2000円)
(価格目安3500円)
※今月のプレゼント賞品です。
(価格目安1900円)
(価格目安5000円)
(価格目安3000円)
(価格目安1万8000円)
(価格目安15000円)
浜口昭宏
雑誌やWEB編集を始めて数年の編集者。超がつくほどのアウトドア初心者だったが、猛勉強をしてそれなりに成長。アウトドアの中で大好きなシチュエーションは、ビールがおいしいBBQ。