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東京都小金井市の小金井公園の一画に、「江戸東京たてもの園」があります。園内には江戸時代から昭和初期までに建てられた30棟の建造物が移築・復元されています。古きよき時代の街並みを散策できる場所として密かに人気のスポットなのです!


雑木林の中に貴重な建造物が並ぶ


田園調布にあったモダンな「大川邸」


カフェ営業もしているデ・ラランデ邸

僕が学んだ学校は、アメリカが生んだ偉大なる建築家フランク・ロイド・ライトと、彼の日本の協力者(弟子と書くには語弊があるので…)である遠藤新が設計している。

とくに、目白にある明日館は自由学園の創立者である羽仁吉一、もと子夫妻が女子学校のために1921年(大正10年)に設計を依頼したものだ。

帝国ホテル設計のために来日していたライトはこれを快諾、食堂とホールを中央部に配置し、その両側に左右対照に“門”の字型に教室が並ぶ校舎を作りあげた。

明日館については『有形文化財の西洋建築で過去と未来を感じる』と題した当連載コラムで紹介しているので、バックナンバーをご覧いただければ、どんな建物なのかがわかると思う。

http://www.smart-acs.com/magazine/12121501/nature001.php



僕が幼稚園に入園したときは、すでに自由学園のほとんどは東久留米市に移転していた。それでもライトが創った独特の建物でお遊戯をしたり、ランチをとったり、お昼寝をしたりという贅沢を、僕はわずか3歳で味わったのである。

そんな幼少体験が関係するのかどうかはわからないが、地方に取材にでかけ、それらの土地の古い街並みを散策すると、なぜかとても落ち着いた気分になる。

たとえば、岡山県の倉敷の街並みもそうだったし、倉敷より規模はずっと小さいけれど、愛媛県大洲市のおはなはん通り(年配者しか知らないと思いますが、昭和41年にNHK朝の連続テレビ小説として放送された『おはなはん』のロケ地です)を歩いた時も、とても居心地がよく、心が癒されたのを覚えている。

倉敷やおはなはん通りは江戸や明治の面影がそのまま残った街並みだ。

一方で古い建造物を移築して展示、人工的に街並みを再現した場所もある。

たとえば愛知県犬山市の「博物館明治村」は重要文化財10棟を含む数多くの貴重な建物を移築保存、そのなかにはライトによる帝国ホテル中央玄関も含まれている。

そして、首都圏に暮らす人が気軽に行ける場所として、東京都小金井市の小金井公園内の「江戸東京たてもの園」を推薦したい。ここには古きよき東京を偲ばせる30棟の建造物が並んでいるのだ。


スタジオを2階に配した常盤台写真場


囲炉裏が印象的な吉野家


貴重な襖絵なども展示する三井八郎右衛門邸

訪れたのは小金井公園に蝉しぐれが響く暑い日だった。

「東京郷土資料陳列館ものがたり」と題された、2016年2月21日まで続く室内展示も興味深いが、やはりメインは室外にある移築建造物展示だ。武蔵野雑木林の中にそれらが展示されている。

展示建造物を巡るために用意された日傘にもなる赤い傘が雑木林の中の散策路に目立つ。うれしそうに傘をさして歩き始めたフランスから来たふたりの女性は、「日本の勉強になるから来ました。ネットの口コミ情報で調べたのです」という。どうやら、外国人観光客用のサイトでも人気があるらしい。

屋外展示は大きく3つのエリアに分かれている。

ビジターセンター(ここに受付がある。この建物もまた移築されたもので、昭和15年に皇居前広場で開催された紀元2600年記念式典のために仮設された式殿だ)の前のセンターゾーンには明治から昭和の政治を担った高橋是清の邸宅や港区白金にあった旧宇和島藩伊達家の門などがある。

西ゾーンにある建造物は1軒1軒が大きく、外側と内側の両方を見学できる。

たとえば、高級邸宅地として知られる田園調布を形成した1軒である全室洋間の大川邸。ドイツ人建築家ゲオルグ・デ・ラランデが増築した新宿区信濃町にあったデ・ラランデ邸。板橋区常盤台にあった2階部分がスタジオになっている常盤台写真場などは靴を脱いで内部を見学するのも楽しい。

当時を生きていた人たちの気分になれるのだ。この場所で食事をして、この部屋で本を読んで、眠って…などと想像していると、平成とは異なる時間の流れが見えてくるようだ。

洋風建造物だけではなく、式台付の玄関や付け書院まである江戸時代後期に建造された吉野家(農家)なども展示されている。

さらに、港区西麻布に昭和27年に建てられた三井八郎右衛門の和風豪邸(三井財閥)にも驚かされる。

これらを見物してひと汗かいた後は再びデ・ラランデ邸へ。テラスと邸内は「武蔵野茶房」というカフェになっている。まるで当時に招かれた客のような気分で、洒落た室内でコーヒーやドイツビール、夏季はかき氷が味わえるのだ。

こんな落ち着いたひとときは悪くない。


東ゾーンには商店が並ぶ


子宝湯のみごとなペンキ絵


商店主の声が聞こえてきそうな雰囲気だ

東ゾーンには東京の下町界隈にあった商店が復元されている。

大正期の醤油店、台東区の言問通り沿いにあった居酒屋、仕立屋、文具店、生花店、荒物屋…。

それらがまるで商店街のように並び、内部まで当時を再現しているから生活感がたっぷりだ。

入園者にも人気が高いエリアで、荒物屋の店頭に並んだやかんや文具店の筆などを見つけては「懐かしいね」「昔はこうだった」と口にする年配のお客様も多い。

空き地には竹馬などもあり、そこで遊ぶ子どもの姿は、洋服はずいぶん派手で素敵になったとはいえ昔となんら変わりない。

僕は子どものころ練馬に住んでいたけれど、展示されているような商店はまだたくさんあった。スーパーはなかったと記憶しているから、余計にそれぞれの商店を思い出すのだろう。

毎度ガムをくれる床屋さん、ご用聞きもしてくれる元気のいい魚屋さん、おばあさんが店頭にいた文具屋さん、母をご機嫌にしてくれる愛想のよい八百屋さん…、細部まではわからなくても、当時の様子が脳裏に蘇ってくる。

ただし、家に風呂があったから、銭湯は身近ではなかった。

江戸東京たてもの園にある銭湯はとても立派だ。昭和4年に足立区千住にできた「子宝湯」が展示されているが、玄関上の七福神の彫刻、高い天井、そして富士山が描かれたみごとなペンキ絵と、どこをとっても圧倒される。まさに、子どものころからドラマやマンガで見ていた“これぞ銭湯”が小金井公園の一画に残っているのだ。



江戸東京たてもの園でのひとときは、ある程度年齢を重ねた人たちにとっては「懐かしさ」を満たすものになる。

しかし、スーパーマーケットやコンクリートの建物しか知らない若い世代や子どもたちにとっては、貴重なレトロ体験となる。

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の舞台のような江戸東京たてもの園。しかし、ここは映画撮影のために造られたセットではない。かつて人が住み、商いをしていた現実の建造物だ。

これらの建物を実際に見て、身体で感じることは貴重な体験になるだろう。


「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●倉敷観光WEB
http://www.kurashiki-tabi.jp/

●おはなはん通り(大洲市観光協会)
http://www.oozukankou.jp/kanko-o4.html

●博物館明治村
http://www.meijimura.com/

●江戸東京たてもの園
http://tatemonoen.jp/index.html
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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