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10月の連休、キャンプ場で悲しい事故が起きました。それはテント内で七輪を使用して一酸化炭素中毒で女児が死亡するというものでした。このような事故が起きないために、危機対策を確認しておきましょう。


天候に恵まれた午後のキャンプ場。初心者がキャンプ場にやって来て、説明書を片手に慣れない設営に励む。とても微笑ましい光景です。

しかし、降雨日や風の強い日だったり、夕暮れになってからだとどうでしょう。“微笑ましい”ではすまなくなります。

悪天候に影響されて満足にテントやタープが張れないでしょうし、ペグなどの打ち込みも不十分になるかもしれません。結果としてタープやテントが風に飛ばされてしまったり、悪天候の中で長時間をかけて設営したために身体が冷え切って風邪をひくなどの事態を招くでしょう。

新しい用具を購入したときは、自宅で事前に設営練習をしておきましょう。説明書がなくても設営できるぐらいに慣れておくのが肝要です。短時間にきちんと設営ができ、ペグなどを効果的に使えれば、その後のキャンプが安心です。

さらに大事な点があります。予行演習で設営をするときから、キャンプに行くメンバー全員で行うことです。しばしば見られるのはお父さんだけが知っていて、お母さんやお子さんは設営方法を知らないというケースです。これでは協力し合って速やかな設営ができませんし、慣れない設営ではいくらお父さんが指示を出しても家族はチンプンカンプン、ケンカの原因になりかねません。


高規格キャンプ場や区画サイトをきちんと造成しているキャンプ場では比較的安心ですが、フリーサイトなどにテントを設営するときは、雨水の流れなどをチェックするのを忘れずに。

まずは全体の地形を眺める、広大なサイトに生えている草を見て水の通り道を判断するなどの対処が必要です。

予期せぬ大雨になった夜、水の通り道にテントを張っていたらどうなるのか。もちろん眠っていられませんし、大雨となれば大きな事故につながる危険性もあります。

キャンプ初心者のうちは区画サイトが整備されたキャンプ場や管理人さんが24時間駐在するところ、夜間照明があるキャンプ場などを利用するのが無難です。


「テントは布製ですから空気を通すもの」と思いがちです。しかし、近年のテントは軽量でありながら防水加工が施され、強度も増しており空気を通しにくい素材のものもあります。現に寒い時期にキャンプをしても、冷気はそれほどテント内に入ってきません。

しかもテント内部は狭い限られた空間です。

その中で七輪を利用すればどうなるでしょう。炭素を含む有機物が燃焼すると普通なら二酸化炭素が発生します。しかし、酸素が十分でないと不完全燃焼が起きて一酸化炭素が発生し、それを吸い込めば中毒を起こす可能性があります。

10月に起こった事故がまさにその一例です。

寒い時期や夏でも高原などのひんやりした場所でテントを張ると、どうしても“暖”がほしくなります。しかし、テント内部で火を起こせば事故を起こす危険性は著しく増してしまいます。

オールシーズン用のシュラフを用いる、シュラフの下に防寒用のパッドを敷く、持参した毛布などを掛けるといった“炎”に頼らない対策が必要です。

同様の理由で暗くなったテント内を照らすために、ホワイトガソリンやカセットガスのランタンを使うのも危険です。電池式のランプを用いるなどの対策を施しましょう。

焚き火、ランタンなどの炎はキャンプ場にとてもよく似合います。それを見るだけで癒されるという人も少なくありません。ただし、それは屋外に限っての話です。


その便利さからアウトドアシーンでもカセットボンベが活躍する場が増えてきました。確かにカセットこんろ、カセットボンベのおかげで気軽にお鍋や寝起きのコーヒーなどがアウトドアでも楽しめるようになりました。

しかし、カセットボンベの事故も増えています。

使いやすいために何をしても安全だと思い込み、ホワイトガソリンなどより気軽に扱っているのが大きな原因かもしれません。

正しく使ってこその便利なカセットボンベです。禁止事項を確認しておきましょう。
  • こんろに指定されているボンベを使用すること。指定以外のボンベを使用するとガス漏れなどの原因になります。
  • 高温になるBBQ台などの近くで利用しない。他の熱源のそばに置くとボンベが過熱して爆発の可能性があります。
  • カセットボンベを40度以上になる車内などに置かない。夏季のキャンプ場、車内は想像以上の高温になります。そんなときにボンベを車内に置き忘れていたら大惨事になりかねません。
  • ボンベの経年劣化に注意。ボンベをキャンプ時にしか使わないという人はとくに注意。久々のキャンプとなれば、ボンベが経年劣化している可能性があります。カセットこんろ、ボンベには製造年月が記されています。カセットこんろなら10年以内が目安。ボンベは古いものは避けてください。
  • 炭の火おこしに使わない。キャンプ場でときどき見かけるのが、カセットこんろの上に炭を置いて火おこしをするケースです。ボンベが過熱して爆発のおそれがあります。
  • 大きすぎる調理器具を使わない。こんろに対して大きすぎる調理器具や鉄板などを載せると、熱がこもりやすくなりボンベが過熱されてしまいます。ボンベの過熱は厳禁事項。注意が必要です。


テント内や車内泊での事故と同様、アウトドア事故の原因となるのが河川の増水でしょう。

編集室のボスがかつてアウトドア雑誌の編集長をしていたときに、河川の増水で中洲に大人数が残され、死亡事故につながったことがありました。そのときにもボスはラジオで警鐘を鳴らしています。

鬼怒川の水害でもわかるとおり、キャンプ場では小雨でも源流では大雨というケースは少なくありません。つまり、増水の場合は「自分のいる場所の雨量はたいしたことないから…」は安全に繋がらないのです。

また、ダムなどの決壊を防ぐために放水する場合もあります。放水のときはサイレンで警告を出すのが一般的ですが、雨が続くような場合、あるいは予想外の雨量だった場合はサイレンやその地域の注意報、管理人さんのアドバイスを尊重して、安全な場所に早めに移動してください。
仲間うちの勝手な判断で中洲や河原から出ずに災害に遭うことは絶対に避けなくてはいけません。「ほかの地域に大雨注意報が出ているが、BBQをしているこの場所は曇りだから大丈夫」という目先の判断がもっとも危険です。

なお、河川が増水したときに、どこまで水位があがるかという目安になるものがあります。それには沿岸の木々をよく見ることです。川面の上、5mくらいのところに位置する枝にゴミやビニール袋がかかっている場合があります。それらのゴミは増水したときに、枝に引っかかった可能性が大。つまり、その高さまで増水する可能性が常にあるわけです。

たとえ晴れていても、川原でキャンプや遊ぶときは、水位が高くなった場合の位置を確認して、自分たちがどの位置にいるかを認識しておきたいものです。


都会であれば避雷針のあるビル内に避難するのが安全。しかし、キャンプ場やアウトドアではどうしたらいいのでしょう。 

第一に安全な場所は管理棟などの「壁」がある建物です。雷の電流は“表面を伝う”習性があるので、壁のある建物は壁の外を伝って放電されるために内側は安全です。注意点としては、壁や天井、アンテナケーブルなどから1m離れること。 

次に安全なのはクルマの中でしょう。電流の習性から雷が落ちてもボディを通って地面に流れていくので車内は比較的安全です。

それでは管理棟やクルマもない場合はどうすればいいでしょう。まずは釣竿や虫とり網などの長いものを身から離すこと。

次に周囲を見渡して4~5m以上の高さがある木を見つけることです。低木はその木に落雷したときに、かえって危険になるので避けてください。

さて、高い木を見つけたら、そのてっぺんから45度のラインを空中にイメージし、そのライン上の地面で低姿勢をとること。つまり、幹から3m以上離れた幹を中心にしたドーナツ状のエリアが危険を回避できる位置なのです。 

記憶に新しい荒川河川敷の落雷事故でも、雨を除けるために落雷した木の真下にいた人は亡くなり、その周囲にいた人は軽傷ですんでいます。幹からのわずかな距離の違いが命運を分けた例といえるでしょう。 

また、雷がまだ遠くにいる、あるいは通り過ぎたと思っても落雷事故になったケースがあります。ゴロゴロの音が聞こえたり、稲光がしたら細心の注意を払ってください。


ペットOKのキャンプ場が当たり前になりました。リードで繋ぐなどのマナーも飼い主のあいだで徹底したこともあり、ペットトラブルは少なくなっています。

たとえば公園などでペットと遭遇したときに、比較的ペットはおとなしいものです。それは、飼い主と共に「外にいる」という意識がペット側にもあるからではないでしょうか。

ただし、キャンプ場となるとそうとは限りません。稀なケースかもしれませんが、取材時にペットに子どもが噛まれるという事故がありました。大ケガにはなりませんでしたが、噛まれた子どもは相当ショックを受けていました。

このとき、ペットはきちんとリードで繋がれ、飼い主のサイト内にいました。しかし、子どものほうがトイレに行くために、ペットのいるサイトを無断で横切ろうとしたのです。

きっと“縄張り意識”がペットにあったのだと予測されます。番犬と同様に勝手に敷地内に入ってきたよそ者に警告を発したのでしょう。

また、ペットは犬や猫ばかりとは限りません。これもまたキャンプ場で目撃した事故ですが、フェレットに噛まれるということが起きました。

小さなお子さんには気軽にペットに手を出さない、ほかの人の区画に立ち入らないなどを徹底指導したいものです。


キャンプは子どもたちが“お手伝いしたいこと”がたくさんあります。

たとえば、BBQの下準備である食料のカットもしたければ、ナタで薪を割る作業もしてみたい。

これらも貴重な経験ですから手伝わせたいのも親心。だからこそ、包丁やナタの使い方の基本をしっかり教えないと事故につながります。

包丁についてはお母さんはご存知でしょうからここでは省きます。

では、ナタの使い方はどうすればいいのでしょう。

キャンプ場でのナタの用途はほとんどが薪割りでしょう。まずは薪を持つほうの手は“手袋をする”のが鉄則です。丈夫な革製手袋や軍手を2枚重ねにして、手元がもしも狂っても軽傷ですむ配慮が大事です。

一方、ナタを持つ手は素手が鉄則。とくに軍手は滑りやすく危険です。また、不必要に振りかぶらずに小さくナタを降ろすなどの基本的な姿勢も教えましょう。勢いをつけて振り降ろして空振りをしてスネに大ケガをしたという例もあります。

子どもが安全にナタが使える年齢かどうか、その力があるかどうかをきちんと判断し、見本を見せてから正しい使い方を教えてあげてください。


編集室では以前、田舎暮らしを始めた人の取材をして某大新聞系に連載記事を執筆していました。

希望をもって畑仕事に挑んだ人たちにお会いしましたが、みなさんが共通して苦労していたのは野菜作りそのものよりも動物対策でした。それぞれの土地には専業農家の方がいて、野菜作りなら親切に教えてくれます。しかし、動物対策となると自分で行わなければならないケースがほとんどなのです。

動物といっても多種が棲んでおり、鹿や猪、タヌキ、ハクビシンや野ウサギなど農家の天敵は数知れません。近年では自然環境の破壊により大型動物も平気で農業地域までおりてきます。

ロープを張る、風が吹けば音が出る装置を取り付ける、大きなカカシを作るなどさまざまな努力を施していますが、その効果はそれほどでもなく、「電気柵」に頼る農家が増えています。

郊外型のキャンプ場は近隣に農家があるケースも珍しくありません。また、その農家が電気柵を設置している可能性も十分に考えられます。

電気柵による感電という事故もありましたが、本来電気柵は「心理的効果を狙った柵」です。電線に触ると電気が動物の体内を通り、地面に流されます。そのために動物には電気ショックの痛みと強い精神的ショックによって「柵に近寄らなくなる」という効果が期待できるのです。

また、高電圧ですが低電流なので人が触れても命の危険はありません。とはいえ、それに触らないのがいちばんです。

郊外型のキャンプ場にでかけて散策するときは、むやみに農家の畑に入らないようにしてください。

電気に関連すれば大空高く舞い上がるスカイカイトなどを高圧線(郊外や山間部にも案外多く設置されています)のそばで行わないことです。


とても嫌な見出しで申し訳ありません。

しかし、筆者は身近に毒を感じた経験があります。それはアウトドアの達人と言われる人と旅したときでした。達人が採集してきたキノコをバターソテーで食べたのです。その後、猛烈な嘔吐に下痢、悪寒におそわれる羽目になりました。その正体はニガクリタケ。ナメコやクリタケとよく似た毒キノコで、アウトドアの達人さえ間違えたのでした。

専門書によると日本には5000近くのキノコの種類があり、そのうち食べられるものが約300種。毒性が高いものが約50種だそうです。キノコ狩りの専門家でないと見分けが付かないような毒キノコもあります。素人のキノコ狩りほど危険なものはありません。

さらに、毒性の強いトリカブト、赤いかわいい実のなるドクウツギ、セリの若葉と間違いやすいドクゼリなどの毒をもつ植物もたくさん存在します。日常目にするヒガンバナやスズランにも毒性があるのをご存知でしたか?

キノコや野草をむやみに口にするのはご法度です。「野草を食べて育った」などのエピソードを持つ有名人がいますが、知識もないのに真似をしないでください。

土や枯草と同じ保護色を有するマムシ、生息地が多いヤマカガシ、沖縄などのハブといった毒蛇も野山にいます。頻繁に起こる事故は、マムシとわからずに踏んでしまって噛まれるというものです。野山などを歩くときはサンダルを控え、ウォーキングシューズなどの蛇の牙を通しにくい靴を履くのが蛇対策になります。

ハチもまた危険な存在です。ハチは黒などの濃い色に反応する傾向があります。遭遇した場合は頭を低くして、直線的に逃げましょう。事前のハチ対策としては甘い匂いのする香水を避ける、フタができないジュース缶を開けたまま持たない(匂い防止のため)などがあげられます。

もしも刺された場合は医療機関に行くことが肝要ですが、緊急措置としては、①すぐに巣のあるエリアから離れる、②ハチ毒は水に溶けやすいために傷口を水で流す、③傷口周辺をつまんで毒液を絞り出して水に流す、④ステロイド軟こうなどを塗る、⑤タオルなどで冷やして安静にする、といった対処を施してください。

野山だけでなく海にもウミケムシ、オニダルマオコゼ、ミノカサゴといった毒をもつ生物がいます。海のキャンプ場に行く際は事前に危険生物を調べておくといいでしょう。

これらの動植物に神経質になって、こわごわキャンプをする必要はありませんが、毒性のある生物の知識をもつことに損はありません。

危険を知れば回避もできます。確かな知識を身に着けて、より以上に楽しいキャンプ・ライフを続けたいものです!

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●オートキャンプの情報ならこちらへ
社団法人 日本オートキャンプ協会
http://www.autocamp.or.jp/
< PROFILE >
浜口昭宏
雑誌やWEB編集を始めて数年の編集者。超がつくほどのアウトドア初心者だったが、猛勉強をしてそれなりに成長。アウトドアの中で大好きなシチュエーションは、ビールがおいしいBBQ。
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