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神戸…。異国情緒ある女性たちに人気の旅先です。港地区が整備され、新しい人気スポットも生まれています。港のそばの繁華街・三ノ宮地区には生田神社があり、高台の北野の異人館街には北野天満神社があります。それらは地元の人に親しまれている「パワースポット」でした。

三ノ宮の繁華街にあった割烹。名前はあえて掲載しません


生田神社の楼門と社殿、出勤前に参拝する人も


境内を一歩出ると三ノ宮の繁華街


神戸に住む友人から「ぜひ、いらっしゃいよ。おいしいものをごちそうするから……」と、以前よりお誘いを受けていました。

地方を取材するケースは多いのですが、大阪や神戸、名古屋などの大都市を取材する機会は少ないものです。それは、それらの土地には情報ツウのライターさんがたくさん住んでいるから。東京から数日訪れただけでは、なかなか深い取材はできません。

そのために友人の誘いに首をタテに触れない日が続いていました(ま、遊びで行けばいいのですけれど)。

それでも先日、久しぶりに神戸を訪れました。5年ぶりのことです。

5年前は街の散策というよりも、海外から寄港したクルーズ船を見学するのが目的でした。

瀬戸内海の“多島美”は外国の人々にも人気で、わざわざ瀬戸内海航路を通るクルーズ船もあります。

神戸に立ち寄ったとき、クルーズ船のお客は神戸や大阪、京都に観光に行くから日中の船はガラガラになります。それを利用して日本人にクルーズのPR活動を行うのです。

船内を見学させ、船内レストランで豪華なフルコースを体験させる…招待するのは旅雑誌の編集者や記者、旅行代理店などですから、それなりの宣伝効果が期待できるというわけです。

そんなわけで5年前の神戸は飛行機で往復、1泊はしたもののほとんどをクルーズ見学に終わりました。

今回は違います。友人の誘いどおり、夕方に新神戸駅に着きました。新神戸駅からは友人が推薦したホテルまで歩き、荷物を置いて待機。仕事帰りに立ち寄ってくれた友人を待って三ノ宮方向に歩きます。

平日の夜なのに、三ノ宮の周辺の飲食街は賑わっていました。

友人に連れられてノレンをくぐったのは、路地を入った雑居ビルの中にある和風割烹。旅人では絶対に発見できません。

白木のL字型カウンターとテーブル席が少々。カウンターのお隣は、いかにも神戸マダムの4名でした。

カニを使った和のお料理や「ウニのガーリックトースト」などの独創的なメニューがとてもおいしくて。和洋がうまく折衷されているのは神戸らしさかもしれません。

話が進むうちに三ノ宮の近辺の人は生田神社をまめに参拝するという話になりました。本殿の後ろは生田の森になっていて、繁華街に近い場所とは思えないそうなのです。

こんな話を友人としていると、「願いが叶う鯉もいますよ」と、お隣のマダム。そこもまた神戸の人たちの愛するパワースポットだったのです。

北野天満神社境内より風見鶏の舘を眺めて


かない鯉は堂々たる姿をしていました


ビル内割烹、DJがオールディーズを流してくれる素敵なBAR、スポーツBARとハシゴして友人と別れました。

短い時間でしたが神戸の夜を堪能できた満足感から、いつしか深い眠りに。よほど熟睡したのでしょう。翌朝は気分すっきりと目覚めました。

すると、生田神社と願いが叶う鯉を訪ねてみたくなりました。友人からビル割烹のすぐそばだと聞いていたので、朝散歩のついでに三ノ宮を歩きます。

創建は神功皇后(じんぐうこうごう)元年(201年)と日本書記に記載され、稚日女尊(わかひるめのみこと)を祀る生田神社はすぐにわかりました。昨晩訪れたビル割烹がある繁華街に隣接していたのです。

参拝するよりも、しばらく生田神社の前で行き交う人々を眺めていました。たくさんのビジネスマン、OLさんが境内を横切るのを通勤路にしているようです。しかし、通り過ぎるだけではありません。頭を下げてお辞儀をする人、通勤途中に参拝をきちんとしていく人ばかりです。

友人も神社の後ろの森を通って通勤しており、神聖な気持ちになると言っていましたが、朱色の本殿と都会のなかにある鎮守の杜を見ていると、その気持ちが理解できます。

生田神社は地元の人に縁結び、恋愛成就のご利益があると慕われています。

もうひとつのパワースポット、「かない鯉」は三ノ宮から坂をあがった山手にあります。そう、周囲は人気のスポット北野異人館街です。三ノ宮から北野坂を歩いて丘の上をめざします。

北野異人館街には風情ある異人館とそれを利用したレストラン、小さな美術館、ショップなどが点在していますが、もっとも人気があるのは北野観光案内所のすぐ上に立つ「風見鶏の舘」でしょう。

風見鶏の舘は明治42年(1910年)にドイツ人貿易商ゴッドフリート・トーマスが自邸として建造したレンガの外壁の一軒家です。レンガの外壁としては唯一の存在で、その屋根にいる風見鶏が北野のシンボルにもなっています。

訪れたときもカメラを片手にした日本の各地あるいは中国や台湾から来た観光客が大勢いました。

そのお隣にかない鯉がいる北野天満神社がありました。

ハート型の絵馬には外国語も多く


水をかけると文字が浮き出る不思議なおみくじ


都・神戸の平穏を願った由緒ある神社です


天満神社の名称でわかるとおり、北野天満神社も学問の神様で親しまれている菅原道真を祀っています。

平清盛が京都から神戸に都を移した治承4年(1180年)、新しい都の平安を願って京都北野天満宮から勧請して祀られたという歴史があります。それだけに北野地域でも一段高い一角にある天満神社からは神戸の街と港が一望できます。この地より神戸全体を見守ってほしいという平清盛の願いが感じられるのです。

いつしか神社の周囲には異人が暮らし、日本の伝統的家屋とは異なる屋敷が建てられました。それでも、寛保2年(1724年)に建立された現在の拝殿は、姿を変えることはありませんでした。

風見鶏の舘の横にある鳥居を抜けると、長く細い石段の参道があります。それを登りきった右手に「かない鯉」がありました。

本来は手水でしたが、人々がここで手を合わせるうちに鯉に水をかけて祈願すると願いが叶うという言い伝えが広まり、いまに至っています。

とくに恋愛のご利益が囁かれ、「鯉にかける」→「恋にかける」といった所以です。

かない鯉の横にはハートマーク入りの絵馬がたくさん掲げられていました。さすが神戸、そこには英語やハングル、中国語も…。

また、かない鯉ではおもしろいおみくじも見つけました。水をかければ文字が浮かぶというものです。

鯉に水をかけ、おみくじに水をかけ、浮かんだ文字に一喜一憂する。

やはり、「水をかける」という行為がここでは肝心です。

これまで神戸といえば港と異人館街の印象が強い場所でした。しかし、今回の旅で神社への信仰や、異人館街の中に歴史があり、恋愛パワースポットとして人気の神社があることを知りました。

異国情緒のある神戸へ。ぜひ、でかけてみませんか?

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●生田神社
http://www.ikutajinja.or.jp/

●神戸 北野異人館街
http://www.kobeijinkan.com/

●神戸 北野天満神社
http://kobe-kitano.net/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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