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仏教はキリスト教、イスラム教とともに世界三大宗教のひとつであり、お釈迦さまの説いた教えがインドから中国、日本などを中心に広まりました。そして、「仏舎利(ぶっしゃり)」はお釈迦さまの遺骨を指します。それが祀られているお寺は正真正銘のパワースポットです。

法門寺入口から新設の御殿を見る


2km以上続く新御殿までの道には仏像も多い


法門寺の元々の姿。新参道の横に位置する


日本への仏教伝来は500年代のことです。その後、仏教は日本に根づき始め、600年から614年にかけて聖徳太子が中国隋の時代に遣隋使を派遣しています。

607年の使節は小野妹子(おののいもこ)ですから、「あ、昔勉強した」という人も多いでしょう。

さらに中国唐時代には遣唐使が7~9世紀に十数回も派遣されています。

当時、中国西部はシルクロードの開通により隆盛を極めていました。長安(現在の西安)を東の起点とするシルクロードは、絹を輸送する道としての役割だけを担ったわけではありません。

西側の産物(たとえばトマト、ブドウ、ガラス製品)などがシルクロードを通って東側に入り、さらに仏教をはじめとする宗教、文化も数多く中国に流れてきています。

隋、唐の都であった長安には多くのお寺が建立され、遣隋使や遣唐使も修業に励みました。

遣唐使として派遣されて修業した弘法大師空海や、執念をもって日本の地を踏んだ長安の高僧・鑑真たちが仏教経典や西洋の文化、食を日本に伝えています。

菅原道真の提案で遣唐使は廃止されましたが、その後も中国に渡る修行僧はいて、数多くのシルクロード経由で中国の生活の一部になったものを持ち帰っています。

福岡県博多に承天寺というお寺があります。ここは「饂飩蕎麦発祥の地」です。開山の祖・聖一国師が1235年に中国に渡り、仏教修業した後に、うどんやそば、羊羹、饅頭を持ち帰ったのがその根拠となっています。

このように、遣隋使や遣唐使が建立したお寺や日本に持ち帰って広めた文化は計り知れません。

そして、それらが今でもパワースポットとして信頼され、かつまた生活の中に溶け込んでいるのです。

なぜ、こんな話から始めたのかといえば、おでかけマガジン編集室のスタッフが、つい最近、シルクロードを取材したからです。

帰国後に「仏舎利」の話を聞きました。仏舎利とはお釈迦さまの遺骨です。それを祀るお寺を取材してきたと彼は言うのです。まさに、究極のパワースポットかもしれません。

そこで、今回は仏舎利のお話を少々というわけです。

境内博物館に残された仏像


博物館に展示された仏舎利が入った化粧箱


西欧から伝わったガラス製品も


編集室スタッフが仏舎利の保存されているお寺を訪ねました。

このお寺を法門寺と呼びます。西安(古都長安)中心部から約150km離れた郊外にあるお寺。創建は漢の時代で唐の時代には皇族寺院として発展しました。

そこに仏舎利が残っているというのです。

このお寺にも中国の大きなお寺にある碑塔があります。多くの場合、碑塔の下には宮殿があり、経典や貴重な物品の類が寺の宝として保存されています。

法門寺の碑塔が老朽化のために崩壊したのは1981年のことでした。

それから調査が始まり、やがてシルクロードを経由して伝わったガラス製品や仏像、金銀、宝石が発見されました。

そのなかに、黄金の不思議な宝箱がありました。箱の中に箱があり、また箱がありと厳重な構造になっています。そして、最後の小さな箱から骨が出てきました。

さらに調査を進めると、4種あった宝箱の中のうち、3つは盗難防止のためのダミーで、もっとも小さな1種から出てきたのが仏舎利だと確認されました。

「仏舎利がある」とするお寺は世界にいくつもあります。それもそのはずで、お釈迦さまが亡くなったときに仏舎利をめぐって闘争が起き、論争の末に仏舎利は8等分されて釈迦入滅の地クシナガラの周辺の10カ所の寺院に埋葬されています。

それから200年後にインド統一を果たしたアショーカ王は7カ所の仏舎利を発掘して小分けし、最終的に8万余カ所の寺院に再配布したと伝わっているのです。

しかし、「仏舎利がこれです」という寺院は現れていないのが実態でした。ところが、法門寺は残された文献などにより、仏舎利を保管していたことを証明したのです。

「碑塔はあるものの、法門寺は元々小さな郊外のお寺だった。でも、由緒があったので仏舎利が伝わった。そして、その仏舎利は何年かに一度、まるで大名行列のようにして長安の宮殿に運ばれ、唐の皇帝が祈ったらしい。ものすごいパワーだったのだろうね。 現在は仏舎利があるお寺として大発展し、入口から新しくできた殿まで徒歩で30分以上かかるほどだよ」と、取材したスタッフが教えてくれました。

創造を絶する大きさの法門寺新御殿


名古屋に建立された覚王山日泰寺(ホームページより)


「日本で唯一のいずれもの宗派に属さない寺院」として知る人ぞ知るお寺が愛知県名古屋市千種区にある覚王山日泰寺です。

なぜどの宗派にも属していないのでしょう。そこに、仏舎利の秘密があるのです。

覚王山日泰寺はタイ国との関係が深く、1987年に完成したタイの国王の立像などがあります。

実は1898年にイギリス人のインド駐在官が人骨を納めた蝋石のツボを発見し、側面の古代文字を解読したところ、釈迦の骨を分骨したツボのひとつであることが判明します。

その後、熱心な仏教徒がいるタイ国の王室にもお釈迦さまの遺骨を寄贈。そして時のタイ国王はその一部をセイロン(スリランカ)やビルマ(ミャンマー)にも分与します。

そのときタイ国弁理公使であった稲垣満次郎氏がタイ国国王に嘆願して「日本の国民への贈り物」として一部が贈呈されることに決まりました。

それを機に仏教各宗派が協議し、宗派に属さない寺院として覚王山日泰寺を建立、ここに保存することとなったのです。

仏舎利が授けられた法門寺とは異なりますが、それでもお釈迦さまの遺骨が納骨されている日本のお寺。ほかに例のないパワースポットといえるでしょう。

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< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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