ゴルフに大浴場はつきものだが、ごくたまに本物の温泉を導入しているゴルフ場がある。栃木県のロペ倶楽部もそのひとつ。源泉かけ流しの露天風呂だけではない魅力が、このゴルフ場にはあった。
ロペ倶楽部(ジュン源泉)
所在地:栃木県塩谷郡塩谷町大字大久保字大沢1867番2
●泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
●源泉温度:45.3度
●pH:8.6
●湧出量:不明
TEL:0287-46-1122
所在地:栃木県塩谷郡塩谷町大字大久保字大沢1867番2
●泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
●源泉温度:45.3度
●pH:8.6
●湧出量:不明
TEL:0287-46-1122
車寄せの「長屋門」。この和風っぷりはどう見ても高級旅館でしょう
料理はボリューミー。那須鶏の唐揚げ600円、海鮮サラダ800円、大那純米吟醸4合2900円となかなか良心的な価格
入浴しがいのある源泉かけ流しの露天風呂。無色透明だが、ほんのりと硫化水素臭がある
内湯の真ん中にどーんとテレビが鎮座。これはこれでなかなかインパクトがある
12番パー5、530ヤード。コース監修はジーン・サラゼン。雄大で攻めごたえがある
ホテル棟は208室。1泊1名(朝食付き)3990円~。1Rプレー1万2660円~
今回は温泉好きな人でもあまり行ったことがないであろう、穴場の温泉を紹介してみたい。
平日の仕事を終え、そそくさと用意してクルマで向かったのは那須方面。
都心からは東北自動車道を利用して約150㎞の道のり。
宇都宮を過ぎ、矢板ICで高速を下りて約7㎞、走ること15分。目的地のロペ倶楽部に到着した。
車寄せの門構えには「長屋門」という名がついており、まさしく高級旅館のよう。
“よう”というのは、ここは単なる旅館ではないからだ。
ロペ倶楽部は、ジュンクラシックカントリークラブの姉妹コースとして、1990年に誕生したゴルフ場だ。
1977年から99年まで、このふたつのゴルフ場で合計23回のツアートーナメントが開催されていた。ゴルフファンならピンとくる人もいるかもしれない。
現在はお泊りゴルフの王道として、シーズン中は多くのゴルファーが訪れる人気のスポットになっている。
到着したのは21時をまわった頃。
ゴルフ場に併設した宿泊施設というと、単に泊まるだけの施設がぽつんとあって、チェックインしたら部屋で寝るだけといったスタイルが多い。21時では夕食すらとることができない。
だが、長屋門をくぐり、ライトアップされた石畳のエントランスを抜けたフロント付近には、スタッフや宿泊客の気配が色濃く漂っていた。
荷物をいったんホテル棟の部屋に置いてから、再びクラブハウスに戻ってレストランをのぞいてみた。
入口に日本酒の酒樽が積まれていて、外国人受けしそうな和風スタイルのインテリア。提灯がアクセントになっている。
テーブルもけっこう埋まっていて、宿泊客が多いのがわかる。
びっくりしたのは営業時間。閉店は24時で、23時がラストオーダー。これならいまからでも十分にゆっくり飲むことができる。
ビールでのどを潤すと、すっかり調子に乗り、地酒の「大那」4合瓶を注文してしまった。
和風レストランと同様、大浴場も深夜24時まで入れるということなので、こちらも足を運んでみることにした。
内湯はゴルフ場らしく広々としていて、サウナや水風呂もある。
露天風呂へと続くドアを開けると、石組みの豪快な浴槽に、木々の緑が覆いかぶさるように迫っていた。
お湯が浴槽からあふれ、足元の敷石を濡らしている。
立て看板には、<当温泉は、ロペ倶楽部一二番ホール西方(―住所略―)の山林を一〇五〇米掘ったところ自噴しました。この地は那須火山帯に近く、以前より湯ノ沢という湧水が流れている所でもあり、掘れば温泉が出るという話が伝わっておりした。自噴した温泉は四十五度で、加熱することなく利用しております。>とある。
湯ノ沢という地名からして、かつて温泉が自然湧出していたことをほのめかしている。
肩まで湯につかると、ここが本当に温泉であることが、肌ざわりや匂いから伝わってきた。
これはいい。
ほんのりと硫化水素臭、いわゆる硫黄臭がする(硫黄は無臭のため、一般的に言われている“硫黄の匂い”は硫化水素なのだ。念のため)。
まさかゴルフ場で、こんな深夜に、本格的な源泉かけ流しが楽しめるとは思っていなかった。
翌朝、改めてフロントで話を聞くと、ゴルフ場を作るときから、温泉が出るであろうことはわかっていたのだという。
オープンして間もなく掘削し、泉源を掘り当てた。
あふれる湯から推測するに、湯量はかなりのものと思われるが、残念ながらわからずじまい。
もちろん加熱・循環はしていないのだが、若干温度が高いために加水して温度を調整しているという。
昨日の和風レストランはバイキング朝食会場に変わっていて、7時前から営業を開始していた。
ふと気がついたのは、このゴルフ場、朝食だけでなく、ランチやスタートハウス、茶屋などにソフトドリンクのスペースがあって、いつでもどこでもフリードリンクになっている。
茶屋では春、秋はところてん、夏はかき氷が無料、風呂上りには木桶のなかに氷で冷やしたヤクルトがあって、これも無料。
ラウンドが終わって再び温泉に向かうと、シューズクリーニングの専門スタッフがスタンバイしていて、風呂から上がる頃にはタダでピカピカに磨いてくれている。
ちなみにロペには5ホールのミニコースとアプローチ練習場があり、こちらも無料で使用することができる。
ありそうでなかった無料攻勢にしばし唖然。
1泊5万円の高級旅館なら、エスプレッソマシンやミニバーのシャンパン無料というサービスがあるのは知っているけれども、低価格帯でここまでやっている宿はあったかどうか……。
いろいろ感心&考えさせられる、ゴルフ&温泉の旅なのだった。
東北自動車道・矢板ICからは県道7号線経由で約7㎞、15分。東北自動車道・上河内スマートICからは県道63号線経由で約12㎞、20分。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。