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地球温暖化の影響もあるのでしょうか、春が過ぎると一気に気温があがります。“涼”を求める方法はエアコンだけではありません。例えば「打ち水」や、「納涼床」「川床」は伝統的な涼空間を作りだすための知恵。水の上は涼しくて気持ちいいのです!

ロングボードのゆったり感がいい


納涼に最適な筏での川を下り


アウトドア雑誌の編集や執筆に関わっていたので、これまでにたくさんの“水に浮かぶもの”に乗ってきた。シーカヤック、カヌー、ラフティング、パドルボード…。

これらは現在、日本の渓流や美しい海で盛んに行われるようになった。ガイドや指導者がいて、体験教室なども熱心に開催されている。

春が過ぎて暑くなると、どうしても涼を求めたくなるものだ。

日本には素晴らしい伝統があり、たとえば玄関先への打ち水は来客への心遣いの一つだというが、その水が涼しさを与えてくれる。地球温暖化に際し、ヒートアイランド対策として、打ち水が推奨されているのも理解できるだろう。

また、京都や大阪の風物詩である「川床(地域によってかわゆか、かわどこ)」は、料理店や茶屋が川の上や川の見える場所に座敷を作り、料理などを提供する。

これもまた、なんとも涼しげであり、エアコンがない明治時代以前から存在したというのに納得できる。

当たり前だが水の上は暑い時期にふさわしい涼しい場所なのだ。レジャーだって水の上で過ごすのがいいに決まっている。

僕の生まれて初めての水の上体験は、信州・白樺湖での手漕ぎボートだったのではないかと記憶している。いや、記憶外では証拠写真があるから、百貨店の屋上にあったぐるぐる回る、コイン式お子様用ボートだったかもしれない。

しかし、自身の意思によって水の上に浮いたのは湘南海岸でのサーフィンだ。

当時はまだサーフィンブームとは言い難い。それでも、メンズ雑誌がサーファースタイルを取り上げはじめ、僕は渋谷のライトニングボルトの店舗に走り、ポロシャツやサーフパンツ、サンダルを買い求めた。

そして、休日に湘南にでかけた。中学時代からスキーをしていたから、サーフィンにも比較的すぐに馴染んだ。

ただし、長い距離を、しかもコブ斜面や深雪を存分に滑れるスキーと違い、湘南の小さな波では乗れる時間が限られる。やがて、サーフィンへの関心はなくなってしまった。

それから随分経ってアウトドアに関わると、さまざまなアウトドアスポーツに挑み、水の上に冒険に出る機会も増えた。

ハワイ・カウアイ島のナ・パリコーストを、8時間かけてシーカヤックで横断するという冒険も行った。でも、今ではのんびりとした“川床スタイル”ともいうべき方法が気に入っている(歳のせいか?)。

それが筏(いかだ)であり、ガイドのいるカヌーなのだ。

ホアヒンの海床レストラン


本格的に暑くなる前に、わざわざ暑い国にでかけて“水の上”体験をしてきた。

タイは水上文化が確立している。大きな河川や島のまわりの浅瀬に水上ハウスが並び、それが店舗やレストランになっているケースも珍しくない。

バンコクからクルマで南に3時間半ほど走ったホアヒンは、海上レストランが並んでいる。まるで日本の川床ならぬ、「海床」だ。

そこで、トムヤンクンやタイカレー、シーフードを食し、タイ産のビールを飲む。

これで1人1000円ぐらいというのもタイの素晴らしいところだ。

近ごろは日本人観光客が減少しているというが、タイの一大観光地プーケットも水に浮かぶアクティビティが充実している。

そのひとつに、竹製の筏に乗ってから象にも乗ってしまうというものがあった。

同じ川の流れが激しいところでは、ラフティングを行っている。スリルのあるゴムボートによるラフティング、群馬・水上、栃木・鬼怒川、長野・天竜川、京都・保津川、北海道・ニセコなどの日本各地でも行っており、検索すれば気軽におでかけできるラフティングポイントが見つかるだろう。

ラフティング体験も悪くはない。が、僕はスリルを味わうより、ゆったりのんびりと過ごしたかったから、筏を選んだ。

日本ではまだまだ珍しい観光筏だが、「全国唯一」と銘打って、和歌山県の北山村で行われている。

ただし、写真を見ると全員がライフジャケットを着用し、立って筏を操作しているから、けっこうハードなのかもしれない。

しかし、プーケットの筏下りは、操作は筏ボーイに任せて、のん気に座っているだけ。なんとも涼しく気持ちいいのだった。



【素人動画ですが1】
竹筏下り。途中で一瞬、象が鳴きます!? ちょっと涼しくなりませんか?


パンガー湾のカヌー


海に浮かぶ島とは思えない空間をカヌーで行く


シーカヤックやカヌーも日本のアウトドアシーンで盛んになってきた。海の上を行くのは気持ちいいものだ。

シーカヤックなどの体験教室を実施しているところも多いので、これもまた興味があればぜひ体験してみてほしい。

で、竹筏に揺られた翌日は、カヌーに揺られたのだった。

タイの南部は海に囲まれているが、プーケットとタイ南部のマレー半島に囲まれた海域はパンガー湾と呼ばれ、世界有数の多島美を誇る。これまでにも映画のロケ地として盛んに登場しているし、多くの島のうちのいくつかをボートで巡る1日ツアーも人気だ。

このツアーに参加したのだった。プーケット島の港を出航し、5つの島を巡って帰ってくる。

多数ある島は個性的だ。ある島にはビーチがあり、ある島は波で削られた断崖絶壁や鍾乳洞があり、ある島はマングローブが広がる。

そういった個性の異なる島を巡るのだ。

島の個性が異なるから、プーケットの港から乗った、ランチビュッフェも食べられる船だと、小さな島には行けない。そこで、ツアー途中でカヌーに乗ったり、小型の細長い船に乗り換える。

すべてが印象的なのだが、とくに気に入ったのがカヌー搭乗だった。筏と同様に、カヌーボーイ(ゲイの方だったけど…)がパドルを操ってくれるから、これもまた乗っているだけでいい。

それで奇岩に寄ったり、鍾乳洞の中を行ったり、わずかに進むだけで景色がまったく異なるから愉快になる。

カヌーボーイも「エレファント」「ピラニアの口」などと波風によって削られて完成した奇岩をガイドしてくれる。

なんとも幸せな浮遊だった。

これから暑くなる。水の上に浮いて過ごす時間は爽快で楽しい。

前述したが、日本にもさまざまなカヌーやラフティングの施設があるので、この夏はぜひ体験してみてはいかがだろう。



パンガー湾で撮影した写真を「壁紙プレゼント」として、「写真術」のコンテンツ内に提供しました。

そちらもぜひご覧ください。


【素人動画ですが2】
パンガー湾のカヌー


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< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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