1. Smart Accessトップ
  2. おでかけマガジン(+バックナンバー)
  3. 恐る恐る“地獄”を覗いてみる【千葉・鋸山 日本寺(のこぎりやま にほんじ)】
「Smart Access」おでかけマガジン 毎月2回、「Smart Access」会員のみなさまへ、旬のドライブ&スポット情報をお届けします。
トップページへ戻る


東京湾アクアラインや神奈川・久里浜港から東京湾フェリーを使ってアクセスできる鋸山日本寺は今から1300年前の創建。ギザギザの山肌が特徴で、東京湾に面するシンボルの一つでもある鋸山にある広大なお寺です。

地獄のぞきを見上げる


日本寺上部から見た東京湾


長い順番待ちが終わり、いよいよ先頭になりました。すでに、心臓が高鳴っているのがわかります。

石の上に突端へと続く短い足場。囲いが設置されているとはいえ、眼下に千葉県の広大な森と、東京湾が広がる高所。恐怖症の人には難しいでしょう。

足を一歩、一歩進めて突端まで下れば、真下に百尺観音の前にいる人たちが豆粒ほどに見えてきます。

これだけでも、十分に怖いのです。しかし、目に見えることだけが怖さの秘密ではありません。

行列に並ぶ前から岩場の突端のここが、宙に突き出た部分であるのを確認しています。つまり、岩場を支えるものがないのです。

もしも、もしも、突端部分が崩れたら…、そんな想いも怖さを増長します。

“地獄のぞき”は、鋸山日本寺の山頂エリアにある名所です。この奇妙な地形は自然にできたものではありません。

鋸山は凝灰岩でできており、その岩は建築資材に適していました。また、海岸線にあるために、船に積むのも容易でした。

そのために、幕末から昭和初期にかけて、横浜港、横須賀軍港や東京湾要塞の資材として大いに用いられたのです。

港湾施設だけでなく、鋸山の岩は靖国神社や早稲田大学にも使用されています。

自然保護規制によって採石が中止されたのは1982年ですから、35年前まで岩が削られ続けていたというわけです。

資材採石の歴史があるために山肌を露出し、遠目でギザギザに見える山は正式名称の乾坤山(けんこんざん)ではなく、いつしか“鋸山”と呼ばれるようになりました。

地獄のぞきの下の岩肌を見れば、採石の際に付けられた跡がはっきりとわかります。東京湾沿岸を整備するために、ここの岩は重宝されました。それによって名所も生まれたのです。


【おまけ動画】
地獄のぞきに挑戦


今から230年以上前に27人の門徒が掘った大仏


大仏エリアにあるお願い地蔵


東京湾を見下ろす鋸山の開山は約1300年前。聖武天皇の勅詔と、光明皇后の命を受けた行基菩薩によって725年6月8日に開山されたという記録が残っています。

開山当時は七堂十二院百坊を有し、国内でも有数の規模を誇りました。空海(弘法大師)、慈覚大師らが訪れたという書もあります。

とくに空海は100日間におよび護摩を焚き、大黒尊天(石像)を掘ったといいます。

1300年の長い時のなかで、戦火による荒廃と復興を繰り返しているのも鋸山日本寺です。昭和14年には登山者の過失による山火事によって、本堂や仏像を焼失しています。

この時も復興が計画されましたが、第二次世界大戦が開戦、鋸山は軍の要塞となってそれも叶わぬこととなりました。

しかし、今日では順調に復興事業が進みました。たとえば、鋸山中腹に彫刻された大仏は、江戸時代末期に風触によって頭部が崩れ落ちましたが、それもみごとに修復されています。本堂なども同様に修復が終わりました。

標高329.4mの鋸山山中に10万坪余りの土地を有する日本寺は、山麓部から上部に順に、“表参道エリア”“中腹エリア”“大仏広場”“羅漢エリア”“山頂エリア”の5つのエリアがあります。

表参道エリアは仁王門、観音堂、心字池があり、まさに山麓のゆったりした景色の中にあるエリアです。

中腹エリアまで行くと東京湾が徐々に見下ろせるようになります。ここには復元された薬師本殿があります。

開放的な空間が大仏広場です。1783年に27人の門徒によって3年をかけて彫刻された大仏もすっかり修復されました。また、“お願い地蔵”はそれぞれの願いが込められた小さなお地蔵さまが安置されています。

小さなお地蔵さまの背中に願いを書き、私も安置してきました。

羅漢エリアには百躰観音、聖徳太子像など、山頂エリアに百尺観音、地獄のぞきがあります。

ここまで来ると表参道エリアとは景色が一転、東京湾を見下ろし、房総の大地が望め、天気に恵まれれば富士山の雄姿も眺められます。

参拝はハイキングを楽しむ感覚で


山頂エリアの百尺観音像


日本寺を参拝していると、あることに気づきました。参拝者の服装がほかのお寺とは違うために、参拝というよりも高尾山などの山中にいるのと同じ雰囲気を醸し出しています。

トレッキングシューズやウォーキングシューズ。アウトドア用の歩きやすい服装。そう、ほとんどの人が野山を歩くスタイルで訪れているのです。

山麓から山頂付近までが境内の日本寺、ハイヒールや窮屈な革靴では歩くのもままなりません。

しかも、これからの季節は汗をかきます。クルマやロープウエイで山頂付近まで行けますが、それでも境内を巡ろうと思えば、勾配に設置された道を歩かなければなりません。

鋸山日本寺への参拝は、ハイキングルートを歩くと思ってでかけてください。

さて、鋸山日本寺参拝には、もうひとつの楽しみがあります。まずはアクセスの楽しみです。

東京湾アクアラインを越えて首都圏から行くのは、読者のみなさんもご存じのように爽快なドライブになります。

また、神奈川県の久里浜港から東京湾フェリーを使用して金谷港に渡るのも楽しいものです。

東京湾フェリーからは沖から見る東京湾沿岸が楽しめます。カモメとともに海を渡る約40分の小さな航海。船内には売店もあるので、ソフトクリームでも買って、それをなめながらの非日常の世界が体験できるのです。

到着する金谷港のすぐ後ろが鋸山です。

そして、金谷港のそばは海の幸の宝庫です。新鮮なお魚料理が味わえます。

さらに、日帰り温泉施設も周囲に数軒あります。

鋸山日本寺の散策で汗をかいた後は、温泉でそれを流す。夕方に行けば、夕日の中に浮かび上がる富士山が見えるかもしれません。

ハイキング参拝と房総のうまいもの、そして夕日が見える温泉…、パワースポットおでかけとして、充実した1日になるに違いありません。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●鋸山 日本寺
http://www.nihonji.jp/keidai/

●たび旅 富津
http://www.futtsu-kanko.info/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
  • スポット特集
  • B級グルメ特集
  • オートキャンプ特集
  • レジャー&リゾート特集
  • ロケ地特集
  • 絶景特集
  • 子供といっしょにお出かけ特集
  • 特産品・名産品特集
  • 温泉・スパ特集