春から夏、そして早秋を終えて、今年のキャンプ場もひと段落。そこで、今シーズンにキャンプ場で起きた小さな事件を集めてみました。些細なこともありますが、もしかしたら大きな事故につながったかもしれません。
静岡県の大型キャンプ場からの報告
キャンプ慣れしていない4人ファミリーがやってきました。装備はおなじみC社のテントにタープ。人気商品だけあり、テントサイトには同型で同色のテントがたくさん張ってありました。
キャンプ場に早く付いたファミリーは余裕で準備をして、場内の遊戯施設などで遊んでいました。やがて、小学校1年の男の子が、昨晩興奮して眠れなかったためか睡魔に襲われました。
下の女の子はもう少し遊んでから帰るということで、「もう小学生だから」と、先に男の子をサイトに帰しました。
15分後くらいにテントサイトに戻った時、男の子が見当たりません。トイレかと思って待っていましたが、全然帰ってきません。心配になった両親が管理棟に行って迷子の相談をし、探してもらいましたが以前として姿が見えません。森の中などで夜を過ごした少年のニュースも記憶に新しく、両親はパニックになっていきます。
それから1時間後。目をこすりながらお隣のテントから出てきたのが探していた男の子でした。
似たテントだったので、間違えたようです。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
比較的安全なキャンプ場とはいえ、自然の中にありますから、お子さんから目を離すと迷子になったり、水難に遭ったりする可能性があります。事実、目を離したために遭難するという事故が起きています。まずはお子さんから目を離さないことです。
次にキャンプ場には同じテントやタープが並ぶことが予想されます。まして、大型アウトドアスポーツ店で売られている人気商品だと、その可能性は高くなります。タープなどの横にバンダナで目印を付ける、サイトに「●●ファミリー」などのキャンプ用の表札を作るなどの目印を付けて区別化するといいでしょう。
山梨県のペットOKキャンプ場からの報告
ペットと一緒にキャンプができるキャンプ場です。ほとんどの常連さんは首輪をさせており、リードをしっかり繋いでいるので問題ありません。
しかし、なかにはリードや首輪の確認をしていない方がいます。キャンプ場には広大な芝生のスペースなどがある場合が多く、犬も興奮するみたいです。
首輪が外れてキャンプ場内を自由に走り回った犬がいました。そして、別のキャンプサイトの食材を食べ散らかしてしまったのです。
結局、ペットの飼い主がお詫びをして、近くといっても10kmほど離れたマーケットに行き、食材を買って弁償することで解決しましたが、後味の悪い事件でした。
違う例もあります。リードは自分のサイト内を行動範囲として調節すべきです。しかし、アウトドアの解放感か、長いままセットしてからその飼い主はでかけてしまいました。飼い主の目が届かなくなったペットはおとなしくしていません。サイト前の道にも出てしまい、結局、小さな女の子に飛びついて泣かしてしまいました。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
最初に配慮すべきは、キャンプをする人全員が愛犬家とは限らないということです。小さな犬種であっても苦手な方はいます。また、大勢の人がいるところに愛犬を連れて行くのなら、「合図をするまで食べてはいけない」「他の人に吠えない」などの躾をすべきです。リードや首輪の点検、リードは自分のサイト内でしか動けないような長さの設定が重要です。
神奈川県の渓流キャンプ場からの報告
ご存じのように今年の8月は気温が低く、雨も多いという異常気象でした。
もっとも困ったのはキャンセルの連続でした。しかも、まったく連絡してこない人さえいました。
キャンプ場は使用料などで運営管理し、キャンパーたちに快適に過ごしてもらうための設備を整えています。キャンセルが出れば、その分の売り上げが落ちます。
一定のキャンセル料をいただいていますが、「スキー場の宿は雪がなければキャンセル料は不要。雨だとキャンプができないのだから、キャンセル料を払わない」とゴネたお客様(?)もいました。
雨だってキャンプはできます。雨音が好きだと来てくれるキャンパーもいます。キャンセル料でのごたごたと無言キャンセルはキャンプ場には堪えます。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
キャンプ場といえばアウトドアの自由なイメージがあるかもしれません。しかし、キャンプ場は基本的に宿泊施設です。宿泊施設を予約しているわけですから、直前のキャンセルでキャンセル料を支払うのは当然です。ましてキャンセルのお知らせを入れないで行かないというのは完全なルール違反です。
豪雨や台風でしたら、キャンプ場もそれなりの判断をします。豪雨や台風の中、危険を承知でキャンプするのは間違っています。しかし、普通の雨でキャンセルをしてしまうのはどうでしょう。アウトドアにはさまざまな状況があります。それを体験するチャンスを逃してしまうのではありませんか?
長野県の高原キャンプ場からの報告
8月に雨が多かったということと関連しています。今年の夏は予想以上に冷えた夏でした。通常の夏でも、標高1000mもある高原ですから、夜などは薄いダウンウエアがいる場合があります。それにも増して今年の夏は冷えました。
にもかかわらずに、薄着や薄い夏用のシュラフを持って来る人が多いのです。結果、レンタル用品の貸し出しが予想以上でした。なかには管理棟が閉まっている夜中にドンドンと管理人を起こしてレンタル用の毛布を借りていった人もいます。事件とはいいませんが、管理人にとってはひとつの事件です。寒さに震えて夜中過ごしてもらうわけにもいかないし、管理人は日の出から働く場合が多いので、寝不足にもなります。なにより、毛布が品切れになってしまったらどうしようと不安でした。
事実として、翌朝にカゼ薬をもらいに来た方も多かった気がします。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
キャンプをする時に、ほとんどの人が天候のチェックをします。それはいいのですが、問題は予報をどのように見ているかです。気象庁では全国の天気を予想する時に、「県単位の予報は科学的に可能ですが、県ごとに異なる予報を発表しません」と言っています。つまり、長野県の中でも晴れもあれば雨があっても、長野県として予報を出す時には平均的なデータに基づいて出しています。また毎日の予報は午前5時、11時、午後5時の3回発表されています。つまり、ピンポイントでの予測と予報はしていないのです。
キャンプ場でも風の通りのいい草原にあるのか、森の中にあるのかで実際の気温も体感温度も変ります。さらに、標高が100mあがるごとに気温は約1度下がるという目安があります。
行くキャンプ場がどのような地形にあるのか、標高はどれくらいかを調べ、それに天気予報の情報を加味して自分なりの気温予想をして装備を整えたいものです。
もちろん、管理人さんに気温を聞くのも非常に有効な手段です。
クマではなくてシカですね!
編集スタッフも取材時にずいぶんシカと出合っています
編集スタッフも取材時にずいぶんシカと出合っています
エゾジカはずいぶん大型です
絶滅の危機にあるとして天然記念物に指定されたカモシカも、近年は人が暮らすエリアの近くに出没します
東北の森林キャンプ場からの報告
このところクマによる事件が多発しています。もちろん、アウトドアにあるキャンプ場ではそれなりの柵を作るなどで野性動物が入らないような対策を練っています。
それでも、場内に動物が入り込む場合があります。
今回はクマ騒動を2例報告します。
ひとつはキャンパーがあまり多くなかった平日の話です。あるご夫婦キャンパーがアルコールを適度にお飲みになり「後片付けは朝で」とテントに潜り込んでしまいました。そして夜中。テントのすぐ横でコッヘルや鍋が転がる音が続いています。その音で目覚め、様子を見に外に出ようとした時に、なんとも荒々しい鼻息まで聞こえてきました。
ただでさえ、クマによる事故が起きている東北地方の山間部です。ご夫婦はてっきりクマだと思い、震えて夜を過ごしました。やがて、日が出てまわりが明るくなったころ、動物の気配がなくなりました。
そこで、飛び起きて管理棟に逃げ込んできました。
すぐに行って調べると犬の足跡が多数。ご夫婦がクマだと思ってパニックを起こしたのは、実は迷い犬の仕業でした。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
クマでも野犬でもサルでも危険は変わりません。キャンプ場を柵で囲っていても野性動物は入り込む場合があります。まして野営タイプのキャンプ場では自然界との境がありません。
外に食材や余った食料を置いたまま眠るのはご法度です。多少アルコールが入っていても、蓋が締められるクーラーボックスに食材を仕舞う、残飯はきちんと処分するなどの対処をしてから就寝してください。
☆
もうひとつの例は、森で野性のシカとクマを見間違えたお子さんがキャンプ場でクマを見たと叫んでパニックを引き起こした例です。
まるで「オオカミが来る」のオオカミ少年のようですが、天敵がそれほどいなくなった今日、ニホンジカなどは大型化しています。体長が2m弱になるものもいます。しかも、遠目では黒く見えますから、少年がクマと間違えても仕方ありません。
場内のお客様を少年がいた森のほうから遠ざけて、管理スタッフで鈴を大きく鳴らしながら森に入りました。やがて、シカの足跡を見つけ(クマの足跡がないのも確認)クマではなくシカだと判断しました。
【ベテランキャンパーからのアドバイス】
森の中にひとりで入らないように教えるべきでしょう。道に迷う可能性もありますから。どんな動物であっても、実際に見かけたら驚くと思います。仮に手に食べ物を持っていたら、サルなどはそれを狙ってやって来る可能性があります。
日頃から野性動物を見てもエサをあげないでください。その行為が人のいるエリアに野性動物を近づけています。
その他さまざまな報告が入りました。しかし、多くは『こうはなりたくない「キャンパー恥ずかしい」話』と題して、以前この連載に記載した内容でした。
記事で注意をうながしましたが、まだまだ「恥ずかしい」キャンパーは大勢出没しています。自身がそんなことにならないように、きちんとキャンプの知識を身に付けておきたいものです。
●バックナンバー
http://www.smart-acs.com/magazine/11051502/outdoor001.php
< PROFILE >
浜口昭宏
雑誌やWEB編集を始めて数年の編集者。超がつくほどのアウトドア初心者だったが、猛勉強をしてそれなりに成長。アウトドアの中で大好きなシチュエーションは、ビールがおいしいBBQ。
浜口昭宏
雑誌やWEB編集を始めて数年の編集者。超がつくほどのアウトドア初心者だったが、猛勉強をしてそれなりに成長。アウトドアの中で大好きなシチュエーションは、ビールがおいしいBBQ。