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目覚ましい勢いで進化を続ける羽田空港に対し、その入口である蒲田は整備された駅周辺と、少し歩けば下町風情が混在する街です。そこに蒲田八幡神社と稗田神社などの兼務社が5つあります。

蒲田八幡神社の完成予想図(境内の予想図より)


兼務所の前を通過する時にお辞儀をする街の人


創建709年という説も残る稗田神社


近ごろでは海外に向けて発着する航空会社や路線が増え、一時は国内便専用と言えた羽田空港は、より大きなターミナルとして進化し続けています。

空港に乗り入れる京急電鉄の場合、羽田空港への玄関口に当たるのが蒲田になります。

蒲田駅は大田区内に位置します。東京の場合、「下町」とは、まずは山手に対してその周囲の海抜の低い地域を指します。江戸時代であれば代表的な下町は日本橋、京橋、神田、浅草、本所、深川などでした。

さらに、「新市街」という意味合いもあって下町と呼ばれた地域もあります。歴史的には「旧東京市」の外側に位置する、たとえば柴又や現品川区・大田区の海沿いエリアになります。

多くの海外旅行者や外国人が行き来し、時代の先端ともいえる羽田空港と、下町・蒲田が同居するのが大田区なのです。

蒲田は実は古い地名です。927年の『延喜式神名帳』に、蒲田の稗田神社が上げられています。

1830年に上梓された『新編武蔵風土記』には、梅の名所として蒲田が記載されています。かの歌川広重も蒲田の梅を描いています。

今日の蒲田は、駅周辺に高層マンションなどが建ち、進化した駅ビルが姿を見せます。

しかし、1945年の空襲で焦土となり、その後に復興した蒲田地域は、駅から少し離れれば閑静な住宅地が広がり、年配の方にはどこか懐かしい商店街がある下町なのです。

さて、京急蒲田駅の北西側、JR蒲田駅との間に蒲田八幡神社があります。1600年にご祭神である誉田別命が鎮座と推定される神社です。

現在は本殿などの新築が計画されており、平成30年8月に竣工予定です。

さらに、5つの兼務社があり、「蒲田八幡神社兼務社めぐり」は、ご朱印を集めている人たちに注目を集めています。

下町・蒲田と6つの神社を目的に、街歩きを楽しみました。

呑川の向こうをJRの列車が走る


少将局の哀しい伝説がある女塚神社


セピア加工が似合う下町の神社


ネコが境内で一休み


京急蒲田駅周辺のパーキングにクルマを止めて、まずは蒲田八幡神社へ。

参拝後さっそく社務所に行き、ご朱印をいただきました。ついでに、兼務社の地図があるかどうかを尋ねると、「こちらです」と、稗田神社、椿神社、御園神社、北野神社、女塚神社が示された地図を渡されました。

それぞれの神社にご朱印があるのですが、時期などによってはその場で記されるのではなく、蒲田八幡神社が代理でお渡しを行う場合もあります。

私が訪れたときは、まだ初詣で参拝者がいる1月中旬だったために、ご朱印は蒲田八幡神社での発行となりました。

しかし、ここでいただいたからといって、それぞれの兼務社に参拝しないようでは、“ご朱印の搾取”です(笑)。

ご朱印が揃うまでに時間がかかるということでしたので、その時間を活用してすべての神社をめぐることにしました。

どのように歩くかは思案のしどころです。地図を見ても、京急電鉄より南の神社があれば、JR蒲田駅より西側の神社もあります。

結局、京急電鉄を越えて東南側に位置する北野神社。

再び京急電鉄を越えて北側の椿神社、そこから近い稗田神社。

JR線路と呑川を越えて西に進み女塚神社。

西蒲田七丁目の交差点を目指して御園神社を参拝して蒲田八幡神社に戻るコースにしました。

しかし、いただいた地図は失礼ながら相当な略図。実際に歩きはじめると、詳細まではよくわかりません。

住所を頼りにスマホのアプリを活用して辿り着きました。とくに、椿神社、女塚神社は狭い道に面してあるので、少々苦戦しました。地図アプリを入れたスマホと飲料をお供に歩くのが賢明かもしれません。



北野神社はこのコラムの愛読者ならご存じのように、勉学の神様でもある菅原道真公を祀る神社です。

椿神社は狭い境内に椿の木がありました。ご祭神は猿田彦命で、道案内の神様と信仰されています。

稗田神社は天照・八幡・春日の三神体を造り、本社に安置したのが起源とされています。

女塚神社は、以前は御園村・女塚村(JR蒲田駅東口付近)の総鎮守として八幡社と呼ばれていました。しかし、明治5年に新たに鐡道が設置されるために遷座、かつての地名を残して女塚神社となりました。歴史に名を残す新田義興(にったよしあき・1337年生まれ、南北朝時代の武将)に命をかけて忠誠を尽くした少将局にまつわる『女塚伝説』も残ります。

JR蒲田駅から続くアーケードの近くにある御園神社は、「おしゃもじさま」の別称で親しまれています。こちらも女塚神社と同様に、遷座によって御園神社となりました。その昔、多摩川の洪水によって流れ着いた猿田彦命を祀り、「おしゃもじさま」と村民が親しみを込めて呼んで信仰した神社です。



それほどの規模ではありませんが、それぞれに個性がある神社。私の場合はすべてをめぐるのに3時間ほどかかりました。


ネコが神社でのんびり。下町らしい光景です


蒲田駅周辺のアーケードも散策したい場所


蒲田八幡神社をスタート&ゴール地点にして5つの兼務社をめぐる半日は、下町蒲田を散策するものでもあります。

比較的新しくできた駅ビルの中や周囲には、全国的に有名な飲食店や、ドイツビールなどを扱う個性的なレストラン、おしゃれなショップがテナントとして入っています。

しかし、駅ビルなどを出れば、下町風情が残る場所もたくさんあります。

駅周辺には雨の日でも困らないアーケード商店街があります。もちろん、近年話題のお店もありますが、昔ながらのレコード店や専門店も少なくありません。

メインアーケードの後ろ側にはお手頃な値段で利用できる飲食店が軒を連ねています。参拝の後に、お酒に肴というのも素敵ですね。

神社めぐりは主に閑静な住宅地を歩きます。モダンな家屋もあれば、昔からありそうなアパート、木造建築もあります。

また、JR線を歩道橋で越えたり、運河の様相の川を渡る場所もあります。

住宅地かと思っていたら、突然、時代を感じさせる商店街にも出ます。そこには銭湯があったり、中華飯店があったり、天丼のサンプルがおいしそうなそば店があったり。

昭和の面影を残す街並みを歩くのは楽しいものです。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●蒲田八幡神社
http://kamatahachiman.org/index1.html

●クルマでおでかけ
それぞれの神社に駐車場はありません。蒲田駅、京急蒲田駅周辺の駐車場に置いて歩いてめぐりましょう。

●お朱印
受付時間が決まっています。また、発行できない期間、それぞれの兼務社で発行できない時期があります。事前にホームページなどで調べるといいでしょう。
また、「ご朱印帳」は販売していません。事前に用意しておきましょう。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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