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秩父の山といえば標高がそれほど高くなく、丸みのある優しい山が連なっているように思えます。そのなかで数少ない独立峰が宝登山(標高497m)です。この山は、今から1900年前より信仰の場として歴史を築いてきました。

不思議な形の岩が見られる長瀞の岩畳


冬期以外はSLが停車する長瀞駅周辺


長瀞駅のすぐ西側にある大鳥居


長瀞は秩父盆地の北側に位置しています。秩父盆地の水を東京湾まで流す荒川が、長瀞の結晶片岩地帯を浸食し、「岩畳(いわたたみ)」といわれる独特の地形を生み出しました。

奇岩や断層、岩石段丘などが特徴で、それを見に観光客が足を運びます。岩を見上げながら進む「長瀞ライン下り」も人気です。

岩畳とその周辺では地質学的に貴重な断層などが多く見られることから、「地球の窓」と呼ばれ、地質学者を始め、多くの研究家たちの格好の勉強場となってきた歴史もあります。

長瀞を訪れるには、関越道花園ICからが便利です。国道140号は「彩甲斐街道」とも呼ばれ、荒川沿いの美しい景観の中を走ります。また、秩父鉄道に並行しているため、運がよければ休日などは蒸気をあげたSLが、横を走るかもしれません。

近年は花園ICの近くから秩父へ抜けるバイパス有料道路も整備されつつあるので、休日の長瀞への混雑はだいぶ緩和されました。

さて、秩父鉄道長瀞駅周辺が今回のパワースポットめぐりで目指す場所です。

長瀞駅の東側に出れば荒川が流れ、岩畳が広がっています。近隣には民間の駐車場も多いので、ドライブも楽です。

岩畳とは反対側の国道方面を見ると、大きな鳥居が目に入ります。これが、寶登山(ほどさん)神社の鳥居です。

長瀞駅から寶登山神社に向かうと、さまざまな人たちを見かけます。いかにも参拝に来たという人よりも目立つのが、トレッキングシューズを履き、リュックを背負った人たちです。

寶登山神社から宝登山ロープウェイが山頂まで架けられ、寶登山神社奥宮に行きやすいのはもちろん、周囲には眺めのよいハイキングコースが設けられているのです。また、寒い時期のロウバイ、5月中旬から6月中旬のシャクナゲなども美しく、それもまたハイカーたちに人気となっています。

御社殿の入り口に当たる二の鳥居


宝登山山麓にある御社殿に続く階段


日本武尊(ヤマトタケルノミコト)は第12代景行天皇の皇子であり、仲哀(ちゅうあい)天皇の父でもあります。

本人は武勇で知られ、歴史上の英雄のひとりになっています。たとえば、九州においては大和朝廷に反抗した地域勢力を討ったとされています。その時に、日本武尊の尊称が与えられたと伝わります。

さらに、三種の神器の一つである草薙剣を授かって、東国と蝦夷を平定、帰路の途中の伊勢にて病死したと「日本書紀」に記載されています。

西暦110年、今から約1900年前のこと。東征の途中の日本武尊が山容の美しさに惹かれて登ったのが宝登山です。

秩父は連山が多いのですが、宝登山は数少ない独立峰。それが日本武尊の目に止まったのでしょう。

ミソギの後に山頂を目指しました。

しかし、途中で山火事に遭遇します。その時に突然現れて、火事を消し止め、日本武尊を山頂まで案内したのは犬たちでした。日本武尊を無事に案内した犬たちは、その後姿を消してしまいます。

この不思議な出来事を日本武尊は、神のお導きだと悟りました。神が自分を案内するために、犬の姿で現れたのだ、と。

そこで、山頂に祖先である第1代神武天皇、山の神である大山祇神(おおやまづみのかみ)、火の神の火産霊神(ほむすびのかみ)を祀りました。さらに、「火を止める山」として「火止山=ほどさん」と山に命名しました。これが寳登山神社の創建に繋がっています。

起源に関連し、寶登山神社の御神徳は火災盗難除け、家内安全、商売繁盛、火防盗賊除け、交通安全、金運招福などになっています。日本武尊が登山にも成功しているので、登山の安全なども祈願できそうです。 現在はトレッキングや登山がブームです。山に行く前に、お参りするのもいいかもしれませんね。


彫刻が施された御社殿


自然が満喫できる神社です


私が訪れたのは平日のために比較的道も空いており、社務所の前に設置された駐車場にもスムーズに駐車できました。

クルマを止めて、茶店を横目に二の鳥居に向かいます。二の鳥居を過ぎ、長めの階段を上れば、その先に御社殿があります。

御社殿は想像より小さめでした。権現造りの御社殿は、江戸時代末から明治初頭にかけて再建されたものです。

社殿再建には茨城に生まれたひとりの僧侶の尽力があったといいます。1845年に社殿再建を発願し、着工の運びとなりますが、その後に資金調達が困難になります。

明治になると僧籍を捨てて神祇を修め、御社殿の完成を目指しました。そして、29年もの時間を経て本殿と拝殿が完成します。

本殿と拝殿の随所には熊谷在武州明戸の彫刻家・飯田岩次郎による彫り物が見られます。
埼玉・熊谷にある妻沼聖天堂(国宝)には華麗な彫刻が施されています。その彫物大工棟梁は石原吟八郎です。

日光東照宮の修復にも参加した石原吟八郎は、優秀な弟子も育てました。そのひとりが飯田岩次郎なのです。

彫刻を一つひとつゆっくり見学するのも参拝時の楽しみでしょう。



【おでかけマガジンバックナンバー 妻沼聖天山】
http://smart-acs.com/magazine/16020101/experience001.php



御社殿に参拝した後は、時間があれば宝登山ロープウェイで山頂を目指しましょう。

山頂駅から少々歩けば奥宮に出ます。日本武尊が登頂したことが起源の神社ですから、奥宮や山頂へのハイキングもパワースポットめぐりの一環として挑戦してみたいものです。

そして、余力があれば山頂駅からの下りはハイキングコースへ。自然を満喫しながら歩きたいものです。所要時間は約40分。比較的楽な下りですから、ハイキング入門にも格好のコースです。

寶登山神社詣でで汗をかいた後は秩父方面に寄り道も。たとえば西武秩父駅に隣接して昨年の春にオープンした「祭の湯」など、日帰り可能な温泉施設が点在しています。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●寶登山神社
http://www.hodosan-jinja.or.jp/

●秩父鉄道SL情報
http://www.chichibu-railway.co.jp/slpaleo/

●長瀞ライン下り
http://www.chichibu-railway.co.jp/nagatoro/

●長瀞ハイキングガイド
https://www.nagatoro.gr.jp/

●クルマでおでかけ
首都圏からだと関越自動車道練馬IC→花園ICまで約50分。花園ICから国道140号へ。長瀞まで約20分。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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