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  3. 国宝の彫刻に見入るひととき利根川ほとりの縁結びの神【埼玉熊谷・妻沼聖天山】
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春になると少し陽気になって、「今年こそ縁結びの神様を訪ねよう!」なんて思っている方もいるのでは。おすすめは利根川の風が感じられる妻沼聖天山です。ここには国宝の御本殿があります。縁結びの必要がない方も、その彫刻には圧倒されるはず!

利根川と利根大堰


国宝の御本殿


特徴ある屋根をした貴惣門


東北自動車道羽生ICから北西へ。そこには利根川が流れています。2月末になると土手が菜の花で彩られる利根川は、春の風がとても似合う大河です。

縁結び・厄除け・開運の神様として知られる妻沼聖天山(めぬましょうでんざん・登録名称:歓喜院聖天堂)は、斎藤別当実盛が祖先伝来の御本尊聖天様を1179年に祀り、実盛の次男が出家して1197年に開創したのが始まりです。

その後、火事などの被害で何度か再建され、現在の建物は宝暦10年(1760年)に仮屋根が完成しました。

完成するまでには数々の苦労がありました。

再建の責務を担ったのは幕府作事方棟梁として活躍した平内政信の子孫であり、妻沼の工匠である林兵庫正清でした。

正清は優秀な職人を集め、再建の費用を工面するために各地を回ります。結果として費用を負担したのは幕府や大名でも豪商でもなく、妻沼を中心とした庶民たちでした。きっと、地域の庶民が聖天山のご利益をいちばん心得ていたのでしょう。

正清が「国宝指定」という平成24年の出来事を予知するはずもありませんが、国宝に指定された要素として彫刻技術の高さや修理過程で明らかになった当時の漆の使い分けなどの高度な技術に加え、幕府や大名の“権力側”ではなく“民衆の力によって成し遂げられた点”が評価されています。

当時の利根川は洪水を防ぐための堤防も、今ほど完成されたものではありません。大洪水によって工事を中断せざるをえない状況にも陥りました。加えて繊細な彫刻が施されています。

完成を見ずに正清は逝去し、その後を子である正信が継いで、安永8年(1779年)にやっと完成しました。実に44年もの歳月を要したのです。

ただし、利根川大洪水の産物もありました。

大洪水によって被災した妻沼の復興を命じられた藩士の中に、岩国の錦帯橋の架け替えを担当した長谷川重右衛門がいました。彼は造営中の聖天堂を見て、貴惣門の設計を思いたち、設計図を正清に託しています。

全国に四例しかない独特の屋根をもつ貴惣門は重要文化財に指定されています。

豪華絢爛な壁の装飾


すごろくに興じる吉祥天と弁財天。天邪鬼の姿も


「小間取遊七人」と「梅」模様


国宝の御本殿は正面から見れば、失礼を承知で書けば全国で目にするような建物です。

奥殿34㎡、相の間27㎡、拝殿127㎡。廟型式権現造り。しかし、その特徴は各部材、各壁面を総て彫刻で装飾を施したことにあります。

建立から長い歳月を経て彫刻は色あせていましたが、平成15年より8年をかけて保存修理工事がなされ、外壁は創建当時の色鮮やかな姿になりました。

修理のための総工費は13億円以上かかったそうです。それだけ、創建当時の彫刻の繊細さ、漆などによる色付けはみごとだったという証しでしょう。

本殿彫刻参観料を納めて修復された御本殿奥の壁に向かいます。参拝客用の門をくぐれば、そこには目にまぶしい彫刻壁が待っていました。青空の下に金色がまぶしく、台座の竜が威風堂々と見えます。

それにも増しておもしろいのが、各面に施された彫刻の数々です。

吉祥天と弁財天が、まるで「バックギャモン」のようなすごろくのゲーム版に向かって座り、今にもさいころを振ろうとしている彫刻があります。その横には天邪鬼(あまのじゃく)がいます。
ほかの壁には凧揚げや竹馬で遊ぶ様子が描かれています。

ひとつひとつの壁は、そのまま絵画。美術館に鑑賞に来た気分になります。

気ままに鑑賞するのもいいのですが、「阿うんの会」というボランティアの会の方がガイドをしてくれる場合もあります。もしもボランティアの方にお会いしたら、解説に耳を傾けるのがいいでしょう。それぞれの彫刻が何を描いているのか、どのように修復したのかなどのお話が聴けるでしょう。

大きな建造物などの国宝は別として、美術品などは多くの場合、ガラス張りのケースなどの中に保存されています。しかし、ここの彫刻は日々の空気に触れ、建立時と同じように参拝者の目を楽しませます。

利根川のほとりにある国宝。とても美しく、庶民の信仰の深さを感じさせるものでした。

貴惣門から境内を見る


色鮮やかなお守りも多種


残念ながらかんぴょうが外側に巻かれていない「聖天結びいなり」


妻沼聖天山は歓喜院とも呼ばれ、日本三大聖天のひとつとして知られています。そして、境内には縁結びのパワーが溢れていると、パワースポット通に評判なのです!

縁結びによいとされるにはいくつかの理由があります。

まず、貴惣門を通って次に現れる中門は、その昔はお見合いをするための男女の待ち合わせ場所だったという説が残っています。まだ見ぬ将来の伴侶と初めて顔を合わせる…、中門はそんな場所だったのです。

中門、仁王門をくぐれば御本堂の敷地ですが、そこに不思議な2本の木があります。左はエノキ、右はケヤキ。2種類の異なる樹木が寄り添い、絡み合って空へと伸びています。

この木は「夫婦の木」と呼ばれています。2種類でひとつ、この不思議な樹木からも縁結びパワーが感じられます。

お守りも多数あります。縁結びのものが目立ちます。今回のプレゼントをかわいい縁結び御守りにしようとも思ったのですが、読者にはファミリーも多いので、みなさん共通のお守りを分けていただきました。
※今回のプレゼントは聖天山の「開運厄除交通安全御守」です。

おみくじも引きたいと、さっそくガチャガチャと振って出てきた数字を告げると、友人はなんと「凶」。ええいと引き直して「末吉」。文言を読めば「短期は早死につながる…云々」。お隣の人も「うわっ」と悲鳴をあげていたので悪かったようです。そういう私は「吉」でしたが、「ここ甘くないわ。凶や末吉が出る率が高い」とは友人。

おみくじを結んでから向かったのは参道にある「聖天寿し」。ここには妻沼名物のお持ち帰りの細長い稲荷寿司があります。

なんでも、かんぴょうで外側を結んだものが「縁結びいなり」として幸運の印。

ワクワクしながら包装を解いた友人ですが、「凶」を引いた人が幸運を引くはずもありません。包装紙の中の長い稲荷寿司は、3本ともかんぴょうで巻かれていませんでした。

でも、がっかりしていられません。妻沼には「縁結びメニュー」を提供している飲食店がたくさんあります。お次は何を食べようか?

友人は早くも次のお店での好転を願っているのでした。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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