前回の秩父・宝登山に続き、山に築かれたパワースポットをご紹介。山梨県南巨摩郡に位置する標高1153mの身延山に日蓮聖人が入山したのは1274年のこと。その後、1281年に堂宇が建築され「身延山妙法華院久遠寺」と名付けられました。
門前町の奥の三門から上りは急になる
急な階段を上がれば本堂などがある
写真の仏殿をはじめ建造物が多い
鎌倉時代のことです。相次ぐ疫病や天災によって人々は苦しんでいました。
その時に立ち上がったのが日蓮聖人です。「法華経をもって困難に遭っている人々を救いたい」と、時の幕府に諫言しました。
しかし、鎌倉幕府の要人たちは首をたてに振りません。ますます困窮する人々を目にした日蓮聖人は、以降も幕府に申し出ますが、その都度断られてしまいました。
結局、日蓮聖人の諫言は実らないままになりました。
地頭・南部実長は身延山を含む甲斐の国波木井(はきい)を治めていました。そして、日蓮聖人の信者でもありました。
幕府側に聞き入れてもらえずに、憔悴していたと思われる日蓮聖人を実長は「こちらへ来ませんか」と誘いました。
実長の言葉を受け入れて、日蓮聖人は身延山の麓「西谷」に住居を構えました。それが1274年の出来事です。
以来、9年にもおよび日蓮聖人は身延山で弟子たちに法華経の読誦(どくじゅ)と、指導にあたりました。
さらに、1281年には旧庵を取り壊して堂宇を建築し、「身延山妙法華院久遠寺」と自ら名付けました。
これが、今日に続く身延山久遠寺の歴史の第一歩です。
日蓮聖人は翌年の1282年、体の不調を癒し、両親の墓前に行くために常陸の国(茨城県)に向かいますが、その途上、池上(東京都大田区)で没します。
つまり、日蓮聖人の晩年は、身延山と共にあったといえるでしょう。
開山の約200年後の1475年、湿気の多い西谷の地より現在の地に久遠寺は移転しています。
その後、武田氏、徳川氏によって身延山は外護されています。
身延山から富士川越しに甲斐の山々が眺められます。その一つはかつて武田氏、そして枯渇するまで徳川氏の財政を支えた金山でもあります。貴重な金山と、壮大なスケールを誇る山の寺を武田氏と徳川氏が庇護したのもわかる気がします。
祖師堂の外壁には彫刻も
木造の建築美に魅了されます!
訪れた時は年配の参拝者が目立ちました。それらの人々は歩きやすいウォーキングシューズを履き、動きやすい服を着ていました。
それもそのはずで、山のお寺ですから、境内に「斜行エレベーター」が設置されているとはいえ、歩く距離は相当なものになります。
訪れる人たちは、参拝と、健康のためにウォーキングを兼ねているようでした。
お参りをして、健康にもいい運動ができるのですから、ご利益は2倍といったところでしょうか。
訪れる時に順番に書けば、総門から三門までは門前町となります。ここに駐車場も点在しています。
三門から本堂へと続く287段の階段があるエリアは「菩提梯」と呼ばれます。「登り切れば涅槃に達する」と伝わります。
菩提梯を登り切ったところに今やシンボルとなっている五重塔があります。「今や」と記したのには理由があります。実は完成は2009年と新しいのです。明治8年の大火によって消失した五重塔が、134年の歳月を経て蘇りました。
これだけの規模のお寺ですから本堂も立派です。1985年に再建された本堂は奥行き51m、2500人の法要が可能です。
中も自由に見学でき、天井絵などを鑑賞することもできます。
本堂の隣には祖師堂、報恩閣、御真骨堂、仏殿と並びます。
祖師堂は日蓮聖人の神霊を祀るもので、明治14年に江戸にあった堂を移築再建しました。
御真骨堂には日蓮聖人の御真骨が奉安されています。
参拝の時に、これらの建造物を眺めるのもいいでしょう。木造建築の美しさ、外観の細工、天井絵や調度品のみごとさなども、お寺をめぐる時の楽しさです。
その点、総門から始まる久遠寺の境内に点在する数々の建造物は見学する価値のあるものばかり。パワーをわけていただくのはもちろん、知的好奇心も満たしてくれるでしょう。
参道は仏具店や飲食店が並ぶ
身延どんぶり街道でオリジナル丼を
山梨県富士川クラフトパークでゆっくり
身延山山頂は日蓮聖人が両親を偲んだ場所。山頂には「思親閣」があります。
日蓮聖人が雨風をいとわずに登頂したと伝わりますが、私には少々困難。でも、安心を。山頂までは45名乗りのロープウェイが通っています。763mという関東一の高低差を誇るロープウェイですから、山頂からは富士山、南アルプス、駿河湾まで望めます。これなら、誰でも登頂が可能です。
さて、参拝後に立ち寄りたい場所が目白押しなのも身延山の魅力でしょう。
総門と三門の間の参道は、両側が商店街になっています。参道らしい仏具店が多いのですが、“縁起物”を扱うおみやげ店、名物の大豆を使った豆腐店、地酒を扱う店なども多くあります。
ランチにおすすめは、「身延どんぶり街道」です。2017年11月から第7弾が開始されているほど人気の企画です。
身延山周辺の国道52号、300号沿道に点在する飲食店が実施しており、各店舗で「身延らしい独自のどんぶり」を提供しています。
写真を掲載したのは、JR下部温泉駅の駅前にある丸一食堂の「馬鹿(うまか)丼」。地元食材を使った馬と鹿肉を使ったジビエ感覚の丼です。
そのほかにもわかさぎ丼、みのぶゆばカレー丼、しいたけ丼など、地域色がいっぱいのオリジナル丼がたくさん。
事前にホームページをチェックして、“食べたい丼”を決めてから訪ねるのがいいでしょう。
おなかがいっぱいになったら締めくくりに道の駅へ。地域の物産も買えるし、ソフトクリームなどのデザートも用意されています。
ぜひ立ち寄ってほしいのは「道の駅みのぶ 富士川観光センター」です。ここは想像の範囲の道の駅とは違います。
山梨県富士川クラフトパーク内に設けられており、広大な公園の一角なのです。敷地内にはカヌー場、バーベキュー場、健康器具や遊戯施設のある公園、日本庭園、バラ園、ドッグラン、富士川・切り絵の森美術館、和紙工房などもあります。
買い物だけではなく、テーマパークとして十分に時間を過ごせるのです。
身延山でパワーをもらい、おいしいものを食べ、テーマパークで体験する。極上のパワースポットドライブができます!
●身延山久遠寺
http://www.kuonji.jp/index.htm
●参道案内「身延町商工会」
http://minobu-shokokai.jp/
●ランチなら「身延どんぶり街道」
http://www.minobu-donburi.jp/
●山梨県富士川クラフトパーク
http://www.kirienomori.jp/
●クルマでおでかけ
首都圏からだと中央自動車道→中部横断道六郷ICから国道52号利用。新宿から約2時間10分。新東名高速新清水ICから国道52号利用も可能。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。