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ゴム製ボートで美しい激流を下るラフティングは暑い季節にもってこい。暑さが残る初秋に挑戦してもいいし、来年の暑い時期にプランニングするのもいいでしょう。この夏に体験したラフティングのレポートです!

天竜川を13kmも下る


スタート前には講習がある


雄大な景色の天竜川のスタート地点


毎年夏が来るたびに仲間と温泉&山歩きの旅にでかけている。

もともとは温泉達人として活躍した故・野口悦男さんに、山をかき分けて行く手掘り温泉に連れていってもらったのが始まりだった。

テントや食料、衣料、スコップなどの装備をかつぎ、山奥の渓流沿いを登り、温泉達人が「ここだよ」という河原のポイントを掘る。すると、温泉が河原に湧き上がる。熱ければ渓流の流れを手掘り湯船に入れて調整すればいい。

この“大人の山旅”に集った約15人が、野口さんが亡くなった後も恒例行事として夏が来るたびに山歩きと秘湯をめぐる旅を続けている。

今年の夏は信州の山奥に行った。目指すは南アルプスの山…のはずだった。

しかし、その日の気温は山の町なのに35度。登山道の入り口でも33度を超える。

「ムリだろ、こんな日に歩くのは…」
「いい歳の人間ばかりの集まりなんだから、山行きはやめよう」

こんな声がごく自然にあがり、ぼくたちはあっさりと山歩きを諦めた。なにごともムリをしてはいけないという教訓は、これまでの登山やアウトドア体験で十分に心得ている。

かといって、宿でじっとしていられるほど高齢でもない。

仲間のひとりがスマホで検索し、天竜川でラフティングができるのを見つけた。

ぼくはかつて“天竜川下り”をした経験がある。船頭が操る舟でゆったりと川を下るのだが、途中に激流ポイントも含まれる。

ラフティングとなるともっとハードだ。自分たちでパドルを使ってボートを操作しないといけないし、激流ポイントで油断していると振り落とされることもあるからライフジャケットを着用する。

ラフティングそのものは数年前に北海道・ニセコで体験した。ニセコはスタート地点からゴールまでの間に、数多くの激流ポイントがあったと記憶している。鮮明に覚えているのは、ボート上でバランスを失ったぼくが落ちかけるのを見て爆笑したアシスタントが、あっという間にボートから転げ落ちたことである。

天竜川は激流もあるが、どちらかといえばおだやかな区間が多い。初体験の仲間ばかりのぼくたちに最適だった。

いよいよボートに乗り込む


パドルで推進力をつけて川の流れに乗る


ボート上に立ったり、川に飛び込んだり


長野県飯田市内の天竜川沿いにある「RUN ABOUT(ランナバウト)」は午前10時前なのに炎天下にあった。

近くの道を通る市役所の広報車からは「気温35度のため、熱中症に注意」のアナウンスが流れている。

天竜川ラフティングの最大のセールスポイントは、国内最長級の13kmにおよぶ距離だ。事前講習などが約30分、スタート地点への移動が20分。そして、2時間のラフティングとなる。

まずは保険料込みの参加費(9000円、7kmコースは6500円)を支払う。ちょっとうれしいのは、近隣の温泉入浴券がおまけに付くことだ。どんなに天竜川の水をかぶっても、終わってから温泉で温まればいい。

次にヘルメット、ライフジャケット、専用シューズなどを無料でレンタルする。川に落とされたとしても、これらの装備があれば安心だ。

予約した参加者が集まると、ガイドによる講習が始まる。各自、ラフティング時の注意事項を頭にたたき込む。パドルの使い方を覚え、ボートから落ちたときの対処法を知る。

ちなみに、ボートから落ちたとしても、あせってはいけない。ラッコのように、足を前にしてぷかぷか浮くのが得策だそうだ。この姿勢なら岩が近づいてきても、頭から激突することはない。

講習の途中から「早くボートに乗りたい!」という気分が高まってくる。暑いのも原因だ。天竜川上の心地よいだろう空気に、いち早く包まれたいのだ。

貴重品などを預け、水に濡れてもいい最低限のものだけを持って、マイクロバスに乗り込む。

バスは天竜川の上流に向けて走る。道からちらりと見える天竜川は壮大で、ゆったりとしている。2時間で13kmだから時速は6.5km。ゆったりラフティングであるのは間違いない。

ニセコの経験からラフティングには“激流”“スリル”というイメージがあった。天竜川の場合はそれが若干欠落しているように思えた。

しかし、実際にラフティングを始めると、雄大な天竜川だからこその楽しみがあるのに気づくのである。

ガイドが最後尾に座り、その前にぼくたち8人がパドルを手に座る。ぼくたちがまるで子どものように、川遊びに興じるのはその後すぐだった。

ゆったりゾーンでは川に足をつけて


2時間13kmのラフティングは清涼感抜群


呼吸を合わせてパドルを漕ぐうちに一体感が生まれる


ラフティングとは“ラフト”を用いて川下りをするレジャースポーツだ。ラフトがゴム製のボートである場合が多いが、ラフトそのものは浮力によって航行する小型のボート状のものを指す。たとえば、イカダもラフトの一つである。

「日本のラフト用のゴムボートは、ハルナというブランドが有名です。これ、岡本理研ゴム(現オカモト株式会社)の関連会社なんですよね」と、川沿いの名所を解説する合間にガイドが教えてくれる。

「うーむ、なるほど」と、オジサン連中が微妙に反応する。

いずれにしても、合計9人が乗り込んだゴム製ボート、底部分は厚みがあって岩にこすれても頑丈、上部は弾力があって座り心地がいい。底には穴が空いていて、入ってしまった水が自然に抜けるように工夫されている。ゴムボートではあるが、なかなかしっかりした作りだ。

ガイドのかけ声でパドルを操作し、ボートに推進力を付ける。激流ポイントではパドルは少々お休みし、流れに身を任せる。ボートが上下に大きく弾み、油断していると落ちそうになる。

激流ポイントを超えれば、ゆったりした流れのゾーンに入る。ここは雄大な遊び場だ。

「ここは深いから飛び込んでもいいですよ」のガイドの声で、川に飛び込む。ボートのロープに足を乗せて、ふわふわ浮遊する。

気温35度は別の世界。川の上の風はさわやかだ。

「では、全員ボートに乗って! パドルを使って全速前進して前のボートの人に水をかけてあげましょう。彼らは敵です!」
「て、てきー?」
「敵だと思ってください」
「よっしゃー」、煽られやすいのがおじさんたちなのだ。

全力でパドルを漕いで前のボートに追いつき、その流れでパドルを使って水をぶちかける。相手も応戦する。が、おじさんパワーにはかなわない。ぼくたちは他の2つのボートに連戦連勝だった。

その後、ボートの上に立って遊んでいるときに、突然追突されて全員が転げまわるという逆襲にあったりしたが…。

2時間のコースを完走して降りると、そこは灼熱の太陽の元だった。いかに川が涼しいかを実感したのだった。



天竜川ラフティングは10月末まで行っているという。秋になっても暑そうだ。秋のラフティングを楽しむか、それとも来年の夏に挑戦するか…川の上の別世界をぜひ体験してほしい。


素人動画 天竜川ラフティング体験


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●コラムに関連のあるサイト

天竜川ラフティング「RUN ABOUT ランナバウト」
http://www.runabout-rafting.com/index.html
< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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