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白川郷(岐阜県)、椎葉村(宮崎県)とともに「日本三大秘境」に名を連ねるのが祖谷渓谷です。頭がくらくらするほどの深い渓谷を有する祖谷には、ケーブルカーで下る温泉と、ケーブルで上る温泉がありました。
渓谷の遙か上にぽつんと1軒宿のホテル祖谷渓谷がある

新緑の中を行くケーブルカー

ケーブルカーの終点は露天風呂パラダイス

男女交代制の露天風呂

紅葉の時期は極めて美しい

ホテル祖谷温泉
●住所:徳島県三好市池田町松尾松本367-28
●泉質:アルカリ性単純硫黄温泉 pH9.1
●日帰り:7時30分~17時(受付)、露天風呂おとな1700円、そのほか展望大浴場おとな600円、日帰りプランあり
●宿泊:「早割」プランほか各種あり
TEL:0883-75-2311
【温泉むすめ情報】
スマートアクセスの読者なら知っているかも!? 第1回温泉むすめ総選挙のグループ未所属部門では、祖谷温泉のキャラクター「祖谷メグリ」が第1位になりました。


四国一周のドライブを初めて行ったのはもう20年も前になる。
それまで僕は、四方を海に囲まれた“海の国”のイメージを四国に抱いていた。
しかし、実際にクルマを走らせてみると、四国は“山の国”であるのを感じる。

四国一周ドライブは、結果としてお遍路さんと同じような海沿いルートを2周、山の中を走る内側ルートを1周したが、どちらも山の深さに驚かされる結果となった。

たとえば、お遍路さんにとって苦しいルートの一つは、第23番札所・薬王寺から第24番札所、室戸岬に近い最御崎寺までだろう。まず距離が長い。通常なら札所間は数kmから10kmそこそこ。遠くても20km前後なのに、ここの距離は75kmにも達する。さらに、海沿いをずっと歩いて来たのに、お寺に続く最後のルートは急な上り坂になる。
海岸と山が近いのだ。海から少し離れただけで、一気に山景色になるのが四国なのだ。

四国の山深さを物語るもう一つの例がある。
徳島や高知の山深い里には、「平家の落人」所以の古民家や史跡が点在する。祖谷川の上流に架かる「かずら橋」も同様だ。追っ手を恐れた平家の落人は、清流に架ける橋を山野に自生するシラクチカズラを編み連ねて造った。隙間から川の流れが見える不安定な吊り橋だが、この橋の利点は追っ手が迫ったときに、すぐに切り落とせることだ。
平家落人の知恵が生んだ架け橋として現在に伝わっている。
平家落人がこの地を選んだのは、追っ手が来にくく、都の目が届かない山深い地だったからに他ならない。

さて、本題に戻そう。徳島から吉野川に沿って山間部に入り、やがて祖谷川の上流に向かえば向かうほど、道は山深くなる。窓から見下ろす渓谷は遙か下。僕はかつてパキスタンの高地フンザを旅したことがあるが、あのときと同様の渓谷の深さに若干ではあるが身が震える。
やがて、曲がりくねった峠道の横に「小便小僧像」を見ることができる。小便を渓谷に向かって放っているのだが、その高さは200m。日本一豪快な小便像といっていいだろう。

小便小僧像の先に祖谷温泉を代表する温泉宿・ホテル祖谷温泉がある。このホテルは深い渓谷の遙か上、道路沿いに位置する。温泉施設は遙か下の渓流沿いにあるから、部屋から温泉に行くためにケーブルカーを用いる。
ケーブルカーで降りる温泉なのだ。

もう一つの祖谷渓谷の温泉宿は新祖谷温泉のホテルかずら橋だ。こちらの温泉は「天空露天風呂」と呼ばれ見晴らしがよく、湯船までは小さなケーブルカーで上って行く。
ケーブルカーで上る温泉と下る温泉。“山の国”四国の秘境らしい温泉宿がゲストを喜ばせている。

僕はどちらの温泉にも入浴し、四国の山景色を堪能したのだが、とくにホテル祖谷温泉の渓流沿いの露天風呂に魅了された。
上部のホテル内に展望大浴場も備えているのだが、渓流露天風呂に向かう約5分のケーブルカーの旅は格別だ。
傾斜42度の断崖を170m降りる間は周囲の自然を楽しむ。新緑や深緑、そして紅葉。ときには雪景色…。
ある月刊旅行雑誌から「おすすめの紅葉温泉ベスト5を教えてください」と尋ねられたことがある。僕はそのリストにホテル祖谷温泉を上位で加えている。
自然環境が抜群なのはもちろんだが、ホテルから見下ろす迫力と、ケーブルカーの演出などがプラスアルファの魅力となっているのは間違いない。

渓流沿いの露天風呂は1日交代制の男女別露天風呂に加え、貸切露天風呂が用意されている。
ボーリングをしていない天然の温泉地が比較的少ない四国の中にあって、祖谷渓谷一帯には古くから温泉が湧出していたようで、平家一族が祖谷の温泉で湯治をしたという伝説も残る。その証拠は「フロノタニ」という地名が残っていることだろう。
四国では珍しい源泉をそのまま湯船に注ぐ形式で、湧出量も豊富で安定しているために、源泉かけ流しを楽しめるのも温泉好きにはたまらない。

白い湯の花が湯に浮かび、湯船が若干白濁して見えるのも、ここの温泉が新鮮な証拠だ。
湯にはぬめりがある。温泉通ならお察しのとおり、泉質はpH値9.1のアルカリ性単純温泉。「美人の湯」と呼ばれる有名温泉とほぼ同様のpH値と泉質を誇る。
そのために古い角質を柔らかくして優しく除去する効能も見られる。

抜群の泉質と、秘境と呼ぶに申し分のない自然環境。そして、ここに至るまでの変化に富んだドライブルート。
四季の変化を肌で感じるためにも通ってみたい温泉だ。ただし、道に積雪があるときは十分な注意が必要だけれど…。

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徳島自動車道井川池田ICから国道32号経由で約55分。祖谷口駅から出合経由で小便小僧像を通って深い渓谷沿いを走るルートと大歩危を経由して一宇経由で入るルートがある。いずれにしても、最後は山深い渓谷沿いの道となる。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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