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ドライバーにとっては少しばかりじゃまな存在かもしれませんが。日本各地で19の路面電車が市民の足として走っています。旅で訪れたら、愛車はコインパーキングに駐めて、路面電車でぐるりと回るのもいいものです。

イタリアの古都を走る路面電車


東京に残された都電荒川線


スキー雑誌の編集をしていた時、ほとんど毎シーズン、ヨーロッパのスキー場を訪れていた。

アルプスの山々に設けられたスキー場のスケールは格別で、一つのスキー場のコース総延長が100km、200kmを超えるところも珍しくない。

さらに、スイスのツェルマットとイタリアのチェルビニアのように二つのスキー場が行き来できるところもある。メリベル、クーシュベル、レ・メニュイールなどのスキー場をすべて滑れるトロワバレー(三つの谷の意)にいたってはコース総延長が600kmを超える。

日帰りなんかで滑り切れるわけもなく、すべてのコースを制覇しようと思うなら1週間単位の滞在が必要になる。



スキー場には高速リフトに加えて、斜面を一気に駆け上がるケーブルカーや、大人数を一度に運ぶ大型ロープウェイが架かる。

これらを利用すれば、効率よく斜面を滑れる。

一方、スキー場内を悠々と走る登山電車もツェルマットやグリンデルワルドなどをはじめとする歴史ある巨大スキー場に共存している。

山麓から山頂まで30分以上をかけてゴトゴト上るのだ。

高速リフトと登山電車では見られる景色が違う。

高速リフトは上空からコースを眺めているだけであっという間に終点に着く。登山電車ではアルプスの山々をのんびり眺め、徐々に遠ざかっていくホテル街を見下ろし続ける。線路のすぐ横はスキーコースで、スキーヤーやスノーボーダーが真横を下っていく姿が見られる。

電池で動くベルトコンベアで上へ運ばれ、同じ速度でらせん状の溝を降りるおもちゃがある。高速リフトやケーブルカーばかりでは、スキー場も、まるでおもちゃのようになってしまう。

しかし、登山電車という異質なものがあるおかげで、ヨーロッパのスキー場は崇高な場所になっていると思うのだ。



それはヨーロッパの街並みにも言える。歩行者であふれる繁華街はアスファルト舗装されていないケースが目立つ。昔ながらの石畳の道だ。
そして、そこを走るのは路面電車である。

ぼくはその街の雰囲気に浸りたくて、スイスやオーストリア、イタリアの街で、用もないのにずいぶん路面電車に揺られた。

路面電車はワンマン車両がほとんど


高知のはりまや橋停車場


湘南を眺めて走る江ノ電


「なんで、ここに電車!」と路面電車が走る街の路上で思ったことがあるドライバーも少なくないだろう。

僕もそんなひとりだ。

待ち合わせ場所に急いでいるときに、道の真ん中を一定速度で走る路面電車が気になったことがある。



その昔、東京にも多くの路線があり、路面電車がたくさん走っていた。

排気ガスを考えれば路面電車こそエコな乗り物なのだが、自動車のジャマになるとして多くが廃線となって、バスの時代に移行していく。

現在、日本において路面電車が走るのは以下になる。



札幌、函館、東京、鎌倉と藤沢、富山、高岡、福井と坂井、豊橋、大津、京都、大阪、岡山、広島、松山、高知、長崎、熊本、鹿児島。

20都市に19路線といったのが現状だ。

その詳細を見れば、東京といっても三ノ輪橋と早稲田間のわずか12.2kmで開業は1911年。

専用軌道が長く、道路併用軌道がわずか1.6kmしかなかったのが、この路線が残った大きな理由だ。

鎌倉と藤沢を走る「江ノ電」にしても、自動車道を併用しているのは江ノ島周辺のわずかな区間である。

自動車に迷惑をそれほどかけない路線が今に残った感もあるが、豊橋鉄道は堂々と国道1号を走っている。

また、国内最大の路面電車ネットワークをもつのは1912年に運転を開始した広島電鉄だ。

ほとんどの路面電車が明治後期や大正時代の開業だが、なかには2006年に開業した富山ライトレールのような例もある。

いずれにせよ、これらの路面電車は市民の生活を支え続けている。



試しに、路面電車が走る街を旅したのなら、愛車をコインパーキングに預けて、路面電車に乗ってみるといい。

その土地で暮らしている人が乗る路面電車は繁華街や役場、名所などのそばを通り抜ける。停車場も多いので駐車場を探す手間もなく、気ままに街の散策ができるのだ。

函館の路面電車


なんとなく風情がある終着駅風景


路面電車が走る地域に取材ででかけると、なんだかとても乗りたくなる。

ヨーロッパの街並みを走る路面電車に何度も乗ったことは述べたが、国内でも同様である。

乗客はそこで暮らす人々。バスと大差ない。しかし、道路の真ん中を堂々と走る路面電車から眺める街並みは、なんだか風情を感じてしまうのだ。



高知市を走る路面電車は1904年に開通した。開業明治37年は、日本最古の“路面電車”といえる。

地元の人々に「どでん」と呼ばれる土佐電氣鐵道は、街の南北、東西に走る。そして、終点駅の一つに後免駅がある。路面電車の行き先表示は「ごめん」。

初めて高知を訪れたときに、道の真ん中をのんびりと走りながら、周囲のクルマに「ごめん」と謝っているようで、なんだかとてもおもしろかったのを覚えている。



松山駅から道後温泉まで走るのは伊予鉄道だ。この路線にはかつて蒸気機関車が走っていた。2001年に蒸気機関車型の車両を復元されて人気を得ている。

蒸気機関車型路面電車に乗って、最古の温泉の一つと呼ばれる道後温泉に出向くのは、なかなかいいものだ。



函館を走る函館市電は明治時代の市電を復元して走らせている。また、冬期のイルミネーション電車も人気が高い。

観光の街の市電は、市民の足に加えて観光素材としても脚光を浴びている。



市街地を回るのに便利な路面電車は、伊予鉄道や函館市電、江ノ電だけでなく、その存在そのものが“観光名所”になっているといえるだろう。
路面電車が走る街へのドライブを楽しみ、市街地は路面電車を有効に利用して巡る。こんなドライブのスタイルもいいのでは。

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●コラムに出てくる主な路面電車

函館市電 https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/bunya/hakodateshiden/
都電荒川線 https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/toden/
江ノ電 https://www.enoden.co.jp/
広島電鉄 http://www.hiroden.co.jp/
伊予鉄道坊っちゃん列車 http://www.iyotetsu.co.jp/botchan/
とさでん http://www.tosaden.co.jp/train/
< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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