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世界遺産に登録される場所は、そのままパワースポットといえるでしょう。たとえば、古代から受け継がれている文化や建物。あるいは貴重な自然が残されている場所…。白神山地も自然のパワーが感じられる場所です。

白神山地に見られるブナの巨木


若いブナもたくさん育っています


白神山地をガイドさんと共に歩いていた時のことです。
すぐ前にひときわ大きなブナの木がありました。
ガイドさんは「静かに」というように無言で口に人差し指を当て、それからブナの巨木に耳を付けました。
「ブナの息づかいが聞こえますよ」と、小さな声で言って、参加者を順番に誘導し、それぞれの耳をブナの木に付けさせました。



ゴゥーというような、それまでに聞いたことがなかった音が幹の内部から聞こえてきました。
それは、なんとも不思議な音でした。
「これは木が水を汲み上げる音です。ブナはとくによく聞こえるんです」と、ガイドさんが微笑みながら言いました。彼の手は、ごく自然に、柔らかく、ブナの木をなでていました。



学者たちに言わせると、その音の正体は、風による震動などによって物理的に生じた音という結論になります。樹木が水を吸う音は、聞こえるわけがないそうです。もしも、聞こえるとしたら、ものすごい量の水が樹木の中を流れていないとムリらしいのです。



長い間、森を生活の場として生きてきた人たち、ガイドとして森に生きる人たちは、“ブナの音”を昔から聞いてきました。
ブナの表情を通じて森を知りました。ブナの木に刻まれた跡によって野生動物の動向を知りました。
ブナは森のさまざまなことを、人間に教えてくれるのです。
ブナが水を吸う音は聞こえないのかもしれません。でも、ブナの巨木に耳を付けて聞いた“あの音”は、神秘的で、間違いなく森の音でした。

世界遺産範囲内にも歩けるルートが


ブナ林の住民の一種、ニホンザル


私はかつて、岩手県の安比高原の広大なブナ林を散策したことがあります。
ガイドさんと一緒に、安比高原の自然を観察し、野生動物の足跡を追うというネイチャーツアーでした。
「ここのブナ林もみごとで美しいのですが、実は原生林ではありません。人の手によって伐採され、その後に生まれた林なのです」と、ガイドさんは言いました。



日本の多くの森は、木材が必要になると切り出されてしまいます。巨木がたくさん伐採されても、地球の生命力によって芽が出て、やがて森が復元されます。ただし、それには長時間がかかります。
また、昨今のように異常気象が続けば、自然は復元する“力”を失ってしまうかもしれません。
森を歩くと、いろいろと自然について考えさせられます。



白神山地は1993年に世界遺産(自然遺産)に登録されました。
この登録に驚かれた方も多かったのではと思います。
なぜなら、登録の理由は「人の手がほとんど入っていない原生的なブナ林」であるからです。しかも、その規模は東アジア最大級、緩衝地帯を含めれば16万ヘクタールを超えます。
人の手が入っていない…観光地ではありません。だからこそ、登録されたのですが、当時は白神山地の名前さえ知らなかった人が多かったのではと推測できるのです。



白神山地は約200万年前に日本海が隆起してできました。ブナが育つようになったのは、今から約8000年前。氷河時代を終え、日本が温暖になってきた頃だという研究結果があります。
もちろん、巨木はやがて老木となり朽ち果てます。しかし、倒れた老木が養分となって若い芽を育て、そのサイクルによってブナ林は維持され続けています。
英語で「Nursewood」という言葉があります。直訳すれば“看護の木”。若い芽を育てる倒れた老木などをナースウッドと呼びます。

十二湖でマイナスイオンを浴びて


海岸沿いの不老ふ死温泉露天風呂


今まで多くの人が知らなかった白神山地ですが、世界自然遺産に登録されると、一気に観光してみたい憧れのスポットになりました。
旅行代理店のホームページなどで白神山地がらみのツアーを検索すると、それなりに多くのツアーが出てきます。
立ち寄るポイントは、青い水が美しい青池をはじめとする33の湖沼を有する「十二湖」や、グランドキャニオンの縮小版的な「日本キャニオン」、温泉としては海岸にひょうたん型の露天風呂がある不老ふ死温泉。これらが人気の観光スポットになっています。



これらの観光スポットは世界遺産の登録地域外であるのをご存じですか?



世界自然遺産の白神山地は手つかずのブナ林です。核心地域は摩須賀岳を中心とした山深い地域です。
ここには一般が入れるルートはほとんどありません。ブナの原生林が残り、ツキノワグマやニホンカモシカ、キツツキの一種であるクマゲラなどが生きる世界です。



白神山地の中心部の核心地域のまわりには緩衝地域が設けられています。ここを含めると既存のルートがいくつか設けられています。ただし、既存のルートを歩く場合も、森林管理署長などに対して、入山手続きが必要になります。
気軽に訪れて入山というわけにはいきません。
核心地域と緩衝地域の自然を未来に繋げるために、入山に規制があるのは当たり前のことでしょう。



そして、これらの地域外に十二湖などがあります。
「なーんだ、世界遺産外か」と思うのは早計です。ここにも十分に大きなブナの木があり、豊かな自然が残されています。
野生動物に遭遇したり、野鳥を見たり、木の幹に残された爪痕などの彼らの生きている印を見ることができます。
森の中でたっぷりのマイナスイオンを浴びる。心と身体がリラックスできる自然の極上パワースポットです。

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●東北自動車道大鰐弘前ICから国道7号、101号経由で3時間弱。秋田自動車道(琴丘能代道路)能代南ICから国道101号経由で1時間30分ほどで十二湖に到着。
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
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