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旅にはいろいろなスタイルがあります。名所を訪ねる旅。巡礼の旅。それぞれの土地のおいしいものを食べ歩く旅…。冒険心を満たす旅もその一つです。残念ながら日本では冒険の旅はあまり期待できません。しかし、知床への旅はそれが現実のものになるのです!

知床への旅のベースにした養老牛温泉の窓の外に現れたシマフクロウ


キタキツネはどこでも見かける


ウトロ側の海から見た知床半島


「トナカイは街中にはいませんよ。見間違いです」と、アラスカ・フェアバンクスの観光局の人が言った。
市街地の中心にあるホテルの朝食会場での出来事だ。ぼくらアウトドア雑誌の編集者たちは、アラスカ州観光局の招待でフェアバンクスの空港に降り、ホテルに荷を置いてそのまま就寝。翌朝、朝食会場に集まることになっていた。
時差ボケもあったのだろう。集合時間より早めに起きてカーテンを開けると、そこにトナカイが立っていた。
約1週間の旅を案内してくれるアラスカ生まれの長身な女性に告げると、すぐにそんなはずはないと言われたのだった。



冬のアラスカを旅できる、1通の招待状が届いた時からわくわくしていた。
仕事などでけっこう多くの国を旅してきたぼくは、「どこの国がおすすめか?」としばしば尋ねられる。
その質問の答えはこうだ。
「街として好きなのはパリとバルセロナです。のんびりしたいならアジアリゾート。人類のすごさを感じたいのならエジプト。そして、自然を体感したいのならアラスカかアフリカですね」



これまでに都合4回行ったアラスカは、いつもわくわく感を裏切らない。
ヨットハーバー沿いのホテルに泊まった時は、朝食時にヨットの間に浮かぶラッコを見た。
スノーモビルで凍った川の上、林間を駆け抜けて高台まで行き、デナリ(マッキンリー)をすぐ前に眺めたこともあった。
アウトドア雑誌記者への招待状で訪れたアラスカは、その最初の旅だった。
経由地であるシアトルからフェアバンクスに向かう飛行機は、夜空の中へと飛び立った。離陸してから30分も経っただろうか、窓の外には満天のオーロラが輝いていた。最初のアラスカ旅は、オーロラに迎えられて始まったのだ。



2日目はフェアバンクス市内の博物館などの施設をめぐった。夕食時、案内役の女性が新聞をぼくらに見せて言った。
「信じられない…」
そこには「市街地に迷いトナカイ現れる、○年ぶりの珍事」という見出しと、トナカイの写真が掲載されていた。

カムイワッカの湯の滝


ガイドの案内でフレペの滝へ


散策中、すぐ横にエゾシカが


セスナ機を使い、氷河の上にも立った。そのセスナ機はフロートも装着しており、氷河が海に崩れ落ちる場面も海上から眺めた。
クマ、カリブー、ムース、ラッコ、ワシの仲間…。アラスカでは数多くの動物にも出合った。
しかし、日本で野性動物を見る機会はそれほど多くない。
それでも近年は杉やヒノキといった“実のならない木”ばかりを植えたことによって、森の食べ物が減少してシカやサル、イノシシなどが民家近くに出現するようになり、それを目撃する機会も増えた。
だが、野性そのもののスタイルとは異なる気がする。人間が環境を崩したための現象だと思えてしまうのだ。



しかし、知床は違う。アラスカと同様に、手つかずの自然が数多く残っている。
知床半島の東側は羅臼とその先の相泊まで。西側はウトロまで。それが、一般車が気ままに走れる道路だ。羅臼とウトロを結ぶ国道334号・知床峠越えルートも、観光道路として人気があるが、冬期は閉鎖される。
また、世界遺産に認定されてからハイキングコースとして一躍人気が出た知床五湖やカムイワッカの湯滝までの道路も夏期に一般車は規制される。
つまり、旅人たちがレンタカーなどで近づけないのも知床の魅力なのだ。そのぶん、知床への旅は“冒険”の要素を秘める。



本州やそれ以外の地域でも、道なき場所へ侵入し、手つかずの自然に触れるのは可能だ。
だが、そこには自己責任が生じる。
自己責任とは、「事故った時は自分で責任をとればいいのでしょう」というほど軽いものではない。
たとえば、未開の地に自分たちだけで入ろうと思えば、その責任に見合うだけの知識、経験、体力を事前に付けなければいけない。
思いつきの行動や、事前の学習なく未開の地に行くのはけっして冒険ではない。無謀である。



その点、知床は手つかずの自然に、比較的気軽に入れるのが魅力だろう。ネイチャーガイドもいれば、半島めぐりのクルーズ船も就航している。“冒険心が満たされる”環境が整っているといっていい。

ウトロのクルーズでヒグマを発見


羅臼クルーズで遭遇したシャチ


瀬石温泉は秘湯中の秘湯


知床へは中標津空港から向かった。昼過ぎに空港に着いたので初日は養老牛温泉へ。湯宿だいいちに泊まったのには理由がある。夜になると生け簀にシマフクロウが飛来するのだ。翼長180cmにもなる大型フクロウは、ぜひ見ておきたい野性の生き物だった。



そこから羅臼へ。羅臼には冒険心いっぱいの温泉がある。瀬石温泉は海に二つの湯船が浮かぶ。満潮時に海没する温泉で、かつて『北の国から』のロケでも使われた。
その先の相泊温泉は、日本最北東端の温泉だ。海を目の前にするこの2湯に加え、カムイワッカの湯滝の小さな滝壺に溜まった温泉に入るだけで、温泉好きの冒険心は満たされる。



羅臼では温泉めぐりのほかにクルーズが楽しい。ウトロ側のクルーズは、切り立った断崖や、奇岩、多くの滝、半島の山々を眺めるものになる。海岸線にヒグマを見つけることも可能だ。
一方の羅臼のクルーズは目的がまったく異なる。シャチやイルカ、クジラを追うクルーズなのだ。
まったく趣が異なるクルーズだから、「どちらかに乗ったから十分」と思ってはもったいない。
シャチを見つけて喜び、奇岩群や滝に圧倒され、ヒグマ探しに夢中になる。これが知床なのだ。



海上から知床半島の魅力を見つけた翌日は、ガイドと共に歩くツアーが待っていた。
「毎年、50~60回はヒグマに合っています。先日も気づいたら駐車場の向こうにヒグマがいました。もっとも近づいたのは0㎝。脇をヒグマが歩き去って行きました」と、ガイドさん。
ツアーに出発する前に、騒がない、走らない、じっとするなどのヒグマに遭遇した場合の対処法をガイドに習う。ハチが敵と見なす黒色の服や帽子を避け、クマが好きな甘い臭いを漂わせるお菓子やジュースは持ち込まない。歩きやすい服装で来る。事前の準備も万全だった。
レクチャーの後、知床を歩き始める。植物や植生、飛んでいる鳥をガイドが解説する。
時折、カモメたちがギャーギャー騒ぎ出す。ワシが来た合図だとガイドが言う。騒ぐカモメは元気な証拠。ワシも襲わないそうだ。
すぐ横の草がガザガサと音を立てる。ヒグマかと、緊張感が走る。そこには4頭のエゾシカがいた。
予期せぬカモメの大騒ぎ、物音に対する緊張感、そして野性動物に出合う喜び。これこそ冒険だ。
知床は冒険が体験できる国内有数の旅行先である。

「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●知床羅臼観光案内所
http://www.rausu-shiretoko.com/

●知床斜里町観光協会
https://www.shiretoko.asia/index.html
< PROFILE >
篠遠 泉
休日と旅のプロデューサー。主な出版物に『ぶくぶく自噴泉めぐり』『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがあるほか、『温泉批評』『旅行読売』などに執筆中。観光地の支援活動も行っている。
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