連載最終回はこれまで取り上げた多くの温泉のうち、編集室が自信をもっておすすめする「全国、生涯一度は訪れたい魅惑のぶくぶく自噴泉10」をお届けします。ぶくぶく自噴泉とは湯船の底で湯が湧く貴重な温泉。温泉好きなら一度は行きたいものです!
山と渓谷社から出版されている『ぶくぶく自噴泉めぐり』という本があります。これは、私を含めたスタッフ3人が全国をめぐり、実際に入湯した「ぶくぶく自噴泉」の記録本です。
法師温泉
丸駒温泉
二岐温泉
壁湯温泉
現在、日本に4000箇所ほどの温泉地が存在します。
そのなかにいろいろな宿泊施設や入浴施設があり、さまざまな湯船が来場者を楽しませています。
ただし、同じ温泉湯船でも、実は種類は各種あるのです。これは、泉質のことではありません。湯船の温泉の供給方法についてです。
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まずは、読者のみなさんがもっとも憧れるのが「源泉かけ流し」でしょう。
源泉が湯船に注ぎ込まれ、溢れた湯がそのまま流されて排水されていくものです。常に源泉が注ぎ込まれていて、湯が適度に入れ替わるので清潔感もあります。
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ただし、源泉かけ流しにもいくつかのケースが存在します。
たとえば、湯船のそばに自家源泉があって、それを配管などを用いて直接に湯船に注がれる形式があります。鮮度の高い温泉といえます。
泉温によっては加水、加温も不要なために、純度100%の湯が楽しめます。
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泉温が入浴に高すぎれば、加水して冷ます場合があります。この場合、純度100%とはいえません。源泉にこだわる宿では、配管の工夫によって自然に冷まして適温にし、湯船に純度100%のまま注ぎ込む宿もあります。
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温泉地によっては、いくつかの源泉を共同管理し、いったん溜めた湯を、それぞれの施設に配給するケースがあります。施設によっては、配られた湯をそのまま注ぎ、かけ流して「源泉かけ流し」の湯船を設けている場合もあります。
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新しくできた温泉地のほとんどは、ボーリングによって掘削した温泉です。ポンプアップした湯を湯船に注ぎ込み、かけ流している場合もあります。
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いずれにせよ、源泉かけ流しの湯船とするためには、湯船の大きさに見合った湯量が必要になります。
大温泉地の大型宿泊施設や、湯船数が多い日帰り温泉施設などで、源泉かけ流しが行えるほどの湯量が確保できない場合は、温泉をろ過して汚れを取り、塩素などを加えて殺菌して、もう一度湯を使う方法も多く用いられています。
実は、この循環方式の湯船が日本には圧倒的に多いのです。浴場への扉を開けた時に、塩素臭さを感じる場合は、循環式であることが多いのが実態です。残念ながら温泉鮮度という面では源泉かけ流しに劣ります。この手の温泉施設では衛生上の理由もあり、「飲泉」はまずできません。
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日本の温泉は、本来は河原や海辺、山奥などに湧いており、湧いている場所に湯船を造って入りました。古い温泉地には「鶴の湯」「鷺の湯」「熊の湯」などの別名があり、動物がキズを癒やしていたので発見されたと伝わる温泉が多数あります。
温泉の湧く場所はやがて湯治場として栄えていきました。
ただし、泉温が高すぎる場合は、「地獄」などと言われ、とても入浴できるものではありませんでした。加温技術も発達していなかったので、低すぎる湯温の温泉は、入浴には適しませんでした。
つまり、泉温36~50度の湯が湧く温泉こそ、湧く場所ですぐに入れる理想の湯だったのです。
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つまり、当時は「ぶくぶく自噴泉」は当たり前でした。しかし、昭和に入ると状況は一転します。
観光ブームが徐々に日本に浸透し、温泉地は大きく衣替えしました。宿泊施設が大きくなり、それに伴って湯船も大きく、あるいは増えました。同時に自噴泉は壊され、源泉を大量に溜めてそれぞれの湯船に供給するようになりました。
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私たちが事前に調べたところ、ぶくぶく自噴泉が残るのは全国で70カ所前後しかありませんでした。
私たちはそれらを求めて、全国を旅しました。この場合のぶくぶく自噴泉とは脱衣所があるなどの管理がされており、いうなれば誰でも入れる湯です。あえて、川や海に湧く天然湯は排除しました。
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最終回で以下に掲載するのは、バックナンバーの中から選んだ、「生涯一度は訪れたい魅惑のぶくぶく自噴泉」です。
実は、『ぶくぶく自噴泉めぐり』で取り上げた約70の温泉は、すべてに特徴があり、印象深い温泉ばかり。どれもが鮮度抜群、飲泉ができるところもほとんど。湯船の底から泡とともにぶくぶくと温泉が湧いているのが確認できるところばかり。
すべてがおすすめですから、本来なら本を買っていただければいいのですが、「おでかけマガジン」読者のために、あえて北から南まで10カ所を選んでみました。
おすすめ10
紺屋地獄別府温泉保養ランド (大分県)
池のような広大な湯船に白い泥と一緒に湧く温泉
http://www.smart-acs.com/magazine/16100103/onsen001.php
紺屋地獄別府温泉保養ランド (大分県)
池のような広大な湯船に白い泥と一緒に湧く温泉
http://www.smart-acs.com/magazine/16100103/onsen001.php
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版』を上梓。旅雑誌などに連載中。