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  3. 雄大に舞う空の王者、猛禽類を訪ねて山へ
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前回は”海釣り”という海をテーマに書きました。海の次は陸?いいえ空です。「猛禽類」をご存じでしょう。そう、鋭いクチバシと爪を持ち、小動物や動物の死骸などを主食とする鳥類です。今回は空の王者のお話。
イヌワシの棲む信州に移住した阿久津さん
夫の友人に阿久津悦夫さんがいます。阿久津さんは自然派のカメラマンとして一世を風靡した人です。

ムービーカメラで数々の映画の過酷なロケシーンを撮っています。一眼レフカメラに持ち替えれば、スイスやフランス、カナダの山小屋に籠り、山岳写真、スキー写真を撮り続け、多くの雑誌のグラビアを飾りました。

代表作のひとつが映画『植村直己物語』です。実際に阿久津さんは大冒険家・植村さんとともに、いくつもの険しい山に登っています。『植村直己物語』の山岳撮影ではエベレスト山頂にも立ち、ついに世界5大陸最高峰の登頂に成功しました。

その阿久津さんも70歳を過ぎて、「山のあるところで暮らしたい」と、都心から長野県飯山市内の田畑に囲まれた眺望のいい一画に移住しました。古民家を購入し、自らの手で改造。完全に古民家を再生させました。

スイスのシャレーで見るようなワイングラスがかかる棚や、カウンターがあるのは、いかにも阿久津さん風。毎年、ヨーロッパアルプスに長期滞在していた経験が生きました。

その阿久津さんが言いました。

「この裏の峠は素晴らしい眺望だよ。ここは長野県だけど、峠の頂きまで行けば日本海が見える」
その言葉に誘われて牧峠まで行きました。

すると、途中には600mmの超望遠レンズをつけた写真愛好家がたくさん。聞けば、牧峠は日本では珍しいイヌワシが棲むところで、それを狙っているのだとか。

阿久津さんも枯れ木のてっぺんで獲物を狙うイヌワシの姿を何回も見たそうです。

どんどん自然林が消えていき、生息場所が狭くなり、餌となる小動物が少なくなった日本ですが、イヌワシやオオタカの猛禽類はまだ見ることができます。それを訪ねて森までドライブも素敵なのでは……。
イヌワシは神経質です。イヌワシの巣を見つけても、決して近付かないでくださいね。
(写真提供:over.hilowsee)

イヌワシは翼開長が2mにも達する大型猛禽類です。 天狗のモデルになったという説もあるぐらい飛ぶ姿は威風堂々としています。

ただし、あまりに大型ゆえに、狭い森の中で餌を探すのは苦手らしく、山火事の跡地や森林伐採の跡地を餌場にしています。

それゆえに、山火事も少なく、林業が衰退している日本では餌に困って減少傾向にあります。

イヌワシ以外に日本の代表的な猛禽類といえばオオタカがいます。

翼開長は1m~1m30cmとイヌワシと比べればひとまわり小さくなりますが、急降下時には時速130kmにも達し、そのスピードと鋭さでハトやカモ、スズメなどを捕えます。

横浜の野毛山動物園でオオタカに会えます
(写真提供:横浜市立野毛山動物園)

オオタカにしても近年の開発で餌場が少なくなり、著しい減少傾向にあります。

しかし、オオタカだって時の流れに負けてはいません。「オオタカ」でネット検索してみると、「都内で見つけた」「うちの鳥小屋を襲った」などというブログが見つかりました。

どうやら、山間部だけに生息していたのは昔の話で、近年では都会の周辺でも暮らすようになったみたいです。

繁殖期の行動圏は直径2km、非繁殖期の行動圏はそれ以上に広がるというデータがあります。もしかしたら、うろちょろするネズミやハトが豊富な都会は絶好の餌場なのかもしれません。

よーく見るとかわいい顔をしていませんか?
(写真提供:横浜市立野毛山動物園)
夫とオーストラリアに行ったときの話です。

ケアンズの海に面した10階建てくらいのホテルの最上階に到着すると、夫はすぐにベランダに出て海を眺め始めました。景色に感動していた夫ですが、やがて隣のホテルのベランダに、ハヤブサらしき猛禽類が止まっているのに気付きました。

「あれ、ハヤブサじゃない? さすがケアンズ、自然がたくさん」なんて呑気に言いながら、サンドイッチを頬張っていたときです。

そのハヤブサがビューンと飛んで来て、夫の顔をかすめて行きました。あらまぁ、夫はおおあわて。

「びっくりしたーーーー。あいつ、俺を狙ってやがったんだ!」と、大声をあげていました、狙っていたのはサンドイッチですけどね。

ちなみに、夫はこの旅でペリカンにも襲われました(ゴルフ場で池にボールを打ち込み、それを取りに行ったら、クチバシをカタカタ言わせたペリカンに威嚇されました)。

そのときは大笑いした私。でも、悲劇は身近にありました。

湘南海岸に行ったときです。お天気が良かったので、七里ガ浜の駐車場に車を停めて、ハンバーガーショップに入って行きました。テイクアウトでハンバーガーとポテトを買い、外に出て「さあ食べよう」と紙袋から取り出した瞬間、それはトビの餌となっていました。

トビは翼開長150cm前後の大きな猛禽類。すごくびっくりして、怒りを飛び越してしまいました。
ハンバーガーショップには「トビに注意」の警告もあったのに。上空で狙っているなんて、夢にも思いませんでした。

猛禽類は身近にいます。猛禽類を見るドライブにぜひ。

●飯山森の案内人ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/rurutotekuteku/24037876.html
●オオタカ保護基金
http://www.ucatv.ne.jp/~goshawk.sea/
●動物園にも猛禽類はいっぱい
http://zoo.nomaki.jp/
●横浜市立野毛山動物園
http://www.nogeyama-zoo.org/
< PROFILE >
石井 喜代美
ご主人がアウトドア・旅行雑誌の編集者をしており、その関係で国内外の旅に同行。ブランドショップより地元の市場、高級レストランより庶民の味、そして動物園と水族館には必ず行く主義だとか。キャンプや温泉にも詳しい。
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