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「おでかけマガジン」の中にも温泉地をテーマにした連載があるし、過去のコラムにも温泉や温泉施設はたびたび登場している。しかし、今回取り上げる温泉は、入るためにしかるべき苦労や労力を伴うものだ。それは手掘り温泉! 究極の贅沢温泉である。

究極の温泉が手掘り温泉! 秋田県秋の宮温泉郷にて


湯俣温泉へのトレッキング、前半はエメラルドグリーンの高瀬ダム調整湖畔を歩く


湯俣温泉への3分の2の行程はクルマの来ない車道を行く
最初に行ったのはもう20年も前になる。

そのころのぼくは温泉地をめぐるのが仕事のひとつであり、趣味でもあった。ただし、クルマで行って温泉施設を訪ねる類のものだ。

「日本は温泉の国。ならば、原点といえるような温泉に行かない?」

温泉めぐりの仲間が言った。

最初に行ったのは長野県の秋山郷切明温泉だった。

切明温泉にも温泉宿泊施設がある。しかし、ぼくたちがめざしたのは河原だった。

河原にはかつてやって来た人たちが楽しんだであろう、湯船の名残があった。

でも、すでに湯船には砂が溜まっており、湯船を形成していた周囲の石が崩れ、猛烈に冷たい川の水が流れ込んでいた。

ぼくたちは持参したスコップを用いて砂を掘り、河原の石を運んで湯船の修正を始めた。

子どものころ、夏休みになるとぼくは家族とともに蓼科の山小屋で過ごした。山小屋から10分も歩くと渓流があるから、宿題を終えるとおにぎりを持って出かけたものだ。

渓流の河原で行うのは、石を積み上げての“ダム作り”や、幅20センチほどの小さな支流作り。箱庭感覚の川遊びだが、それがとても楽しかった。

河原で湯船を作るのも、そんな感覚だ。ただし、労働量は子どものころの比ではない。

それでも数人で協力して作業しているうちに、やがて湯船の修復が終わる。

肝心なのは湯船に入れる川の水の量だ。
それによって、湯の温度が左右される。ひとつは熱めの湯、もうひとつは長湯用のぬる湯。

河原に湧く天然の湯と川の水が調整され、なんとも快適な手掘り温泉が完成した。

車道が終わると森の中のトレッキングルートになるが、きちんと整備されており歩きやすい


大自然に包まれてぽつんと建つ湯俣温泉晴嵐荘


晴嵐荘よりさらに15分上流の湯気が湧く河原を掘る!
切明温泉はクルマで行けるが、それとは反対にトレッキングを必要とする手掘り温泉も日本には多い。詳細な地図で調べれば、クルマが入れない登山道の先に温泉マークがあったりする。

栃木県の奥鬼怒地域でも手掘り温泉に行ったし、新潟県の北部でも行った。

そのひとつが長野県の湯俣温泉である。

信濃大町、葛温泉を経由して七倉山荘の手前の駐車場にクルマを停める。実は七倉山荘周辺にも手掘り温泉が楽しめるポイントがあるのだが、あくまでもめざすは湯俣温泉。そこには天然記念物の「噴湯丘」がある。

噴湯丘とは温泉の成分が積み重なってできた、人の身長くらいの高さがある岩だ。まさに天然温泉の宝庫なのである。

さて、めざす湯俣温泉へ。七倉山荘からは登り道と思いきや、いきなりタクシーを利用する。一般車両が入れない道もタクシーなら大丈夫。タクシーに乗って高瀬ダムまでの急勾配を行く。

高瀬ダムは黒部ダムに次ぐ日本第2位の高さを誇るダムで、その調整湖である人造湖も広大だ。

高瀬ダムでタクシーを降り、そこからはひたすら歩く。

最初は調整湖の湖畔を走る車道を行く。車道といってもクルマはほとんど通らない。発電所関係者など一部の人だけに通行が許された道なのだ。

1時間50分ほど続く湖畔ウォーキングはエメラルドグリーンの湖を眺めるもので、独特の景観になっている。ときどき硫黄臭がするから、温泉成分が大量に流れ込んで湖の色を変えているのだろう。

ひたすら湯船を整備する人と、ちゃっかり入る人…。楽しみ方もそれぞれ!?


そこかしこから源泉が湧き出しているので、手掘り温泉も苦労の数だけ作れる。源泉は高温なので、川の水で温度調整を行う。それもまた楽しい


天然記念物に指定されている「噴湯丘」。温泉が湧き出し、その成分が積もって巨大な岩になった
クルマが通れる道が終わると、そこから先はトレッキングルートになる。湯俣温泉までは約1時間の道のりだ。

高瀬川の渓流に沿って続く道に激しいアップダウンはない。緩やかな登りではあるが、ほとんど平坦といえるレベルのものだ。

支流を越える場所や、難所には尾瀬沼に見るような木でできた歩道が整備されており、とても楽に歩ける。

一歩一歩森の中を進む。

やがて、渓流の向こうに山小屋が見えてくる。それが湯俣温泉晴嵐荘だ。この山小屋は1泊2食のスタイルで宿泊可能だし、館内に源泉かけ流しの湯船をもつが、贅沢なのは山小屋の大将たちが整備している露天風呂だ。

河原に石を汲み上げて、そこに源泉を流し入れた天然の露天風呂を整備している。

さて、晴嵐荘から吊り橋をふたつ渡ってさらに上流に。

河原に湯気がたつ。

自然の中の湯気は白色というよりも銀色に近い。

緑色に似合う銀色の湯気が地球の偉大さを物語っている。

辿り着いた河原は、温泉の力によってできた不思議な岩「噴湯丘」を眺めながら、天然手掘り温泉が味わえる究極の場所だった。



切明温泉や秋田県の秋の宮温泉郷(ここはぼくのおすすめポイントです!)などのクルマで行ける手掘り温泉に行くか、それとも“歩いて、歩いて”めったに行けない手掘り温泉に行くか。

特別な温泉体験をしてみませんか?

※手掘り温泉にはその時々のルールやマナーがあります。それに従ってください。また、川の水量が増えれば体験できないこともあります。

手掘り温泉が楽しめるおすすめベスト3

●切明温泉【長野県下水内郡】
http://www5a.biglobe.ne.jp/~k-river/
切明温泉にある宿泊施設「切明リバーサイドハウス」のホームページです。

●湯俣温泉【長野県大町市】
http://www.city.omachi.nagano.jp/kbn/00149110/00149110.html
湯俣温泉のある大町市のホームページです。

●秋の宮温泉郷【秋田県湯沢市】
http://www.akinomiyaonsen.jp/
秋の宮温泉郷のホームページです。
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
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